新学期!
新作です!これは序章というか少女との邂逅まで
春、それは別れと出会いの季節とはよく言ったものだ。とはいえ、学校生活が格段と楽しくなる訳ではない。
新クラスになって人が入れ替わり、心機一転出来る、という点に関してはいいと思う。
そうして教室を見ると、一年で仲の良かった奴が数名、そしてやはり見慣れないヤツらがうじゃうじゃといる。
「なーにしてんだ?」
「人間観察」
「またかよ」
「悪いかよ」
そうやって朗らかに笑いながら近づいてきたのは一年の最初から仲良くしてきた一ノ瀬 涼介だった。
モテモテとまでは行かないが整った顔に高身長、それに勉強も多少は出来る奴だ。
そうこうしてるうちに朝のHRの始まりを告げるチャイムが鳴った。涼介は「やべ」と一言漏らすとそそくさと自分の席に着いた。
あいつはア行なので窓側の席が約束されているのが少し羨ましい。
「一二時間目は委員会だのを決めるから、何したいか見ておいてくれ」
担任の教師がそう告げ、HRは終わりを迎えた。やっと終わったか、と思うと同時に涼介が俺の席まで出向いてきていた。
「うお、なんだお前早いな」
「たった二秒程度じゃないか」
「そうだけども」
「それよりさ、お前委員会とか何にすんの?」
「あー、委員会? どうすっかな〜、内申はもういいんだけどよ」
そんな結論に至るのもしょうがないか、とばかりに唸る涼介を見やる。それもそうだ。一年の学年末でTOP30に入っていたら誰でも喜ぶだろう。
委員会自体には入ってもよさげなのだが、どれもやることが多そうな委員会が多い。やるならせめて、クッソ楽な委員会がいいとまで思う。
「んだあれ……育成委員会……?」
「あー、去年はなかったな……確か、学校の兎を飼育する……」
「辞めだやめ。やっぱ入らねぇわ」
俺は涼介の言葉を最後まで聞かないままに即答した。なんといってもこの飽き性が毎日飼育するとか、もはや呆れてモノも言えなくなるに違いなかった。
別に委員会に入らなくとも、他にもできることはあるし、なんなら何もしないという手もある。
俺は涼介に「ま、委員会にだけは入りたくないね」とだけ言って一限目が始まるまで机に伏していた。けちー と嘆く声が聞こえたが聞こえなかったフリをしておこう。
一限目は淡々と物事が進んだ。俺があれほど嫌がった委員会も一瞬で決まってしまった。
「あとはまた順次、必要な時に決めていくからよろしくな」
「この後は身体測定とクラス写真撮るだけで終わりだから」といい、一限目が終わった。
難なく一限目が終わり、時間が早く感じる程だった。このあとも所詮何事もなく今日が終わるのだろうと思っていた。
通常の三限目の途中くらいで全ての行程が終わった。みんなは「身長伸びたー?」だの「早く帰りたい」とかそんなことばかり言っていた。
「おーい和仁〜。一緒に帰ろうぜ」
「ん、おっけ」
終礼とHRが終わり、涼介は俺を帰路に誘ってきた。無論、和仁とは俺の名前である。
俺とて誘われるのは嫌ではないので、二つ返事で返し、そのまま帰ろうとしていた矢先だ。机の中にスマホを置き忘れてことに気づく。
「悪い、忘れもんしたから先帰ってていいぞ」
「うわー面倒くさそ。階段ダッシュ頑張れよ〜じゃ、俺は帰ってるぞ」
「あぁ」
あいつが面倒くさいと言うのも分かる。何しろ、俺らの教室は三階にある。四階にあるよりかは幾分かマシだが十分面倒くさい。
あいつには少し悪い事をしたな、と思い追いかけてみようかとも意気込むが、俺は体力もそんなにないので無理してまでやらなくてもいいだろう、と諦める。
(教室まだ誰か居るのか……先生か……?)
まだ灯りが付いているので、どうせ先生だと思って教室の前ドアを開けて入る。
教室の後ろ側は電気が消されてて、前側だけ電気がついていた。
その中で一人、先生でもなく、少女が一人眠りこけていた。
流石にスマホだけ取って何も言わずに去る、ということも出来たが、こんな所で風邪を引いても可愛そうだと俺の良心が囁いた。
「おい、起きないと風邪引くぞ……」
どうやらガチ寝しているらしく、少し揺さぶっただけでは起きなかった。
(……ちょっと大きめに目覚ましでも鳴らすか……)
自分が設定しておいて何だが、ジリリリリ!という騒音はやはりうるさい。
「ぅん……くぁぁ……」
「あ、起きた」
「うん? 私寝てた?」
「ガッツリ寝てたぞ。 疲れてんのか?」
彼女はまだ眠気が落ちないのか頬をペチペチと叩き、目を擦りながら立ち上がる。その瞬間、ふらっと体が傾いたので咄嗟の判断で彼女を支えてやる。
彼女からふわりと甘い匂いがした。少し赤みがかったロングヘアーの茶髪からだろう。髪の毛も毎日手入れされているのであろう。艶があり、とても綺麗だった。
俺はちょっとしたご褒美だな、ぐらいであまり気に留めないことにした。
「あ、ごめんなさい……ありがとうございます」
「いいよ別に」
「あれ、この携帯、あなたのですか?」
「ん?あぁ、落としてたんだな。 気づかなかったよ」
「意外と抜けてるんですね。 学年高順位でも」
「なんだ、俺の事知ってるのか?」
俺てっきり初対面だから名前こちらも向こうも知らないだろう、とは思っていたが高順位で貼りだされていたら嫌でも目に入るのだろう。名前くらいは知られていた。
「でもお前、よく俺が高順位だって分かったな?」
「まぁ、ある程度は認知していたので……それより、帰らなくても大丈夫なのですか?」
なんだかお茶を濁されたような気分だったが、彼女に指摘されて時間を見やると既に十一時を回っていた。
「すまん、ありがとな。 じゃ俺帰るわ」
「あ、やっぱ待ってください」
「ん?」
「あの……その、せっかくですので、一緒に帰りませんか?」
彼女は俺より身長が低いので自然と上目遣い見たくなってしまって非常に心臓に悪い。
栗色の瞳と可愛い顔が相まって不覚にもドキドキしてしまう。よく見ると顔立ちも良く、男子からはモテるであろう風貌だった。
そんな彼女からのちょっとした頼み事か。役得だな。と思い、涼介の時とは違い、「いいぞ」と即答した。
こっちは投稿頻度落ちる……かな?