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料理したことねぇだろ

天衣の別荘にて、全員で海へ!!

まだまだ合宿は続く!

「なんで尾上さん、当たり引いちゃったんですか」

「文句を言うなら少ない確率で引いた自分を恨め」

「自分だってひいてるくせに」

「お前に言われたくない」

皮肉たっぷりに言い合いを続ける。

隣で尾上さんが呆れたように、ため息をついた。

なんでこんなことになってしまったのだろう。

そもそも事の発端は、さかのぼること三十分前の話。

食料が全く足りないという話になり、近くにあるスーパーに買いに行こうということになった。

なぜかくじ引きで当たりを引いた二人で行こうと美宇さんが言い出し、結果私と尾上さんになってしまった。

こうやって尾上さんの二人きりで話したりするのは、去年の夏休み以来だ。

あの時はかなり苦手だったけど、やっぱり変わらないままだなあ……

「買い物にスーパーまで来たのはいいけど、何作るか決めてねぇよな」

「言われてみれば……なんにしましょう」

「疑問を疑問で返すな。ここにはお前しかいないんだから、お前が決めな」

ええ!? いいのかな、そんなんで!?

ううむ……一応勉強合宿できてるわけだしぃ……

「ここは合宿らしく、カレーでいいと思いますよ」

「水瀬にしてはまともな意見だな。ま、採用してやらんこともない」

「なんでそんな上からなんですか!?」

「つべこべ言わずに行くぞ。腹を空かせたガキ達が待ってる」

ガキ、というと輝流さんと美宇さんを示しているのかな。

いくら尾上さんとて、神宮さんにそんなこと言わないし!

そう考えながら、私はにんじんやらじゃがいもやらを取っていった。

「お前、カレーの材料は知ってるんだな」

「私をなんだと思ってるんですか」

「別に。お前が料理してるの見たことないから」

ぎくっ!

「鈴木は下手くそだが知識はあるし、桜庭は家事得意だからな。水瀬、料理したことねぇだろ」

ぎくぎくっ!

さ、さすが尾上さん。やりおる……

ええそうですとも、大学生にもなって料理できない女とは私のことですよ! 料理できなくて何が悪い!

「そんなんでよくマスターと付き合えたな」

「し、仕方ないじゃないですか! 今から料理は頑張ればいいんです!」

「それで三人も落とせたのか。モテモテだよな、お前」

発せられた言葉に、驚きの声が漏れてしまう。

彼は呆れたように野菜を取りながら、私に言った。

「輝流のことは俺が痛いほど知ってる。あいつが苦しむ顔を見てきたから。にしてもお前、鈍すぎ」

「重々理解しております……」

「そんな鈍すぎるお前にはこれがぴったりだな」

「牛乳は買いませんからね」

いつの間に持ってきたのか、尾上さんの手には牛乳がある。

私が反対することが分かっていたかのように、彼はふっと笑った。

「なんで尾上さんは、私をからかうんですか? 不愉快です」

「なんでだろうなあ」

「しらばっくれないでください」

「……しいて言えば、俺もお前が好きだから……かもしれねぇな」

!!!???

え、今なんて言ったこの人!

まさか尾上さんも!? いやいやいや、そんなことは……

「じょ、冗談ですよね?」

「どうだろうな」

「おおおお尾上さんには天衣さんがいるじゃないですか!?」

「桜庭は飽きた」

「ええ!?」

なんやかんや言う私に、尾上さんは意地悪そうに笑って見せた……



勉強合宿のため海にやってきた私達、ルナティックハウスの従業員達。

夜は勉強まっしぐらという感じだった。

受験生の先輩方はもちろん、私や斗眞君は夏休みの宿題に取り掛かった。

勉強中何度もテレビの音が聞こえたかと思えば、何かで殴ったような音が響き静かになる。

あれやこれやとして、現在深夜0時である。

……眠れねぇ……

そりゃ、もともとすぐ寝付けない体質だけどさあ……

ボーっとしたくても、頭では色々考えてしまう。

神宮さん達は今頃勉強しているのかなあ。

そう思うとなんだかじっとしてられなくて、ぬくっと起き上がる。

部屋を出て真っ暗な空の下へ吸い込まれるように移動する。

夏の夜はまだ明るく、涼しい。

星がきれいな夜だった。

「ここ、星がきれいに見える一番いいスポットでもあるらしいよ」

不意に誰かの声が聞こえる。

振り返るとそこには、輝流さんがいた。

簡単な寝間着を身に包み、見るのは二度目になるメガネ姿だった。

「眠れないの? にがっちゃん」

「はい。なんか、色々考えちゃって……」

「オレも。こういうとこ、落ち着かないよね~」

輝流さんは「ついてきて」とだけ言って、私を海に降りる階段へ連れていく。

暗い夜の海はいつもと違って、幻想的だった。

「天気が良くてよかったね~。星がきれいに見えるよ」

「そうですね~……ちゃんと星を見るの、久しぶりです」

「オレも。こうして誰かとみるのは初めてだよ」

私達二人で話している中、一つの星がきらりと流れた。

「あっ、流れ星!!!!!」

早く願い事を言わねば!

えーっと、神宮さんと親密になれますように……神宮さんと親密になれますように……神宮さんと……

「オレの名前ね、流れ星から来てるらしいんだ」

「え? 輝流って、名前がですか?」

「輝きながら流れる星、略して輝流。単純でしょ」

流れ星、か。

なんていいネーミングだろう。

輝流さんにぴったりな由来だな。

「にがっちゃんの名前は、月から来てるの?」

「どうなんでしょう。聞いたことはあるんですけど、忘れちゃいました」

「オレは好きだよ、如月って名前」

好きという言葉に私は敏感に反応してしまう。

彼の優しい笑みを見ながら、私は口を開いた。

「あの、輝流さん。私……」

あの告白を返さなきゃと思った。

でもうまく言葉が出なかった。

また、輝流さんを苦しめてしまうのが嫌で……

「初めて、だったよ。オレのことを心配してくれたのも、こんなに頼られたのも」

「輝流さん?」

「だから、無理に答えようとしないで。にがっちゃんは先輩として接してよ」

優しいな、輝流さんは。

神宮さんに出会わなければ、きっと私は彼に恋をしたような気がする。

彼の笑顔が、私の不安を掻き消すような……

あれ……? ほっとしたら眠く……

うつらうつら、首が隣に倒れる。

「お休み、にがっちゃん」

優しい輝流さんの声とともに、額にキスされたような感覚がずっと残っていた……


(つづく!!)

というわけで、冒頭から始まったのは

まさかのかいちゃんタイムです。

苦労人である彼の言うことには、重みがありますね。

かいちゃんとのからみは個人的に楽しくて

結構癒しになります。


次回、合宿はまだまだ続く!

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