第8話 静かな邂逅
ギルドのざわめきが収まり、広間は張り詰めた空気に包まれていた。
セリス・アルヴェイン。
王国最大のクランに名を連ねる副団長、そして国に六人しかいないSランク冒険者のひとり。
その姿は、ただ立っているだけで人々を圧倒していた。
⸻
銀白の髪は肩より少し長く、光を受けて淡く輝いている。
ひと房ひと房がきめ細かく、揺れるたびに柔らかな光沢を放つ。
蒼い瞳は澄み切った湖のようで、まっすぐに見据えられると逃げ場を失うような感覚を覚える。
鎧は無駄のない実用的な造りだが、肩や腰には控えめに家名を示す紋章が刻まれていた。
華美さはないのに、纏う雰囲気は凛とした美しさを際立たせていた。
細身の体つきながら、その立ち姿には揺るぎない芯の強さがあり、同じ場にいる者たちが思わず息を呑むのも当然だった。
ゼオンはしばらく黙ってその姿を見つめていた。
(……セリア……)
二百年前に自らを討った勇者と、髪も瞳も、纏う空気までもが酷似している。
本人であるはずはない。
だが、目の前に立つ彼女を見ていると、どうしても錯覚せずにはいられなかった。
彼女の存在が、胸の奥に眠っていた記憶をかすかに揺さぶる。
受付での挨拶を終えたセリスがふと視線を動かし、ゼオンと目が合った。
ほんの一瞬だが、その蒼い瞳がわずかに揺らいだように見えた。
彼女はゆっくりと歩み寄り、控えめに口を開いた。
「失礼いたします。……あなたは、この街で冒険者をなさっている方でしょうか?」
ゼオンは淡々と頷く。
「ああ。昨日登録したばかりだがな」
「まあ……そうでございましたか。ですが、失礼ながら――新人にしては、落ち着いていらっしゃいますね。何か、場数を踏んでおられるような……」
「気のせいだろう。ただのEランクだ」
ゼオンは肩をすくめ、受け流すように答える。
セリスはしばし視線を外さず、静かに頷いた。
「……そう、ですね。私の思い過ごしかもしれません」
だが、心の奥に何かが引っかかっているのは隠せなかった。
彼女は目を伏せると、小さく息を整えた。
ゼオンは依頼掲示板へ向かい、背を向ける。
セリスはその背中を見送りながら、胸の奥で囁くように思った。
(……初めてお会いする方のはずなのに。なのに、どこか懐かしい……)
理屈では説明できない既視感が、彼女の胸を静かに揺さぶっていた。
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