その94 タイミングがぴったり過ぎる
ケイとサキは顔を見合わせてしまう。二人は確かに数日前に出会ったばかりである。しかし、その数日間で様々な出来事が起こり、色々な人物の協力を得つつも乗り越えてきた。
息が合っているように見えるのは、おそらくそれが要因だろう。
二人の様子を見て、青年はニヤリとする。
「それだよ、それ。俺とアスなんかよりも、よっぽどお似合いって感じだぜ」
「「…………っ」」
彼の軽口に、二人は揃って顔を下に向けて恥ずかしがっているような照れているような様子を見せた。それに対して、
「わはは」
青年は鷹揚に笑うのだった。
午前の道には多数の通行人が行き交っていて、皆自分の用事があるからか誰も少年達を見咎めようとはしない。
中にはフードをかぶって顔を分からないようにしている黒髪の少女を不思議そうに見てくる者もいるが、だからといってそれだけで呼び止めたりはせずに歩き去っていく。
サトリのサキだと知られなければ、彼女もまたただの通行人に過ぎないのだから。むしろ道端で笑い声を上げる青年の方に注意を向けているくらいだった。
それはそれとして。笑いを終えた青年は真面目な顔つきになって、歩きながら話を始めた。
「さて、和むのはこれくらいにして、真面目な話をしようか。むしろこの話をする為に、司祭長のおっさんの案内を断ったともいえるしな」
雰囲気を変えた青年に、ケイとサキに緊張が走る。普段はひょうひょうとしていたり、ふざけている感じの青年だが、こういう真剣な顔つきになった時は油断のならない緊張感が漂うのだ。
それこそ百戦錬磨や熟練の冒険者を彷彿とさせる、強者の佇まいに近い。
「ノドルの修道長のおっさんの話じゃあ、ジャセイの仲間で黒髪ちゃんを狙っている奴らはこの王都にやってきたらしい。……ってことはだ」
青年は三人の方をちらりと見る。これから自分が言うことをちゃんと聞いて、それが示す意味を察することを促すように。
「昨日の夜に俺達を襲ってきた通り魔、斬り裂きジャックは間違いなくチート能力者だった。俺の力をことごとく斬り裂いた上に、あの驚異的な身体能力だからな。チート能力者じゃないなんてことはまず考えられねえ」
青年は断言する。実際に戦った彼だからこそ、ジャックの正体にすぐさま気付いたのだ。
「俺達、つまり黒髪ちゃんがここに来た直後に、奴は現れた。偶然と呼ぶにはあまりにタイミングがぴったり過ぎるとは思わねえか?」
「「あ……」」
ケイとサキは青年が言おうとしていることに気付いた。