表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
叛逆のレギオン  作者: 02
9/20

第8話 静かな邂逅

 

 ギルドのざわめきが収まり、広間は張り詰めた空気に包まれていた。

 セリス・アルヴェイン。

 王国最大のクランに名を連ねる副団長、そして国に六人しかいないSランク冒険者のひとり。


 その姿は、ただ立っているだけで人々を圧倒していた。


 ⸻


 銀白の髪は肩より少し長く、光を受けて淡く輝いている。

 ひと房ひと房がきめ細かく、揺れるたびに柔らかな光沢を放つ。

 蒼い瞳は澄み切った湖のようで、まっすぐに見据えられると逃げ場を失うような感覚を覚える。


 鎧は無駄のない実用的な造りだが、肩や腰には控えめに家名を示す紋章が刻まれていた。

 華美さはないのに、纏う雰囲気は凛とした美しさを際立たせていた。


 細身の体つきながら、その立ち姿には揺るぎない芯の強さがあり、同じ場にいる者たちが思わず息を呑むのも当然だった。


 ゼオンはしばらく黙ってその姿を見つめていた。

(……セリア……)


 二百年前に自らを討った勇者と、髪も瞳も、纏う空気までもが酷似している。

 本人であるはずはない。

 だが、目の前に立つ彼女を見ていると、どうしても錯覚せずにはいられなかった。


 彼女の存在が、胸の奥に眠っていた記憶をかすかに揺さぶる。


 受付での挨拶を終えたセリスがふと視線を動かし、ゼオンと目が合った。

 ほんの一瞬だが、その蒼い瞳がわずかに揺らいだように見えた。


 彼女はゆっくりと歩み寄り、控えめに口を開いた。

「失礼いたします。……あなたは、この街で冒険者をなさっている方でしょうか?」


 ゼオンは淡々と頷く。

「ああ。昨日登録したばかりだがな」


「まあ……そうでございましたか。ですが、失礼ながら――新人にしては、落ち着いていらっしゃいますね。何か、場数を踏んでおられるような……」


「気のせいだろう。ただのEランクだ」


 ゼオンは肩をすくめ、受け流すように答える。


 セリスはしばし視線を外さず、静かに頷いた。

「……そう、ですね。私の思い過ごしかもしれません」


 だが、心の奥に何かが引っかかっているのは隠せなかった。

 彼女は目を伏せると、小さく息を整えた。


 ゼオンは依頼掲示板へ向かい、背を向ける。

 セリスはその背中を見送りながら、胸の奥で囁くように思った。


(……初めてお会いする方のはずなのに。なのに、どこか懐かしい……)


 理屈では説明できない既視感が、彼女の胸を静かに揺さぶっていた。

読んでくださりありがとうございます。


感想をいただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