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遺跡調査 - 正面通路

 2日目も初日と同じように暗くなる前に町に戻った。

 翌日の朝、遺跡へと出発だ。


「お姉ちゃん、テントには泊まらないの?」

「んー、今日は現地で泊まってみる?」

「どっちでもいいけど、町に戻ってると時間がかからないかなと思って」


 わたしはインドア派のせいか可能なら家に帰ろうとするけど、確かに町との往復にかかる時間も毎日だと結構な時間になる。

 食事や睡眠は安全な町に戻った方がしっかり取れるというメリットもあるけどね。


 拠点には見張りの人がいるし、試しに泊まってみても良いかな。



 遺跡前に張ってあるテントに入る。

 ケレベルさんとドゥニさんが何か話していた。


 どうやら、右手通路の先にあったパネルを調べるためにドゥニさんたちが護衛するようだ。


「ミーナさんたちには正面の通路を調べて貰おうと思うのですが、どうでしょうか」


 基本的に、ここの調査はギルドの職員さんが遺跡探索の担当を割り振るようにしている。

 左右の通路は最後まで調べたので残りは正面の通路だけだ。


 正面の通路を調べることに了承すると、正面の通路は動物が多かったので何かいるかもしれないと言われた。


 左通路の先の休憩所のように壁が崩れているのだと思う。

 穴を埋められるように、テントにあった物資から木の板をいくつか持って行くことにして、早速遺跡に入ることにする。


 テントを出るとき、ケレベルさんたちはまだ何か打ち合わせをしているようだった。

 こちらに気付いたので軽く手をあげて挨拶代わりにしておいた。


「ミーナ様、こちらの通路も部屋は無視して真っ直ぐ行きますの?」

「うん、この先にどんな部屋があるか先に調べたいからね」


 いつも通りに時間を測るためにもランタンに火をつけて遺跡に入った。

 地下に降りると照明がついていて明るい。


 1日経っても魔力の残量は20%から1%しか減っていなかったので、まだしばらくは持つだろう。

 他の装置が生きていたら更に魔力を消費する可能性もあるので、調査が長引きそうなら補充しにいく必要があるかもしれない。


 正面の通路は、今は別件の依頼に出ているパーティが調べていたので手前から左右15部屋ずつぐらいは調査済みになっている。

 他の通路と同じ数の部屋があるとしたら半分ほどのところだ。


 通過する部屋数を数えながら、どんどん進んでいくと片側で50部屋あった。

 こちらの通路は左右に比べて少し長いようだ。通路の先には途中で手前側に折り返す上り階段が見えた。


 その上り階段の踊り場になっている場所の壁が崩れて自然の洞窟が見えていた。

 崩れた穴は小柄なリルファナなら通れそうかなと思える大きさだ。


 ……うーん、ぎりぎりそうだし実際に通ろうとしたら途中でつっかえるか。


「ミーナ様、どうしましたの?」


 リルファナのつっかえそうなところを見ていたら不思議そうな顔で質問された。


 最初の日にレダさんが言っていた動物や魔物は、ここから入り込んでいたのだと思う。


「付近に動物や魔物はいませんわね」


 一昨日から遺跡内に照明がついているためか、明るさが苦手なラットや蝙蝠は近寄ってこなくなっているのかな。元々洞窟内に生息しているような生物なら暗いほうが良いだろうし。


