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理の終わりの始まり  作者: Θ
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プロローグ : 託させた想い(2)

 

「...一体二人で何を話しているんですか?私、あまり子供の相手は慣れていませんので、二人っきりにされると困るんですけど。」

 そう言って近付いてきたのは、少女より少し年が上に見える大人びた女性。その後ろに隠れるようにまだ五歳にも満たないような幼い子供が、女の足越しに顔を覗かせ、同じように二人の様子を伺っていた。

 男はフィデルの頭から手を放し、女の後ろに隠れていた子供の前で目線を合わすように屈む。

「子供、じゃなくて、『レクトル』くんだろ?なぁーレクトルくん」

 子供は男を警戒しているのか、女の服を握る手をさらに強め、俯きながら彼の目をじっと見つめる。男は紛らわすようにもう一度満面の笑みを浮かべて名前を呼ぶが、レクトルの様子は変わらず。

 恥ずかしがりやな子だなと一人で納得しながら、男は立ち上がって短く息を吐く。言葉を交わさずとも、その目が友好的でないことは誰の目から見ても明らかだった。

「...あー、ほら、俺のことは見ての通りだけど、君のことはとても気に入っているように見えるよ?」

「あのですね。気に入られている入られていないの問題ではなく、私が苦手だと言っているです。何も話さないのに感情だけ豊かで、考えを読まないといけないことがとても疲れます。」

 女はそう語りながら、服を掴んだレクトルの手を引き離そうとするも、レクトルはまた違う部分を強く握り締めた。余程この女性のことを気に入っているのか、何度離そうと試みても、離れようとはせず、女は諦めたように深い深い溜め息を吐く。


「サリアがおばさんだから、母親と間違えてるだけじゃないの?」

 フィデルは挑発的な笑みを浮かべながら、サリアと呼んだ女へと歩み寄る。すると、レクトルは男の時と同じようにサリアの服を握る手に力を込めた。

「ありがとう。私がとても女性的という意味で受け取っておきますね。まぁ、この子は男性に警戒心を持っているみたいですし、貴女みたいな野蛮で男性みたいな人には特に懐かないでしょうね。」

「はいはい。誰にでも笑顔振りまく色ボケババアよりマシだ。」

「淑女の立ち振る舞いなんてものは、頭撫でられただけで落ちるようなお子様には、まだわからないでしょうね。...こうだったかしら?」

 嘲笑を浮かべながら見下ろすサリアは、自分より頭一つ分背の低いフィデルを撫でようと手を伸ばし、フィデルはそれを勢いよく払った。そんな様子を見ていたレクトルは二人を引き離そうとしているのか、サリアの服を自分の方へと強く引っ張る。


 が、次の瞬間、三人は宙を見上げた。

 空を舞う大小様々な光の粒。

 踊るように、それらは自由に漂いながら彼女らの周囲を取り囲んでいた。

 レクトルはさっきまで握りしめていた手を離し、それらを掴もうと懸命に手を伸ばす。フィデルとサリアはいがみ合っていた事を馬鹿らしく思えたのか、相手から目線を外し、何も言わずにその場に座り込んだ。


「この子達もここなら存分に遊べるだろうから、ここに来たのもあるんだ。マナが豊富で人目に付き難いからし。」


 男は召喚士。

 この光は彼が契約した者達。

 彼はこの世界で唯一無二の存在。

 人々と繋がり、動物や木々と繋がり、世界と繋がることのできる存在。

 男の足元から溢れ出した無数の光は有に百を超え、それらは次々に風に乗り宙を舞う。種を運ぶ綿毛のように舞う優雅な様子に、三人は思わず目を奪われてそれを見上げた続けた。

 男はそんな彼女らから離れ、背後の岩に腰をかける。そして目の前の景色を焼き付けながら、穏やかにゆっくりと一つ瞬きをする。


「フィデル、レクトル、サリア。ごめんな。」


 この数年後、召喚士エクス コージェットはこの世を去った。

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