およびませんよ!
姉の迎え先でみかけた女の子が、
なんと桜庭家にやってきて・・・?
★天衣SIDE★
「桜庭天衣とは、お前じゃな。会いたかったぞ!」
高く、幼い声が私を呼び覚ます。
腰くらいの小さな背丈の女の子が、じいっと私を見つめている。
何度見ても、間違いなく彼女だった。
「あっ、くにちゃんいらっしゃ~い♪ ここまで迷わなかった~?」
「お~鈴蘭ではないか。ふふん、わらわの情報網を甘く見るでない。このくらいたやすいのじゃ」
「そうなんだ~。あ、中に入って~ゆっくりお話ししよ~?」
鈴蘭お姉様がのんびりとした声で、彼女を家の中へ誘う。
小さく設けられた応接室に、二人のお姉様がお茶を用意する。
彼女はこんな状況でもものともせず、慣れているかのようにソファーに座った。
「何をしておるのじゃ、はよぅ座れ」
「あ、はい」
逆に私はなんだか落ち着かなくて、ようやく腰かけた。
「えっと、初めまして。改めて桜庭天衣といいます。あなたは……」
「まだ名を名乗っていなかったのぅ。わらわは國立梗華。國立グループの主じゃ」
く、國立って! フランスを拠点にしながらも世界から注目されている有名どころじゃないですか!
そんな人が尾上さんと……じゃなくて鈴蘭お姉様とお知り合いだなんて!
「早速じゃが、本題にうつる」
「本題、ですか?」
「お主のスイーツ、なかなかのものじゃった。そこでじゃ! 天衣! わらわの専属パティシエになれ!」
えええええ!!?
「そ、そんな! 私なんか、あなた様のシェフさんの手におよびませんよ!」
「鈴蘭から聞いたぞ。ゆくゆくはパティシエになりたいのじゃろう? ちょうどよいではないか」
そう聞かれ、思わず三人のお姉様方を見てしまう。
やりたいと思っていても叶うことはないだろうと、ずっと隠していた。
鈴蘭お姉様が誰から聞いたのかはわからない。
失望されるかもしれない。桜庭家の人間でありながら、って……
「天衣、よかったじゃん」
へ?
「だって夢が叶うんだよ? それを止める姉がいると思う?」
「柊、お姉様……?」
「天衣。私は散々あなたを苦しめました。これ以上は、何も言いません。だから、これはあなた自身で決めなさい」
優しい言葉が、胸に響く。
桜庭天衣として、初めて認められた気がした。
嗚呼、こんなお姉様に恵まれた私はなんて幸せなんでしょう。
「梗華様、魁皇様がお見えになりました」
幸せの絶頂だったのが、がんと現実に引き戻される。
今、魁皇様って言いませんでした? 魁皇様ってまさか……
「すみません、ここに國立家の主が……桜庭? なんで、お前……」
「尾上、さん……」
間違いない、尾上さんだ。
思わぬ出来事に、身動きが取れない。
彼が登場するのを待ち構えていたかのように、梗華さんが立ち上がった。
「遅かったではないか! 車で来るのに何分かかっておるのじゃ!」
「混んでたんだよ。近くで事故があったらしい」
「わらわが来たときは事故などなかったぞ!」
「俺が嘘をついてるって言いたいのか。お前って奴は、それが人を呼び寄せた態度かよ……!」
「ま、まて! 話せばわかる! いだだだだ!」
なぜか、胸にずきんと鈍い痛みが走る。
また、この感じだ。
尾上さんが梗華さんと仲良くしているのを見ると、なんかこう……
「ぶ、無礼者! 妹に暴力とは! わらわはそんな子に育てた覚えはないぞ!」
「お前に育ててもらった覚えはねぇんだが」
………ん? 妹?
「尾上さん、あの……梗華さんとは、どのようなご関係で?」
「……妹だよ、双子の」
いいいいいい妹!? 双子の!?
にしては性格真逆すぎません!?
「お、尾上さんに妹がいたなんて初耳です!」
「そりゃ誰にも聞かれなかったからな」
「いや、そうじゃなくて!」
「黙ってたのはお互い様だろ? 俺もお前があの桜庭企業の社長の末っ子だって知らなかったが?」
あ……
「ほんっと、天然すぎるにもほどがあるぜ。お前ってやつは」
くすっと微笑を浮かべた尾上さんが違う風に見える。
思わず見とれてしまうような、綺麗な微笑み。
「じゃ、そういうわけで梗華をよろしくな」
「天衣! いい返事をを期待しておるぞ!」
二人の背中を見送りながら、高まる鼓動が何なのか私には分からなかった……
(つづく!)
新事実、発覚と言いますか・・・
双子にしては似てなさすぎだろと、
何人もの方につっこまれました笑
桜庭姉妹だけでなく、レギュラー陣以外の女性も、
花の名前からとらせていただいてます。
梗華ちゃんのしゃべり方は独特で、書いていて楽しいので
結構お気に入りのキャラクターですね。
次回はそんな梗華ちゃんのお兄さんのお話!