 持って来た木の板で簡単に塞いでおくことにした。

 思い切り体当たりされたりすれば壊れてしまう程度だけど、普通の動物なら無理に入ってこようとはしないだろう。


 壁の崩壊部分に軽い応急処置をしてから、上の階へ進む。


 階段を上がった場所は少し広い空間になっていて、壁や床と同じ材質の椅子が並んでいた。

 上ってきた左側には、通路に面した窓口がある小さな部屋と、その横の部屋の扉がある。反対側にも扉が2つあった。


 とりあえず外から中が見えたので、窓口のある小さな部屋に入る。


 奥に大きな棚があり、ガラス瓶が並んでいたようだが、ほとんどが倒れるか床に落ちて割れてしまっていた。

 液体か何かが入っていてもこぼれた後に渇いてしまったのだろう、今では割れたガラスの破片しか確認出来ない。


 棚の奥に残っている数本の瓶を見てみると、緻密な細工が施されている非常に透明度が高いガラス瓶だった。

 これらの瓶も最初から空き瓶だったのか、気化してしまったのか分からないが何も入っていない。密閉性はあまり高くないのかな。


「お姉ちゃん、すごい綺麗な瓶だね」

「うん、見たこと無いね」

「古代文明ではこのようなものも作れましたのね」


 棚の下側には引き出しがあり、開けると書類が入っていた。

 あまり空気に触れない場所に入っていたから保存状態が良かったのだろうか、紙に触れても崩れないようだ。


「うーん……何かのリストかな?」


 古代語だとは分かるけど、固有名詞なのか読めなかった。

 取り扱っていた物のリストか、名簿か何かだろう。


 他に目ぼしいものはないので、次に隣の部屋を調べる。

 小さな会議室か何かのように見える部屋で、テーブルがいくつか並んでいた。


 部屋の端には昨日見たものと同じパネルが2つあるが、壊れているのか触れても反応すらしない。また、書類なども残っていなかった。


「この部屋は特に何も無さそうだね」

「ええ、隣の部屋と考えると病院のようなフロアだと思いますわ」

「リルファナちゃん、病院ってなに?」

「治療を専門にした教会みたいな感じかな?」


 村だと怪我をしたときに教会のシスターに頼むぐらいなのでクレアは病院を知らなかった。


 この世界(ヴィルトアーリ)では病気の治療をする魔法もあるが、あまり頻繁に使うものでもない。

 どうやら魔法で治療してしまうと、病気に対する抵抗力が上がらないことが体感で分かっているようだ。もちろん生死に関わるような病気なら魔法で治療するけど。


 通路の反対側の部屋は、予想を裏付けるかのように診察室だと思われる部屋が2つ並んでいた。

 病院から先への通路は無いので、通路の個室を調べながらテントまで報告へと戻る。



 個室の調査などもしていたので、テントまで戻ってきたのはお昼を随分過ぎた頃。


 途中の個室は、奥側にいくつか家族用だと思われる部屋があったぐらいで基本的な造りは一緒だった。

 ドゥニさんたちも護衛だけならそろそろ戻ってくるだろうし、ギルドの職員さんには一緒に報告すると伝えて待つ。


 少し待つとドゥニさんたちが戻ってきて報告会となった。ギルドの職員さんもメモを取りながら聞いている。


「俺たちはケレベルさんの護衛で、右の通路の奥まで行ってきたぐらいだな。パネルの方は聞いていた通り、ケレベルさんが見てもどうにもならなかった」


 あれを修理するのは難しいだろう。ドゥニさんたちのパーティは新しい発見はなかったようだ。


 わたしたちは正面通路の先を報告する。


「ふむふむ。この遺跡は個室の並ぶ通路が3本あって奥に共用スペースがあるといった感じですね。避難所というのも頷けますね」


 わたしたちの報告で、一応は遺跡の全体像が掴めた。


 地図を綺麗に書き直していくと、職員さんが言うように3本の通路の先には階段があり、上階にそれぞれ1部屋ずつ。左右の通路の先は休憩所、食堂のような大部屋がある。


「うーん。お姉ちゃん、リルファナちゃん、これって変わった建物だね」


 地図を見ていたクレアが休憩所、食堂、病院のフロアを指差す。


「みんなで使う部屋を何であちこちの端の方に作ったんだろう? 面倒だと思う」


 わたしが思っていたことにクレアも気付いたようだ。

 そう、この造りだと生活するのが面倒である。わたしがこの施設を設計したら少なくとも食堂は階段の付近に設置すると思う。


「うん、それとこれだけ大人数の避難所ならリーダーと、魔石や物資を管理する人が必要になるだろうし、そのための部屋も作ると思うかな。それっぽい部屋は見つかってないんだよね」

「たしかにそうだな……、遺跡としか見てなかったが生活場所として見たら変だ」


 ギヨームさんも同意する。


 考えられるのは、現在調査した部分はあくまでも遺跡の一部で、全体で見ると発見した部屋も端ではなく実は中央付近にあること。または、他に転移の魔法陣や通路などがあるんじゃないかとわたしは思っている。


 ただし、これはあくまでも推測で、建築の都合とか当時の流行みたいなもので設計しただけかもしれない。


「むむむ。そうなるとどこまで調査するか、難しいところですね……」

「とりあえず遅くなりましたがお昼にしませんか。腹が減っては頭も働きませんよ」


 ケレベルさんが弁当を出しながらそう言い出す。現地調査もしないといけないせいか、なんだか随分疲れているようだ。

 テント内の職員さんたちもまだだったようで、みんなでお昼休憩をとることになった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「お姉ちゃん、すごい綺麗な瓶だね」「うん、見たこと無いね」「古代文明ではこのようなものも作れましたのね」 値打ちがありそうな瓶なのに持って帰らなかったのかな。
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