その119 王宮のダイニング
どうやら王宮のダイニングは謁見の間からそんなに離れていなかったらしい。謁見の間での仕事を終えた後や、あるいは来客と共に食事をする際のことを考慮して、近場になるように建築されたのかもしれない。
謁見の間ほど大きくはないその両開きの扉を、サニードが思いきり開けて中に入り、フードの人物や少年達も続いていく。
ダイニングは広く、壁際に並ぶいくつもの窓からは明るい太陽光が注ぎ込み、芝生が敷き詰められた王宮の敷地も眺められた。天井には豪華なシャンデリアが下がり、壁には燭台が設置されているが、充分な陽の光が差し込んでいる為、いまは灯は灯されていない。
ダイニングの中央には高級なテーブルクロスが掛けられた長テーブルが置かれており、サニードは入口すぐの長テーブルの横側の椅子の一つに座り込む。
その椅子のすぐそば、長テーブルの縦側にも椅子が置かれていたが、おそらくそれはこの国の王が座る椅子なのだろう。他の椅子よりもどことなく装飾が凝っていた。
「さあ皆の者、どこでも好きなところに座るといい! ドゥは昼食の手配を頼む!」
「かしこまりました」
フードの人物が一礼して、ダイニングにあるドアから隣の部屋へと向かっていく。おそらくはそこがキッチンなのだろう。
少年達はサニードに促された通り、各々がそれぞれの椅子に座っていく。一緒に昼食を食べるのだからサニードから離れすぎないように、少年が彼の向かい側に座り、少年の隣に黒髪の少女が座る。
そして青年が彼女の隣に座るかと思いきや、彼は白髪の少女へと。
「アス、黒髪ちゃんの隣に座ってくれ。俺はあっちに座るから」
そう言って青年が親指で示したのは、少年達がいる側で、なおかつ入ってきた扉から最も遠い椅子だった。つまりはサニードから最も離れた椅子でもある。
白髪の少女が無言で黒髪の少女の隣に座る中、サニードが青年へと文句を上げた。
「心の友! 何故そんな場所に座ろうとする! 私の隣に座れば良いだろう!」
「嫌に決まってんだろ! 誰が好き好んでテメーの隣になんか座るか!」
「なんと! 我が王宮のメイドや執事達であれば泣いて喜ぶことを拒否するのか!」
「テメーが王子だから断れねーだけだ! 泣くほど面倒くせーってことに気付け!」
「そんなまさか!」
サニードは心底驚愕し信じられないといった声を上げる。
是が非でもサニードから離れたがっている青年に、少年は片手を上げながらおずおずと言った。
「ですけどハオさん、そんなに離れていたら話がちゃんと出来ませんよ。ソナーさん、じゃなくてソニアさんも後で来るんですし」
「む……」