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登校!(美少女付き)

(……寝すぎたか……)


 俺が起きたのは深夜の一時。変な時間に起きたな、と思いつつ、スマホの通知欄を見てみると、五件ほど来ていた。二件は母親、これはどうせホテルに泊まるだの泊まり込みするだのの連絡だから無視することにした。

 後は涼介からとふゆからの返信だった。涼介に至っては『宿題無くした!(笑)明日みせてくれ!』というアホみたいな通知だった。俺が少し驚いたのはこの次だった。


(……なんだこりゃ)


 ふゆからの返信には『うるさい、バカ』と来ていた。

言葉はキツいものの照れ隠しだろうと思って『そんなこと言って嬉しいの?』と返しておいた。

……あ、深夜にメッセージ送るのは御法度だったかもしれない。もし相手が通知オンで枕元に置いていたりしたら安眠妨害になりかねない。

 俺はやらかしたと嘆きながら再び寝ることにした。夜中一時に起きててもやることもない。強いて言うならタイマーをセットし忘れていたのでセットしたぐらいだ。



 チュンチュン、と雀の鳴く声とカーテンの隙間から射し込む太陽の光に照らされて渋々起きた。

スマホを見ると午前七時二十四分を指していた。学校の朝HRの時間は八時半からなので結構急いで支度しないと遅刻してしまうだろう。

 スマホには通知が来ていたが、そんなことを気にしている場合ではないので、ドタバタと慌しく支度し始めた。


 俺が家を出たのは五十分をすぎる前だった。運良くエレベーターが止まっていたので急いで乗り込むが、八階で止まる。


「「あ、」」


 ドアが空いた瞬間二人とも少し驚いた。乗ってきた相手はふゆだった。ふゆはギリギリに学校に行くタイプなのかもしれない。


「偶然ですね。……遅刻しないといいような時間ですけど」

「そうだな。まぁギリセーフぐらいじゃないか?」

「それもそうですね。まぁでも、ちょっと急ぎましょうか」


 確かに早めに学校に着いておいて悪いことはない。むしろそっちの方が良いだろう。それでも間に合えばいいのだが。駅までは5分弱。次に来る電車は確か五十六分だった筈だ。

 ふゆは最近こっち側に引っ越したのだというから、流石に最寄り駅の時刻表までは知らないだろうと思って告げる。


「なぁ、次に来る電車確か五十六分の筈だからちょっと急がないか?」

「そうですね……今が五十二分なので……ヤバいかもしれませんね☆」

「んな事いってる場合か。ちょっと走るぞ」

「私……体育苦手なんですよねぇ、特に持久走やら走る系の」

「あぁもう、ほら、手ぇ出せ」

「?こうですか?」


 ふゆは意味もわからずに言われるがままに手を差し出す。このやり方はちょっとばかし強引かもしれないが遅刻して二人して怒られるよりかは幾分かマシだろう。

そう思い、俺は差し出された手をぎゅっと握る。ふゆの手は細く、きめ細かい肌が長袖のカッターシャツから見えていた。綺麗だな、と思い思わず見とれてしまうが、すぐに正気に戻った。


「ほら、行くぞ」

「ふぇっ、あ、ちょ、」

「しっかり握ってれば大丈夫だし、俺もそこまで走らねぇから」

「そ、それならまぁ……ちょっと恥ずかしいですけど、し、仕方ないですよね!」


俺は「まぁな」と言うと少しだけ走ることにした。ふゆのクスクスといった笑い声が後ろから聞こえる。俺はふゆの少し先を走っているので彼女の笑みを想像してニヤけながら駅へ向かった。


 駅へ着くと同時に電車が来た。駅外でアナウンスが聞こえたのでそろそろか、とは思っていたが丁度だったようだ。


「ふぅ、間に合って良かったですね」

「はぁ、朝から疲れた。まぁ起きるの遅かったからだけどさ」

「お疲れ様です。私は楽しかったですよ?こうやって友達と一緒に登校したことなんてなかったので」

「そうなのか?」


俺は少し息切れしながらも落ち着いた口調で話す。ふゆは少し頬を赤らめて、目を合わせてくれなかった。彼女も少し気恥ずかしかったのだろう。


「実は、一年の時に友達関係で問題を起こしてですね。それでちょっと友達が少ないんです」

「それで、男子友達も初めて出来て、ちょっと嬉しかったです。もちろん、和仁くんが最初ですよ?」

「そ、そうなのか。色々大変だったんだな」


 ふゆは美人でこんなにも可愛いのだからさぞモテるだろうと思っていたが口に出さなくて正解だった。やはり人は裏があるのが少し怖いと実感する。でもそうか……俺が初めてって、なんか嬉しいな……


「……顔、赤いですけど大丈夫ですか?」

「えっ!? いやいや、大丈夫だから、気にしないで」

「そうですか? それならいいんですけど、無理はしないでくださいね」

「あ、あぁ、ありがとうな」


 ふゆは「ふふっ」と可愛らしく笑った後に外の風景に目をやった。引っ越ししたては新しい風景ばっかで見ていても楽しいのであろうから俺はそれを見守っていた。彼女はどこか嬉しそうだった。



「おう和仁。ギリギリだったな」

「寝坊したんだよ」

「遅刻してねぇのは寝坊じゃねぇよ……」


俺が学校に着いたのは二十七分。ふゆは走るのが苦手だから降りた時からは歩いてきた。

 ふゆから「まだ少し寒いから手繋いでくれる?」と言われた時は心臓が爆発するかと思ったが。それでも、学校に入る時は一緒だとやっかみが飛んでくると思ったのでここでも別々に入ることにした。



(退屈だな……)


 現代文の時間は退屈だ。小説や評論文など、読めば分かる。知らない単語だけ調べて覚えるだけで対策ができる。だからこそ暇だ。まぁ強いていえば教科書を読むことが退屈しのぎにはなる。

 俺が今読んでいる小説は少し昔風の小説だ。ところどころ訛りがあったりしているが、面白い。


『うっせぇよ、バァカ』と主人公が言っている。この時の気持ちを答えなさい、とかいう問題とか出そうだな。……これで思い出したが、昨日のふゆからの返信がちょっとキツかったことを思う。あれは照れ隠しだと信じているが、本心だったら、と思うと不安になってくる。

 まぁあんな優しいふゆがそんな暴言を吐く様なんてないと思うけれど。それでもやはり気になる。俺は先生の言葉も頭に入って来ず、そのことばかりに囚われていた。

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