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はっ、わかった!

凪といい雰囲気(?)になりつつある美宇に

自分の道を歩み始めた天衣。


そして彼にも、転機が訪れる!!

★魁皇SIDE★

「チューン~。バイトばっかでゴールデンウィークの宿題やるの忘れちった。見して~♪」


ゴールデンウィーク終了二日前。

輝流から毎回恒例電話を受けてから、もう何時間かたつ。

俺尾上魁皇は、鼻歌交じりに宿題をうつしている馬鹿を見ながらはあっと息をついた。


宿題うつさせてと休み直前に来るのはいつものこと。

それを理由につけては俺の家に転がり込んでくる。

ただ今回は珍しく、休みが明ける二日前だったものだから何かあるのではないかとにらんでいた。


「よっしゃ、数学おっわり~♪ ん? なに? じーっとオレを見て。はっ、わかった! オレの美しさに見とれてー」


「んな分けねぇだろ。気色悪い」


「せめて最後まで言わしてよ~。んで何用?」


「いつもは提出期限ぎりぎりに来るのに、今回は違うからなんか企んでそうだなと」


俺が嫌味ったらしく言ったつもりだったセリフを、輝流は文句もなしに語りだした。


「だってさ、オレら今年で卒業じゃん? そろそろ真剣に進路を考えださなきゃまずいでしょ」


意外だ。輝流がそんな真面目なことを思っていたとは。

こいつもちょっとは考えているんだな。見直し……


「ま、オレの場合は留年しちゃうかもしんないから宿題を出さなきゃまずいってだけなんだけどね~」


前言撤回。見直すんじゃなかった。

思えば、高校の時もそうだった。

数々の女子にモテるほどの優良物件だったが、成績が極めて悪く先生も頭を悩ましていた。

そんな時にマスターが現れ、劉生大学に通ってるわけだが。


こいつはともかくとして、俺はどうだろう。

高校の時は通行に困らない近場だったし、劉生大学に通ったのも輝流に言われてなんとなくだった。

夢というものが、俺にはない。

まあ俺みたいなやつが夢を持つ資格なんてないようなもんだが。


「ん? チューン、携帯鳴ってない?」


言われてみると、携帯のバイブが鳴っているのに気付く。

発信源は出ておらず、番号しか出ていなかった。

間違い電話か何かだろうか。通話ボタンを押し、耳に当てると―


『もしもし、かいちゃん?』


聞き慣れた声。呼び名。

わずか0.5秒で通話を切った。


「誰から?」


「知らない人。切った」


「知らない人って、通話一切してないじゃん。変なの」


輝流が不機嫌そうに言うのも、流すように携帯をテーブルに置く。

するとまたバイブが鳴りだした。

うつし出された番号は、さっきと同じだ。

無視して宿題をやっていると、輝流が俺の携帯を手に取った。


「チューン、出ないの?」


「必要ねぇ。そんなの出る必要―」


「あ、もしもし? こちら、魁皇の携帯でーす」


人の話を聞いちゃいねぇ。

こうやって人の携帯をとって話を進めてしまうのは今回が初めてじゃないし、気にしないんだが今回は違う。

何を話しているのやら。輝流は顔色一つ変えずにはいはいと相槌を打っていく。

ようやく通話を終え、奴が言った言葉は―


「お兄さんから、処刑前に会いたいって。明日刑務所に来てって言われたから、よろしく~」


予想どおり、嫌な予感が的中した瞬間だった。



尾上恒生。

四年にわたり連続殺人事件を起こした犯人であり、俺の兄。

あの電話がドッキリか何かだったら、どんなにいいだろう。

なぜ兄はオレの番号を知っていたのだろう。兄貴が捕まってから、関わらないように避けてきたというのに。

昨日、どうしても行かなきゃダメなのかと輝流に愚痴るとあいつは


「せっかくあっちから会いたいって言ってるんだよ? チューンにとって大切なお兄さんには違いないんだし、行っちゃいなよ!」


と気楽に言ってのけた。

あんの野郎、他人事のように済ませやがって。

今度から宿題うつさせてやらないことにしよう。


重々しくも、刑務所に足を進める。

兄貴から話が通っているのか、警察は俺が名前を言うとすんなり面会所へ通してくれた。

プラスチック製で作られた仕切りの向こう、そこにはすでに兄貴がいた。

昔より少し痩せた顔で、オレを見て笑う。


「やあ、かいちゃん。久しぶりだね」


屈託のない笑みはまるで変わらない、昔のままだった。

何年も会っていなかったというのに、久しぶりに会った気がしない。

俺のことをかいちゃんと呼ぶのも、裏表がなさそうな笑みも昔と全く同じだった。


「久しぶりとか言う割に、ちっとも変ってねぇじゃねぇか」


「そう? かいちゃんはずいぶん背が伸びたね。今何センチ?」


「この前身体測定で185いってた」


「うわ~越されちゃった。同じ年なのにきょうちゃんとは大違いだね」


きょうちゃん、というのは俺の双子の妹・國立梗華の愛称だ。

先日日本を観光したいだのと急に言い出し、連れまわされたことはまだ記憶に新しい。

そのせいで桜庭には迷惑をかけたし、あんな妹を見られたし……顔を合わせずらい。


「かいちゃんの携帯をとった人、お友達?」


「まあ、そんなとこ」


「すごく優しい人だね。僕が殺人犯だって知ってるのに」


「かなりの変人だからな、あいつは」


「いい友達ができたね」


母親みたいなことを言われ、少しイラッとする。

なんでわざわざ輝流の話をするのだろう。

確かに、あいつは初めて出来た友達だが……


「それで? なんでわざわざ呼び出したりしたんだ?」


「ああ。話したいことがあって」


「俺に?」


「そ。かいちゃんだけには、死ぬ前にどうしても言っておきたくて」


そういう兄貴の目は真剣で、まっすぐ俺を見つめていた。

その目に逆らい難い力を感じ、俺は椅子に座り直す。


「僕がはじめに殺したのは誰か知ってる?」


「んなの、いちいち覚えてられるか」


「親父だよ」


「……は?」


「僕が親父を殺したんだ」



(つづく・・・)

こうしてみると、魁皇と輝流って本当に仲がいいですよね。

休日はほとんど二人で過ごしているんだろうなあと

別の意味でにやにやがとまりま・・・

おっと、すみません。なんでもないですよ?


そして同時にお兄さん初登場。

こんなにいいお方なのに、人を殺したりとか・・・人間、何をするかわからないですね。

私は好きなんですけどね、お兄さん。


次回! 尾上家の真実が明らかに!

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