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王都 - 遺跡の報告

 王都の北門から町へと入った。


「ちゃんと使えたね」

「ええ、帰りだけとはいえ楽ですね」


 後ろからクレアとマオさんの声が聞こえた。


「すぐギルドに向かいますの?」

「うん。報告時にマオさんもいる方が良いと思うし」


 ガルディアのラミィさんの店前でネーヴァと別れ、レダさんに手紙を書いてもらった。

 昼食を済ませたあと、町門タウンポータルに跳び、麓の村を経由して王都まで戻ってきたところだ。


 迷宮の探究者(ダンジョンシーカー)という王都で有名なチームに所属するマオさんがいた方が、何かあったときに便宜を図ってくれるかもしれない。


「こっちから入ると、ギルドは逆方向になっちゃうのが面倒だね」


 北方に山脈が広がる地形上、王都の玄関となるのは南側なので仕方ないことではあるのだけど。

 北門近くで町の中を走る馬車に乗り火の()区へと移動した。



 大通りの冒険者ギルドに入り、入口で対応している職員さんに手紙を渡す。


 ガルディアのギルドでは昼食後の閑散とした時間だが、さすが王都のギルド、この時間でも依頼を見ている冒険者がちらほらといる。

 寝坊でもしたのか、後日受ける依頼の目星でも探しているといったところだろうか。


「急ぎなのですぐ渡してもらえますか?」

「えっと……、分かりました。少々お待ちください」


 レダさんに何も言わずに手紙を渡すと時間がかかるから『急ぎ』だと伝えるように教えてもらった。

 職員さんもそう言われてから差出人を確認したので、何も言わなければ後でまとめて渡すのだろう。


 しばらく待っていると受付とは別の人が小走りでやってきた。

 ギルド職員の制服だが、首回りや胸元などが少し違う意匠なので役職の位が高いことが分かる。


「お待たせしました。3階に案内いたしますね」


 3階に上がると部屋が並んでいた。

 職員の会議やプライベートな依頼などの個室での話し合いなどに使われるフロアだ。


 いくつかの部屋では盗聴防止の魔道具なども設置されているようだが、使用料が高くなっている。


 1人ずつがすれ違える程度しかない通路を通り、一番奥の部屋へと案内された。


「お連れしました」

「はいはーい。下がって良いよ。ありがとう」


 案内された部屋は、レダさんが使っているのと似たような部屋だった。

 違いは部屋の広さぐらいだが、3倍はありそうだ。


 部屋の中央にはソファとローテーブル。


 その奥に、普段ギルドマスターが使っているであろう大きな机。分厚い本や書類、筆記用具の広げられている。

 部屋の壁沿いにはぐるりと囲むように、所狭しと書類や本の詰め込まれた棚が置かれていた。


 さきほど返事をした男性が棚の書類をひっかきまわしながら、こちらに振り向く。


「書類を探していますので、どうぞかけていてください」


 眼鏡をかけた優男といった印象の男性だ。小綺麗にしていて若く見えるが、歳は父さんよりは上だと思う。

 手でソファを指し示す。


「えっと」


 クレアがソファを見て困惑している。


 そのソファに目を移すと白い狼が行儀よく座って、こちらを値踏みするような顔で見ていた。

 大きな狼にガン見されていると、座れと言われても大丈夫なのだろうかと不安だ。


「おっと。シロ、お客さんだから退いててな」


 眼鏡の男性がソファに座っていた白い狼に向かって話しかけた。

 白狼は仕方ないなあという顔をして、ソファを下りると机の横まで移動し寝転がった。


「ホワイトウルフですか?」

「お、知っているのかい。聖王国の方で知り合ったんだよ」


 どうやら王都のギルドマスターさんは、テイマーかブリーダーなのだろう。

 ラーゴの町に日記を残していたハーミの主を除いて、使い魔を連れている冒険者を見たり聞いたりしたことがなかったが、いないわけではないらしい。


「ん? 迷宮の探究者(ダンジョンシーカー)ではないですよね?」


