第九回:W124
ドイツのダイムラー社が展開する、車オタク以外にも圧倒的な認知度を誇る世界的な有名ブランドのメルセデスが、W201と共に初めて日本でも中流層以下の庶民にも浸透する切っ掛けとなった車。もしくは、日本を含めた世界中でタクシー車両や公用車に採用されているEクラスの1代目、という印象がある。
造詣に関して言えば、まさしく堅実で堅牢、日本車には劣るものの耐久性も良く、何より機能的である。
特にリアコンビランプのカバーに態と溝を彫り、埃を付着し難くして被視認性を確保するというメルセデスの伝統的な機構は、さり気ない心配り、という日本人の気質に通じる物がある。この辺りも日本人の琴線に触れ、メルセデスが日本国内でも支持される一因にもなっているのだろう。
尤も玉数で云えば、似たような雰囲気を纏う廉価版で、当時のメルセデスのエントリーグレードにだった190E事、W201に圧倒的な軍配が上がると思う。だが、大型車が好きな筆者としては、ブランド物という割には何処か安物臭が拭えないW201よりは、どっしりと腰を据えたような風貌をした、正統としてのW124の方がずっと好きだ。
そう言えば、W210にモデルチェンジして以降消えてしまったが、この時代のメルセデスやボルボを始めとした一部の欧州車と日本車には、ヘッドライトワイパーという、前照灯のレンズ面に付着した水滴や汚れを拭き取る為だけに存在する小さなワイパーが装着されていたものだった。
しかし、あれは本当に役に立つ装備だったのだろうか……?吹雪やぬかるんだオフロード走る場合でも、土埃や氷がへばり付くワイパーより高圧洗浄装置だけの方が便利な気が……。
あ……、だから消えたのか……。