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ミニエイナ散策

 宿屋で聞くと南通りが旅人向けの店が多いとのことだ。

 東通りは町の住民向けであまり見るようなものはないらしい。西通りは昨日歩いて分かったが宿屋と飲食店が多い印象だ。


「南通りに行ってみようか」


 大陸の端であり、地味な鉱業が主要であるというミニエイナに観光しに来るような物好きは少ない。そのため、あまり見るようなものも無いようだ。

 鉱山の町特有の面白いものがあるかもしれないと、ふらふらとお店を回ってみることにした。


 冒険者向けの武器屋を覗いてみたが、内容はガルディアの町とあまり変わらないようだ。

 色々と回ってみたところ、そもそもガルディアの町へ武器を卸しているのもミニエイナの店らしい。変わらないわけだ。


 宝石を扱う店もあったので入ってみた。


 魔法付与エンチャントに欲しいのはセブクロで効果が分かっている宝石。全属性の耐性が付くダイヤモンドやSTR(筋力)の上がるルビー辺りだろうか。

 ちらっと値札を見たら大金貨が数枚飛ぶ値段だ。この世界(ヴィルトアーリ)でも宝石は高いようだ……。


 原石ならもう少し安いかもしれないが、取り扱っていないみたいなので諦めた。


 目に留まった金物屋に入ってみる。

 包丁、鍋、フライパンなどの調理道具。のこぎり、釘、ナイフといった工具などを扱っている。


 こちらもガルディアの町へ卸しているようだが若干安いとのこと。

 それに職人が一点ずつ作る品質の良いものはミニエイナでしか買えないようだ。自分らで使うために買っていくのも良いだろう。


「これなんだろう?」


 店の一角でクレアが、手のひらに納まるぐらいの銀色の金属のプレートを不思議そうに見ていた。光の当たり方で色が少し変わるようだ。


「お守りだって」

「そうなんだ」


 説明が書かれた札が見えにくい位置にかかっていた。余った金属で作った土産用の加工品にも見える。


「ミーナ様、これ……」

「んー?」


 リルファナが唖然としていた。

 よく見ると金属プレートには魔力が篭もっているような印象を受ける。


「ああ、その金属かい? この辺りで稀に掘り当てられる金属なんだが、硬すぎて大量に加工するには不向きでな。余った分はこうして土産物として使ってるんだよ」


 店の人に聞いてみたところ、そんな答えが返ってきた。


 ……これ、霊銀ミスリルじゃないかな?


「武器とかにはしないんですか?」

受注生産オーダーメイドでたまに加工するぐらいって話だな。武器としての質は良いはずなんだが、使いこなせる人が少ないとも聞いたことがあるな」


 セブクロと同じなら武器にレベル制限があって、それ以下の人が持ってもあまり強くないのかもしれない。

 霊銀ミスリル製の武器を使えるのは、上級職になれるレベル80以上だったはずだがもったいなさすぎる……。


「鉱石で買うことって出来ますか?」

「んー、俺が仕入れてる鉱石屋にいけば買えると思うが、素人には加工どころか溶かすのも難しいと思うぞ?」

「興味が沸いたので研究してみようかと」

「若いのに学者みたいなこともしているのかい? まあいいだろう教えてやるよ」


 霊銀ミスリルならカルファブロ様の加護と炉があるので使えるはずだ。


 お礼ついでに、レダさんの家で使う調理道具を購入する。

 備え付けのものは手入れもされずにずっと放置されていたせいか、錆びが多かったりして使いにくかったのだ。


「せっかくだしお母さんへのお土産にしようかな?」


 クレアの提案によりフェルド村の方にも買っていくことにした。


「おう、まいどあり!」


 教えられた鉱石屋はすぐ近くだったので、先ほどと同じような説明をして霊銀ミスリルの鉱石を売ってもらえた。

 ついでに鍛冶の練習用に銅、鉄、銀といった普通の金属も揃えておくことにする。『鉱石図鑑』という鉱石の一覧が載った図鑑もあるというので買っておく。


 全部で大金貨2枚ほどかかったが後々への投資と考えれば十分だろう。


 東門の周囲にはお土産屋が並んでいる。


 小型のナイフなどの実用品から金属や宝石の欠片を使ったアクセサリー。

 運気を上げるというパワーストーンみたいなものが多いようだった。この世界(ヴィルトアーリ)ではLUK(幸運)が数値として存在しているので、もしかしたら少しぐらいは本当に上がるかもしれないけどね。



 午前4(正午)の鐘がなり、適当に入った定食屋でお昼を食べる。

 その後も南通りをぶらぶらしていたが、見るものもなくなってきたのでギルドに戻ることになった。


 今日はすぐ依頼報告になるだろうから3人で行く必要があるだろう。先に2階の雑貨屋の方へ行った。


「おう、嬢ちゃん待ってたぜ!」

「どうでした?」

「言われた通りに部屋が見つかった。地下の広間には神像だけあったとのことだな」


 あれ、部屋があったと思うのだけどな?

