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第四十回:UA4、UA5

 最初この代のインスパイアを見た時、正直筆者はホンダを見下した。否、正確にはそれまで好意的に見ていた物を一時的とはいえそうなったのだから、見限ったというのが正しい。兎に角がっかりしたのである。これまでトヨタにコンセプトを真似されてきたホンダが、そのトヨタから意匠をパクったのだから、消沈するなという方が無理である。

 X100系の後期型のテールランプと、チェイサーのほうがブレーキランプの反射鏡部分を筒状にした違い等はあれども、全体的な形といい各ランプの位置配置といい絶妙なバランスで一致している両者。しかもインスパイアの方はチェイサーがマイチェンするや否や先のモデルがまだ生産3年半だったにも関わらずいきなりモデルチェンジをするという気の焦り様。これは黒だろう。車名通り感化された結果だとしても、限度って云うものがある。


 でもまあ、それ以外の所に目を瞑れば、3代目インスパイア及び2代目セイバーは素直にいい車だったと思う。VTEC6気筒。左右2本出しマフラー。そして北米のスタジオ陣のデザイン故の豪奢なアメリカンスタイル。それでいて大き過ぎず手頃で取り回しやすいFFを知り尽くしたホンダらしい車だった。欲を言えば、レジェンドの下位互換モデル故に上位グレードに3.5Lエンジンが与えられず、2代目と同様に3.2Lという中途半端な排気量が与えられなかった事、そして280馬力規制撤回前で1L辺り100馬力発生させるVTECの実力が発揮させて貰えなかった事位だろうか、至らない所を挙げるなら。


 3代目インスパイアの特徴の中で、筆者が特に面白いと思っている点を記すとすれば、足踏み式のサイドブレーキと、トヨタのようなジグザグに折れ込んだATシフトゲートを各代のインスパイアの中で唯一採用している事だろう。奇妙な事に、ホンダは一時期オデッセイやアヴァンシア等、他のメーカーと同じように電子制御型ATが普及し始めた時に、今は当たり前となっているギア毎に角が付いて全体的に複雑な迷路みたいになっているタイプのゲートを一斉に採用しておきながら、その後何故か急に止め、一本線の物理ワイヤー制御と同じようなゲートに変更した。現在は、上位車種ではそこにマニュアルモードが付属し、右側の辺だけが極端に短いH字型のゲートが主流となっている。

 さらにインスパイアに関してのみ言及すれば、その後に出たUC1とCP3共にサイドブレーキはハンドレバータイプで固定化されている。恐らく次に出るだろう6代目も似たような仕様になるだろうと筆者は予測している程である。


 デザイン面で挙げるなら、インパネのメーターフードのラインに干渉するように取り付けられた、センターコンソールと運転席脇に設けられたエアコンの送風口だろう。特にセンターの方の鋭角な直角三角形を寝かせたようなデザインは常識破り上等なホンダにしか出来なかった物だと思う。エアコンの送風口は真四角か円形に決っている、そんな固定観念に囚われていた筆者にとっては、既成の概念を頭ごなしに否定された意味で衝撃的な車だった。


 後は初見殺しというか、ハザードランプのスイッチの場所がなかなか見つからなかったという思い出がある。よく見るとセンターコンソールの丁度ハンドルの環に隠れる位置、カーナビの画面から少し右に寄った所のインパネに赤い二重三角形が表示されていた小さなスイッチを見つけた時は、ホンダらしくない所業に拍子抜けしたものだ。緊急時に使用することが多いボタンや、使う頻度の高いスイッチ類は纏めて大きく解りやすいレイアウトにする。それが実用面にも特化した、本田宗一郎から脈々と受け継がれてきたホンダの精神の筈だったからである。実際、確かに小さくごちゃごちゃしたスイッチもあるものの、基本的にホンダ車のスイッチレイアウトは見易く目的のボタンを比較的容易に探し出せる造りになっている車が殆どである。その点でも、UA4及びUA5は奇種なホンダ車だったといっていい。


 総括すると、悪くはなかったがややホンダらしさに欠けていた。それがこの車に対する筆者の感想であり、評価である。

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