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「さて最速散歩部だが」


「あの、いいですか?」


「何かな?」


「そもそも」


「待ちたまえ!」


 僕は、一条寺あやめ先輩からお預けをくらった犬のように待てをした。もちろん、精神的な意味で。


「最速散歩部とは何ですか?などといった質問には一切答えん。いいか、一切だ」


「でも…」


「何かな?」


 僕は、一条寺あやめ先輩から鋭くにらまれ、何も言えなくなってしまった。だからといって最速散歩部への疑問がすっかり消えてしまったわけではない。


「しかし、それではキミの寝覚めも悪かろう」


「べつに寝起きではないんですけど」


「しかし、それではキミの寝覚めも悪かろう」


「ですから、寝起きでは」


「しかし、それではキミの寝覚めも悪かろう」


「…は、はい。そうですね」


「しかたない。簡単に説明してやろう」


 一条寺あやめ先輩は説明してくれた。短く簡単に要約すると、速度を上げて散歩するってこと。でもそれは、タッタッタッて感じよりもシュタッシュタッシュタッ。そこまで言って一条寺あやめ先輩は「しかしな」と間をたっぷり取ってから次に進めていった。


「競歩ではないぞっ」


 速さを求めてはいるけれど競技ではない、と。


「あくまで散歩であることを忘れてはならないよ。いいかね?」


 右手の人差し指を立て、一条寺あやめ先輩はそう言った。そして、さらに続けようとする。わからない者は置いていくよ、とばかりにさっさと行ってしまおうとする一条寺あやめ先輩のことを僕はさえぎった。


「あ、あの…」


「何かな?」


「ルールか何かあるんですか?」


「ルールはないよ。言ったろ、競技ではないのだよ」


「そ、そうでした」


 一条寺あやめ先輩は「ふふっ」と軽く短く笑みを見せ、高らかに言い放った。


「では、さっそく行くとしよう」





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