鉱山の戦利品
坑道から外に出ると、暗くなりはじめている。
ウルトラキャノンと戦っていたので思ったよりも時間がかかってしまった。
とりえあえず宿屋をとってから夕飯をどうするか決めよう。依頼の報告は夕飯次第で、明日でも良いだろう。
鉱山近くから町の入り口方面へと戻り、ギルドで教えてもらった西通りの宿屋に入る。
木造で2階建ての小さな宿屋だ。
宿屋に入るとカウンターが目の前にあり、ドワーフの女性が店番をしていた。
「いらっしゃい。3人かい? 風呂付きの部屋も空いてるよ」
「はい、1泊でおいくらですか?」
「3人で小銀貨6枚。朝食が必要なら小銀貨1枚で3人分のサンドイッチを作るよ」
あれ、サンドイッチという名称はサンドイッチ伯爵から付けられたんじゃなかったっけ。
やっぱり翻訳機能みたいなものが働いているのかな?
それはさておき、お風呂付きでこの価格ならここに泊まれば良いだろう。
「朝食付きでお願いします。あと夕飯はどこで食べられますか?」
「うちじゃやってないから、通りの店を利用してもらうことになるね」
「じゃあ食べてから戻ってきます」
「あいよ。記帳だけしてもらっても良いかな?」
宿屋側としてはそのまま戻ってこない可能性もあるから記帳ぐらいはさせておきたいのかな。
部屋が埋まってしまうとは思わないけど、別の宿屋を探すのも面倒だし先払いしておくことにした。
夕飯を食べる店を探していたらギルドの近くへと戻ってきてしまった。
どうやら鉱山の町ということもあり、男性の働き手が多いためか酒場を兼ねた店ばかりで食事処は少なかった。
「ガルディアみたいな入りやすそうな店が無いねえ」
「どの店も無骨な感じですわね」
「お姉ちゃん、お腹空いてるしどこでもいいよ?」
「じゃあここにしようか」
クレアのお腹が悲鳴をあげているようなので、悩んでも仕方ないし目の前にあった店に入ることに決めた。
メニューの看板は出ていないが、どうやら賑わっているのは分かる。
店に入った途端、白煙が視界を埋め尽くす。肉の焼ける良い匂いがした。
「焼肉ですわ!」
適当に選んだ店は焼肉屋だったようだ。
肉を頼んで自分で焼いて食べるシステムのお店で日本の焼肉店とさほど変わらない。
ただ、肉の種類は少ないみたい。
というよりメニューは牛肉、豚肉、鶏肉ぐらいでしか分かれていない。頼むときに脂身多めなどと要望を言っておくと良いようだ。
メニューには、コメもあった。
わたしは焼肉屋でもご飯を食べる派なので頼むことにすると、クレアも食べたそうにしていたので一緒に頼んだ。
リルファナは食べない派らしい。
「タレと絡めて食べると美味しいね」
「クレア、このお肉をご飯に乗せるんだよ!」
「すごい!」
「横で食べられているとわたくしも食べたくなりますわ……」
この店では、甘めの焼肉のタレもあった。
胡麻も入っているのでこれも転生者絡みかな。どちらにせよ創った人はグッジョブである。
結局、リルファナもコメを小盛りで頼んでいた。
◇
ギルド近くまで戻ってきてしまったこともあり、宿に戻る前に依頼の報告と素材の買取も済ませてしまうことにした。
クレアとリルファナに買取は任せて、わたしは2階の雑貨屋へツルハシの弁償をしにいくことにした。
「お、帰って来たか。随分遅かったな」
「少し奥まで入ってみたので。それでツルハシなんですが……」
先ほどツルハシを貸してくれたドワーフの店員さんだ。わたしは壊れたツルハシの柄の部分を見せた。
「見ての通り、壊れてしまったので弁償します」
「え? ちょっと見せてみろ!」
ツルハシをわたしの手からひったくるように取ると、ツルハシを調べ始めた。大き目の破片は拾ってきたのでカウンターに置いておく。
「なんだこれは……。硬いものに打ち付けて割れたのかと思ったが、そうじゃない。内側から割れたような。いや、自壊した……?」
見る人が見ると分かるもんなのかな?
「ダメだ、分からん。『鑑定』」
そういえば『鑑定』の魔法ってどの程度分かるんだろう。無くしたことにしたほうが良かったかな?
「魔力による崩壊か? ますます分からんぞ、これどうした?」
「変な壁を掘り当ててしまったので、そこを掘ろうとしたら割れたんだけど……」
嘘は言っていない!
