その104 協力してくれるかも
サニードは声を上げる。
「うむ! ソナーがソニアで王女で、私の最高の妹なのだ! して私が君達の元まで来た用件はただ一つ、なに簡単なことだ、私達が居を構える王宮まで来てほしいのだ!」
「「え……⁉」」
驚きと疑問と困惑の混ざった声を少年と黒髪の少女は出し、サニードは続けて言う。
「ケイどのには以前、妹が世界樹の森で魔獣と対峙した際に助けられたらしいからな! 後れ馳せながら、いまさらだがその礼をしたいのだ!」
青年達の視線が少年に集まる。黒髪の少女が少年に聞いた。
「そのようなことがあったのですか……?」
「あ、えっと、感染症を治す薬草を取りに行った時に……」
「……! その時でしたか……」
それはノドルの修道会でイブに出会った時の話である。重傷を負っていた少年が回復した後、今度は黒髪の少女が感染症に罹患したことが判明し、それを治す為に少年が奔走した時のことだった。
少年がサニードに返答する。
「お礼だなんて、そんな……。むしろあの時は俺の方こそ薬草を探す手伝いをしてもらいましたし、外套も貸してもらいましたし……」
「謙遜するな! ケイどのがいなければ、我が可愛すぎる妹は魔獣に食い殺されていたかもしれないのだ! 是が非でも礼をさせてくれ! もし断るというのなら捕縛してでも王宮に連れていって至れり尽くせりのもてなしを存分に振る舞ってやるぞ!」
「……えーっと……?」
はた迷惑なのか、とてつもなくありがたいのか、いまいち分からない言い方だった。
「とにかく王宮に来てくれ! 我が麗しの妹も再会出来ることを非常に喜ぶだろう!」
「はあ……」
どう答えてよいのか分からず、少年はそばにいる者達を見る。黒髪の少女もまた困惑していたし、白髪の少女は相変わらず無表情だし、後ろの玄関にいた老人は目を丸くしていた。
そんな中、青年だけはひょうひょうとした態度を取り戻していて、少年へと言う。
「いーじゃねーか、最高級のお礼をしてくれるってんなら、素直に受け取っておこうぜ」
「いや、でも、俺達には……」
サキの呪いを解いたり、青年達の宿敵を倒すという目的がある。寄り道していてもいいのだろうか……そんな疑問を浮かべる少年や黒髪の少女に顔を近付けて、サニードには聞こえないように青年は小声で言った。
「ソナーって、昨日の剣士だろ? ジャックを消し去ってくれた。少年とは仲が良いみてーだし、黒髪ちゃんの事情を話せば、理解して協力してくれるかもしんねえ。しかも王女様ってんなら、王宮の情報網も使えるかもしんねえからな。これに乗らねえ手はねえだろ」
「「……!」」