 わたしたちが全て回収したのでカルファブロ様が閉じたのだろうか。


「壁に使われている石材が見たこともないようなものらしくて、素材関係の研究家たちが喜んでるって話だな」

「硬かったですしね、あの壁……」

「どうやっても破壊出来そうにないから現地に行くとか言ってたぞ。ツルハシで壊したんだよな?」

「はい、そうですよ。たまたま脆くなった場所だったのかも?」


 魔法剣のことは内緒だ。


「魔力による崩壊だったよな……。たまたま運良く魔力のある場所でも穿ったのかもしれんな」


 ドワーフの店員さんには探るような目で見られているが、涼しい顔で流した。


「……まあいい。報酬なんだが研究家たちが『よくやった!』と言って研究費から持ち寄ったせいで、随分と多くなったみたいでな。情報提供の依頼という扱いにしたんで、これを下の受付に渡せば受け取れるはずだ。小金貨3枚近いみたいだぞ、D級なら破格の報酬だ。良かったな」

「ありがとうございます」


 中身は全て持ち出した部屋の情報だけだというのに良い金額になったようだ。

 笑顔で報酬引換え用の証書を渡された。ギルドカードはランクを見せただけだから店員さんはわたしたちが普通のD級の冒険者としか思っていないんだったね。


「良い金額になりましたわね」

「お姉ちゃんの勘で掘っただけなのに申し訳ないような……」

「これが冒険者ってやつだよ」


 一応は勘じゃなくて知識なんだけどね。


 1階に下りて素材買取の受付に行く。わたしは昨日いなかったのでクレアが前に出た。


「あの、昨日の査定結果を聞きに来ました」


 クレアが受付の若い男性に声をかけ、ギルドカードを出す。


「クレアさんね。担当を呼ぶから待ってね」


 若い男性は裏に入っていくと、すぐに慌ててエルフの男性が出てきた。リルファナが昨日の人ですわと小声で教えてくれた。


「お待ちしておりましたよ!」

「え、はい」


 なんだか担当というエルフの男性はテンションが高い。クレアが少し引いている。


「キャノンの素材の中に未知の素材が混じっていました!」


 やはり隠し部屋の壁だけじゃなく、ウルトラキャノンも特殊な素材だったようだ。

 ミニエイナからは1日か2日で戻る予定だと伝えていたので急いで査定してくれたらしい。


「査定の結果なのですが小金貨9枚と小銀貨3枚となります。これからの研究次第ではもう少し増えるかもしれません!」

「あの、いつミニエイナに来るか分からないですけど」

「ガルディアの町を拠点にしているんですよね? こちらからガルディアの町へ連絡いたしますよ。増額分もガルディアで受け取れるようにしますのでこちらに来る必要もありません」


 クレアがこちらを向いたので頷いた。


「じゃあ、それでお願いします」

「えっと、ギルドマスターのレダさんと知り合いだから、連絡先にレダさんも含めてくれると助かるかも」

「分かりました。そういたしますね」


 ずっとガルディアを拠点にするか分からないし、拠点は残しても長旅に出てしまうかもしれないからね。

 わたしとリルファナのカードも出して依頼達成の記録を入れてもらうように伝えた。


「お金は依頼受付に行かなくてもこちらでも渡せますよ」

「あれ、ガルディアではダメだったんだけど」

「ガルディアのギルドは新米の面倒見が良いですからね。駆け出しには毎回受付を通して何かあればアドバイスなどもしているんでしたっけ」


 あれってガルディアだけだったのか。ガルディアの町ではC級になると素材買取の受付で済ませられるようになるそうだ。


 今回は情報料も受け取るから依頼受付で受け取ることにして記録だけにしてもらった。


 その後、依頼受付の窓口でまとめて報酬を受け取る。


 内訳ではウルトラキャノンの素材が小金貨7枚と半分、キャノンが小金貨1枚、ソルジュ苔と闇草が残りだ。キャノンの鉄くずを全部回収してきたので思ったより金額が高くなったみたい。

 採取よりも討伐の方が危険度が高いせいか報酬は多くなるようだね。


 合計で小金貨12枚と小銀貨3枚。

 予想以上のお金になって鉱石代を除けば一気に黒字になった。


 またお小遣いとして小金貨3枚ずつクレアとリルファナに渡した。2人とも全てカードに入れて貰うことにしたようだ。


 まだ時間があるのでダメ元で鉱山近くの鍛冶施設を見に行く。

 最初に回ったいくつかの施設は予想通り断られたけど、大丈夫というところもあったのでそこで見学させて貰った。



 昨日と同じ宿屋にもう1泊することにした。

 その前にいくつか見て回ったが良さそうな宿屋が見つからなかったのだ。なんだかんだでギルドのオススメだからか他を適当に探すよりも良い宿なのだろう。


「お姉ちゃん、ステラーティオ様に加護を貰ったんだけど」

「ん? どんな加護か教えてもらったの?」

「うん! 『あの姉と共に歩むのは酷烈たる道だろう。我が潤沢なる魔力から些かばかり供与してやろう!』って体力強化とかくれるって言ってたよ」

「お、おう」


 気分で与える加護の量は調整出来るのか……。

 しかし、クレアもよくイケメンのセリフまできっちり覚えてるな。


 クレアの体力が上がったのならガルディアまで1日で帰っても大丈夫そうか。


 明日は、朝早くミニエイナを出てガルディアに帰ることに3人で決めた。早く鍛冶を試したいね。

ブックマーク、評価、誤字報告ありがとうございます。


執筆ペースが間に合わないので今後は1日置きぐらいの投稿になるかもしれません。

(3日以上空いてしまうことがあれば活動報告で連絡させていただきます)

よろしくお願いします。

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