「ほう、場所は?」
「この辺かな。明らかにその周辺だけ石壁だから見れば分かると思う」
ドワーフの店員さんに出された地図に印をつける。
「また変なところを掘ったな」
「壁は壊せたけど、中にあった物は採取してきちゃったよ」
「それは冒険者なら当然の分け前だから問題ない。明日、常連の冒険者に部屋があるか確認をさせよう。これが本当なら今までの坑道もまた改めて探索する必要があるかもしれん」
隠し部屋が他にもあるかもしれないと思うと夢はあるね。
ツルハシの代金だが、むしろ隠し部屋の情報料を払わなくてはならんと言われ支払わなくても良くなった。確認後となるので明日の午後に来れば支払ってもらえるようだ。
「ミーナ様」
呼ばれて振り返ると、リルファナとクレアが雑貨屋まで上がってきていた。下で待っていてくれても良かったのだが、何かあったのだろうか。
「素材の査定に明日までかかるって、お姉ちゃん」
「どうやらウルトラキャノンの素材が未知なようですわ」
リルファナが、わたしたちにだけ聞こえるように呟いた。
鍛冶や調理、製薬に使えそうな素材も多いので、採ってきた素材の一部は取っておくようにした。
それでもウルトラキャノンの鉄くずはかなり大きく数も多かったし、今まで見たことの無いものだったのか査定に時間がかかるようだ。
特に見た目も変わらないので気にしてなかったがプチキャノンと同じ鉄くずじゃないのかもしれない。
「こっちも隠し部屋の情報料が貰えるらしいから、明日はミニエイナを観光してみようか」
「分かりましたわ」
「うん!」
ギルドでの用事も済んだので宿屋に戻ることにした。
今日は早朝からミニエイナに出発して、そのまま鉱山まで行ったので明日はゆっくりしよう。
◇
宿屋の客室は、ベッドが4つと大きめのテーブルが1つ設置されているだけの簡素な部屋だった。ベッドの数から4人部屋のようなので、遅い時間まで空いていたから割り当てたのかなと思う。
お風呂とトイレがあるし泊まるだけなら十分だ。
寝る前に、隠し部屋で見つけた書類を読んでみることにした。
古ぼけてはいるがしっかりと紐で結ばれ製本されているし、長期間放置されていたようには見えない。神様の所有物なので保存機能みたいなものでもあるのだろうか。
「一緒に置いてあった道具の使い方で、後半は鉱石の加工方法みたいだね」
「お姉ちゃん、読めるの?」
「ん? 読めるけど、……あれ?」
クレアに言われて気付いたが、日本語でもこの世界で覚えた言葉でもなかった。
「どれどれ、……これは古代語ですわね。ヴィルティリア文明の特徴があるように見えますわ。あら? わたくしも読めますわ」
「ええ!」
「あー、カルファブロ様に能力貰ったせいかも」
「そういえば道具が使えるようになったと言われましたわね、この本は説明書のようですし道具に含まれるということでしょうか」
道具は金床、ハンマー、やっとこ、鏨といった鍛冶のためのもので、多分日本でもあまり変わらない使い方をするのだろうなと推測出来た。
1つだけ特殊で炉の代わりになる魔道具があるようだ。
携帯炉とでも言えば良いのだろうか。
普段は、手のひらサイズのキューブ状だが魔力を篭めることで展開し炉として使えるようになるらしい。
火の維持の必要がなく、石造りなら室内で使えるようだ。レダさんの家の地下なら家具を退かせば使えそうに思える。
「ガルディアに戻ったら試してみようか」
「大家さんに伝えてからの方が良いですわよ」
「ねえ、リルファナちゃん、ヴィルティリア文明ってなに?」
「はるか昔に栄えた文明ということ以外は分かっていませんの。解明しようと調査している学者は多いので、図書館に行けば書かれた本もあると思いますわ」
ヴィルティリア文明、この世界で語られる最古の文明だ。
どのような文明だったのか、何年存続し、なぜ滅んだのかといった記録は残っていないが、世界に残っている遺跡はこの時代のものも多いと言われている。
記録が不自然なほど残っていないことから、天災かなにかで短時間で滅びてしまったのではないかという説が支持されているようだ。
セブクロでも1万年前に滅んだということは分かっているが、理由などは不明のままだった。魔法文明とも言えるような技術力の高さはちらほらと見えていたけれど、それだけだ。
「よし、鍛冶は帰ってからだね。明日はゆっくり町を回って、明後日ガルディアに帰ろう」
「ミニエイナの町って何があるのかな?」
「明日、フロントで少し町のことを聞いてみましょうか」
鉱山に直行しちゃったから歩いてみたところぐらいしか分からないんだよね。ごめんよ。
――翌日。
頼んでおいた朝食を部屋で食べて、町の観光に出かけることにした。




