二人で下校!(美少女付き)
いつもよりちょい長めです
「んで、お前もこっちなのかよ」
そういう俺に「はい」とだけ答える少女がいた。目は栗色。赤みがかった茶髪からはミルクの甘い匂いが漂ってくる。
「そういえばフルネーム聞いてなかったですね。 なんですか?」
「神崎、神崎和仁だよ」
「神崎さんですか、いい名前ですね」
俺は「そうかよ」と答えるも、少女のへにゃりとした可愛らしい笑顔に心臓がうるさくなる。少女、と言っても同級生。同じ十六歳だと思うが。
背丈は少し低いものの、童顔で、整った顔をしている。はっきり言ってしまえば美人だ。そんな人の笑顔を見て見とれないやつがいるのだろうか、とまで思ってしまう。
「……?どうしました?」
「いや、なんでもねーよ。 それよりお前の名前は?」
「私は、尾崎冬夏と言います。 よろしくお願いしますね?」
「おう、こちらこそよろしくな。ところで、『ふゆか』ってどんな漢字?」
「季節の冬と夏でふゆかと書きますね」
聞いたのは俺なのに「へぇ」としか返せなかった。自分から聞いておいてなかなか酷い話だとは思うけど、あまりにも珍しいので言葉に詰まってしまった、という言い訳ぐらいが関の山だった。
俺達は改札をくぐって駅のホームに辿り着く。駅はそんなに大きな駅ではないけれど、小洒落た装飾がちらほら見える。
「ん、おま……名前聞いたのにお前っていうのは気が引けるな。 なんて呼べばいい?」
「そうですね、「ふゆ」 とでも呼んでください。あ、私も名前呼びしていいですか?」
「別にいいよ。減るもんでもないし」
「にへへ、ありがとうございますね」
少女──改め、ふゆが先程と同じ笑みを見せる。正直可愛すぎて心臓に悪いのでやめて欲しい。
「そういえば、私もこっちですよ」
「そうなのか。 てかよく言おうとしてたことわかったな?」
「あ、はい。なんとなくですけど、そんな感じかなって」
「すげぇな」
そうして話をしている内に 『まもなく、電車が到着します。白線の内側に下がってお待ちください』というアナウンスの後に続いて電車が来た。
ふゆとは降りる駅まで一緒だった。「学校の最寄りから七駅ぐらいですかねぇ」とは言っていたが、まさか同じ駅だとは思いもしなかった。実際、ふゆも驚いていた。
にしても気になることがある。俺は一年の頃から電車で登下校を済ませているが、ふゆの姿を一回も見たことがない。
「なぁ、ふゆって一年の頃何で通学してたんだ?」
「?バスですけど……」
「ならなんで今日は電車なんだ? あ、いや責めてるわけじゃないんだがな」
「いえ、その、最近引っ越しまして。それで電車通学になったんです」
「あぁ、そういうことだったのか」
「そういえば最近引っ越し業者がいたな……」とふゆには聞こえない程度の小さい声で言ったはずだが、ふゆには聞こえていたようだ。
「同じマンションだといいですね」と微笑むふゆをみて顔が赤くなる。
俺は咄嗟に顔を背けて、「ま、まぁそれだったらいいな」と平然を装って言った。
そうして話を弾ませているうちに家に着いた。楽しい時間とはすぐに過ぎ去るものだと身に染みて実感する。
マンションのエントランスを見やると、引っ越し業者と夫婦が話しているのが見える。
「へぇ、ここが和仁くんの家なんですね」
「そうだな。俺は九階なんだよ」
「奇遇ですね。私、ここのマンションに引っ越したんですよ」
「……へ?」
「ですから、ここに引っ越したんです」
「あっ、もしかして嬉しいんですか? にへへ、可愛いですね」
「ばっ!違……いや、違わなくはないけどさ……!!」
少しからかわれて狼狽する俺に対し、ふゆはニマニマと笑い俺の頬をつついてきた。ふゆは「冗談ですよ」と言うが全く冗談に聞こえない。
「さ、じゃあ行きましょっか。 お、エントランスで話してるの、私の両親ですね」
「えっ、マジか。なんか一緒にいると彼氏とかと誤解されない?大丈夫?」
ふゆはその言葉を聞いてかぁっと音が出そうなくらい顔を赤くすると、俺の胸板をギューっと押し、下を向いて「そ、それもそうなので別々に入りましょうか……」と小声で提案してきた。
俺も他人を困らせたいなどという邪悪な心の持ち主ではないのでふゆの意見を尊重することにした。
「んじゃ、俺は先行くぞ」
「あ、や、その、待って」
いきなり俺の袖をぎゅっと掴むので思わず歩みを止める。
「どうした?」
「そ、その、LIME……交換しませんか……?」
ふゆは少し泣きそうな目でこちらを見てくる。俺とて別に嫌なはずがないので二つ返事で了承した。むしろ、こんな可愛らしい美少女と交換できるなら本望だ。
「えへ、えへへ、ありがとうございますね」
「いいって。 用事はこれだけで大丈夫か?」
「あ、はい。じゃあ、また明日」
「おう」
俺は小さく手を振るふゆを背にすると、口許を押さえ、あぶねぇ、と思う。美少女の笑顔を向けられてニヤけない男児がどこにいるのだろうか。鼓動がうるさく、落ち着く気配がないが、さっさと帰れば問題は無い。
エントランスにいた両親に「こんにちは」とだけ挨拶し、そそくさとエレベーターへ乗り込んだ。
「ただいま〜って、ま、今日も居ねぇか」
和仁の母親はキャビンアテンダントなので、あまり家にいることがない。部屋はそこまで掃除をしていなかったので小汚くなっている。が、足場がないという程でもないのでこのまま放っておくことにした。
(つっかれた〜)
自室のベットに倒れ込んで先程交換したふゆのLIMEを開ける。アイコンは小さい雪だるまと片手でピースをする手が載っていた。手は恐らくふゆのものだろうと思う。
『そのアイコン可愛いね』
俺はそう送ると同時に眠気が襲ってきた。だからといってこのまま寝る訳にも行かないので、風呂を沸かしている内にご飯を食べ、寝る支度を済ませた。
風呂を上がってきてもふゆからは返信が来ていない。まぁ、親子水入らずの時間を過ごしているのだろうと思い、寝る準備を済ませた。
俺はそれでも眠かったので戸締りだけして、二時過ぎには寝ることが出来た。
その直後にふゆからの返信が来たことに彼は気づくはずもなかった。
このシリーズはもう最後までプロットが決まっているんですよね……向こうは決まってないのに(((おい




