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異世界チートレイザー  作者: ナロー
【第四幕】 【王都】
142/325

その六十二 その冒険者って誰だったんですか?


 馬を引き連れて歩くフーラとミョウジンの二人とともに、金髪の少女は外壁の門を通り王都へと入る。


 レンガが敷き詰められた道に、アパートメントなどの住居。等間隔に並ぶ街灯に照らされるそれらの街並みには、夜ということもあってか、人通りは少なかった。


 外壁の門の前で、フーラが金髪の少女に言う。


「王都の修道会はこのメインストリートを進んだ先にありますよ。もしよろしければご案内しましょうか?」

「いえ、一人で大丈夫です……ちなみに、ここから一番近い宿屋ってどこですか?」

「それもこのメインストリートをまっすぐ進んだ先にありますよ」

「ありがとうございます」

「あ、でも最近は通り魔事件も多発してますし、やっぱり近くまで送りますよ」

「通り魔……?」


 金髪の少女が疑問の声を出したとき、フーラの隣にいたミョウジンが口を挟んだ。


「それならもう大丈夫だ」


 その言葉にフーラが聞き返す。


「えっ、どういうことですか?」

「旅の冒険者によって倒されたらしい。いまは隔離された場所に幽閉されている」

「はえ~、私がいない間に、そんなことがあったんですね」


 ミョウジンとフーラのその会話を、金髪の少女は真剣な顔で聞いていた。その様子に気が付いたフーラが彼女に尋ねる。


「どうかしましたか?」

「あ、いえ……」


 金髪の少女は言葉を濁したあと、ミョウジンに顔を向けて、


「……あの、その冒険者って誰だったんですか?」


 その質問に、フーラもミョウジンを見る。


 ミョウジンはフードの人物に従っている身であり、無関係の者に話せる内容は限られたものになる。


(ユウナの報告で、冒険者のうちの一人はサトリだということは分かっているが……サトリを敬遠している者は多い。このシスターを無闇に不安にさせる必要はないだろう)


 そう考えて、ミョウジンは口を開いた。


「一人は退治屋と呼ばれている仮面の剣士らしい。他にも何人かいたようだが、さすがに彼らについては俺も分からない」


 ミョウジンの話を聞いて、


「……そうですか……」


 金髪の少女はそうつぶやく。その表情は心なしか、不安そうな、何かしら気掛かりそうな感じだった。


 しかし彼女はすぐに気を取り直したように、二人に向き直ると、


「フーラさん、ミョウジンさん、通行証のこと、ありがとうございます」


 頭を下げた。そして顔を上げて、自分のポーチに手を伸ばし、


「あの、助けてもらったお礼なんですけど……」

「あ、っと、ストップですよ、イブさん」


 財布を取り出そうとする金髪の少女を、フーラが制止する。


「さっきの人たちも言ってましたけど、私はお金が欲しくてあなたを助けたわけじゃありません。お礼なら、あなたの気持ちと言葉で充分ですよ」

「でも……」

「イブさんだって、見返りが欲しくてシスターさんになったわけじゃないでしょう?」


 金髪の少女はハッとした表情を浮かべた。


「……! ……はい……そうでした……」

「それと同じですよ。私は困っている方を助けたいから王宮魔導士になりました。もしイブさんがそれでもどうしてもお礼がしたいというのなら、その気持ちを持って、私ではない他の困っている方の助けとなってください」

「……はい……本当にありがとうございます」

「いえいえ、どういたしまして」


 もう一度頭を下げる金髪の少女に、フーラはにこやかな笑顔を向けるのだった。




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