 ギルドマスターさんは自ギルドのメンバーをある程度は把握しているようで、マオさんが同行しているから戸惑っているようだ。


「色々あって探索時に同行していたから一緒に来ただけなので、今回の報告のリーダーはこちらのミーナさんです」

「ふむ、了解」



 父さんに書いてもらった手紙も読んでもらい、遺跡の発見報告と発見内容を伏せておきたい旨を伝える。

 父さんの手紙を読んだギルドマスターさんはなんだか少し驚いた素振りだったけど、手紙については特に何も言われなかった。


 確認のため、遺跡内部の地図を描いてほしいということで、探索時のメモを見ながら写す。


「なるほど……。地図の方も合っていそうです。ロボットとは言え、いまだに住人がいるというのは驚きましたね」


 ギルドマスターさんは棚から引っ張り出してきた古い本や地図を見比べて呟いた。


「地図があるんですか?」

「内部構造だけはギルドにあった昔の地図に残っていたんだ。これが本物かどうかすら分かっていなかったのだけど……。うん、偶然の一致では片付けられないほどぴったりだね」


 昔、活躍した転生者プレイヤーが残していたんだろうか。

 ゲートを使っていたとしても不思議ではない。


「昔のギルドマスターが『管理者』と呼ばれる存在から教えてもらったとか伝わってるけど……。心当たりはあるかな?」


 どうだっけと天井を見上げながら考える。

 遺跡にはロボットたちが働いていたが、それっぽい人……、ロボットはいなかった。


 けど、何か聞いたなと思い出した。


「……そういえば、出かけてるっていうロボットがいたような」

「探したけど、見つからなかったロボットさんもいたよ」


 水処理施設のロボットが、あの施設には5体のロボットがいると言っていたはずだ。ただし、わたしたちが見かけたのは3体だけであり、2体出会っていないことを思い出した。

 そのため、ロボット用のメンテナンス通路などもあるのではないかと思ったのだ。


「なるほど」


 とギルドマスターさんは一言置いてから、姿勢を正して丁寧に述べる。


「まず、ポータルの存在が広がると悪用される恐れもあるので、遺跡の秘匿についてはギルドとしても賛成です。しかし、もっと細かく調査する必要はありますね」

「そうすると、やっぱり……」

「ええ、入口の開き方が分かりませんので、出入りだけでもミーナさんには手伝ってもらう必要があります」


 まあそうなるだろう。

 ここまでは予想通りといったところか。


「実のところ『管理者』と呼ばれる存在と当時のギルドマスターがいくつか契約をしていましてね。内部の調査というのも、ほぼ形式的なものになると思います」


 どうやら、ロボットたちの居場所を荒らしたりするようなことはなさそうだ。

 それなら手伝うのもやぶさかではない。


「手紙の方では『王国の旅人』を推薦するということでしたが、問題ありませんか?」

「はい。アルフォスさんたちなら安心です」

「おや、お知り合いでしたか。あとは研究員が1名か2名同行いたします」


 ギルドでも秘匿してくれるようだが、国の方へは知らせないのだろうか。


「ええと、国王陛下には私の方から直接お伝えいたします。まあ、あの方なら大事にはしないでしょう」


 そう言って、ギルドマスターさんは何か書きつけながら呟いた。


「……特にミーナさんが遺跡の発見者なら」

「ん?」

「いえ、なんでもないです」


 声が小さすぎてよく聞こえなかったが、ギルドマスターさんは王様とも知り合いのようだ。

 冒険者ギルドは国としても重要な組織だから当たり前といえば当たり前か。


 その後、調査のための予定を立てることになった。

 わたしたちの予定は特にないのでいつでも大丈夫なのだが、アルフォスさんや調査員の選定などもある。


 それらをまとめておくので、明後日のお昼前には進捗を確認しにギルドまで来て欲しいとのことだった。


 後からマオさんに聞いた話だが、ギルドがたった2日でスケジュールを決定しようとするなんてことは、普通ないそうで、やはりそれだけ大きな発見だったのでないかとのことだ。



