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異世界チートレイザー  作者: ナロー
【第四幕】 【王都】
180/325

その100 サトリの最終段階


 少年と青年の口から発せられる単語に、サキは聞き覚えがない。思わず疑問が口から出てしまう。


「……映像……? 動画……? それにテレビやビデオというのは……?」

「俺やハオさんがいた世界にそういうのがあったんだ。この世界ではまだないみたいだけど……」

「……そうなんですか……」


 少年の言葉にサキは応答するが、理解は未だに追いついていない。『映像』を実際に目にしていない為、まだよくイメージがつかないのだ。

 だが少年と青年の言葉に対して、老人もまた目を丸くしていた。老人は少しく驚いた声を出す。


「『映像』をご存じでしたか……まさしくゼントもそう言っていました。これは事象を『映像』として記録したものだと。『文章』よりも分かりやすく、想像しやすく、そして一目見て全体像を把握出来ると」


 しかし老人の驚きはすぐに潜まり、沈鬱な雰囲気へと戻る。


「ゼント自身、その『映像』という言葉は先代の継承者から聞いたと言っていました。それと同時にこうも……これが発現した以上、最終段階が近付いている、と」

「「「……最終段階……」」」


 そこで老人は首を横に振る。


「申し訳ありませんが、第三段階目以降や最終段階については、私は知り得ておりません。私が知る前に、ゼントは我々修道会の前から姿を消してしまいましたから。第三段階目に到達した以上、これ以上修道会に迷惑を掛けることは出来ない……と。そう言って」

「「「…………」」」


 その場に沈黙と静寂が訪れる。それぞれがそれぞれの思惑を抱いている時間。ややあって、少年が黒髪の少女をちらりと見た。


「……サキさん……」

「……分かっています……」

「……え……?」


 小声でつぶやいた彼の言葉に、サキは答え、そしてだからこそ少年は疑問の声を漏らしてしまう。

 分かっている……? いったい何を分かっているのだろうか? ……と。


「……少なくとも、わたしはサトリの最終段階について、実際にこの目で見ました」

「……あ……」


 少年は思い出す。以前、彼女は自身の母親からサトリを継承したことを告げた。その時、自身の母親がどうなったかも言っていたのだ。


「……わたしの母は、いまのわたしの顔にある、この鎖のような紋様が全身に浮かび上がって……そして全身をサトリのメッセージウィンドウに覆われて……亡くなりました。……それが、それこそが……サトリの最終段階です……」

「…………っ」「「…………」」


 少年が我が事のように悲痛の顔を浮かべ、青年と老人が静かな顔で彼女の話を聞く。

 サトリの最終段階について初めて知る青年と老人、及び白髪の少女が至って冷静に見えるのに対して……聞くのが二度目であるはずの少年の方が動揺していた。



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