 ギルドマスターさんは、わたしたちのギルドカードの経歴を見て色々と興味がわいたようだ。


「ここからは単純に僕が興味あるだけなんだけど……」


 再び、くだけた口調で話し出した。

 お仕事モードは終わりといった感じだろうか。


 しっかりとお茶のおかわりを出されしばらく雑談をした後、そろそろお暇しようかというところ、突然足元をぎゅうぎゅうと押しこまれた感触がした。


 シロと呼ばれたホワイトウルフが鼻先でわたしのブーツを突いている。


「シロ、邪魔しないの。どうかしたか……?」


 ギルドマスターさんが止めようと声をかけるが、シロは困った顔でこちらを見つめたまま動かなかった。


「あっ」


 原因を見つけてしまった。


「もっふもふだー!」


 シロの首に妖精がしがみついて遊んでいる。


 察した瞬間、何も言わずにその妖精をつかみ取り、引きはがした。


「あ、ばれた! 逃げろー!」


 妖精は、わたしの手をするりと抜けると、そのままどこかへ飛んで行ってしまった。


 何が目的だったんだ。

 ……きっと、単に目に付いたもので遊びたかっただけだろうけど。


「わふっ!」


 シロが軽く会釈すると机の横へと戻っていく。その際、機嫌よく尻尾を振っていた。


「ん? シロが懐いている? というか、なんだっただろう?」


 ギルドマスターさんが困惑している。


 妖精はわたし以外には見えない状態のまま逃げてしまったようだ。

 わたしとシロの秘密にしておいた方が良いかな。


「何かの気配がありましたが、いなくなりましたね」

「そういえば、たまに書類の位置が入れ替わっていたりすることはあるような……。お祓いとかした方が良いかなあ」


 マオさんは何らかのスキルの影響か、妖精の気配が分かるんだったね。

 その言葉に、ギルドマスターさんは何か別のものを想像したようで、二の腕をさすっている。


 ギルドマスターさんは、たまに妖精にいたずらされることがあるようだ。

 妖精にいたずらされるということは好かれているということでもある。テイマーの類似職として妖精使い(フェアリーテイマー)としての素質も持っているのかもしれない。


 ちなみに、ギルドマスターさんにはホワイトウルフ以外にも使い魔がいるそうだが、常に一緒にいるというわけではないらしい。



 ――2日後。


 王都にいる間、マオさんの家に泊めさせて貰うことになり、街をぶらぶらして時間を潰していた。


 ちなみに、マオさん自身は昼はチームの方に顔を出しているため、わたしたちと顔を合わせるのは朝食と夕食のときぐらいだった。

 ソーニャさんもほぼ従来通りに動けるようになったため、軽い訓練などをはじめたとのこと。


 遺跡の調査についても、危険もほぼない遺跡であるため、指名されなければわたしたちに任せると言われた。

 パーティから長く離れすぎたと思っているのかもしれない。


 なんだかんだと長く一緒にいたので3人で冒険者ギルドに入るというのも久しぶりな気がする。


 受付に行くと2階の食堂でしばらく待っていて欲しいと言われた。

 さすがに2日であれこれ決めて回ったせいか予定が押しているらしい。


 冒険者の多い王都のギルドということもあり、ガルディアのギルドの食堂と比べると余裕で数倍はある広さだ。


 メニューも軽食から夕飯になりそうなものまでかなり多い。

 料理にはよく食べられている魔物の肉を使ったものが多いので、冒険者に依頼して獲ってきた魔物を使っているような気がする。

 暇な冒険者に経験も積ませられるし、王都周辺の治安維持につながり、食堂の仕入れにもなるので一石二鳥どころか一石三鳥になるということだろう。


 じっとメニューを見ていたらお腹が空いて来た。

 お昼の時間には少し早いけど、適当に何か食べていることにしよう。


「お肉ですわ」

「私もそうしようかな」


 クレアとリルファナはペキュラ肉のハンバーガーにしたようだ。

 待ち時間がどれぐらいか分からないし、わたしも同じものでいいか。


「ミーナちゃん、久しぶり。なんかまた面白いものを見つけたんだって?」


 やや癖のある風味のハンバーガーを食べ終わった頃、アルフォスさんがやってきた。


・以下の修正を行いました。

228話:過去のラーゴの町の転生者の職業がテイマーとなっていたため、ブリーダーに修正


・設定上の小話

テイマーは野生の魔物を捕獲するのが得意な職業、ブリーダーは魔物の育成が得意な職業といった違いになっています。

(ただしセブクロではゲームバランスやシステムの都合上、ほとんど違いはありませんでした)

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