その五十九 その通り、オレたちは盗賊団だ
「さて、と」
通行証の目途が立ったことを見て取って、そうつぶやいたかしらが続ける。
「シスターさんは王都に入れそうだし、オレたちはここでお役御免だな。できればオレたちも王都に入ってみたかったが、まあこればっかりはしょうがねえ」
そこでかしらはフーラを見て、
「フーラさんっていったっけ、シスターさんのことは頼めるか? 王宮魔導士なら心配はいらねえだろうし、門を通れないやつらが何人もぞろぞろと行っても、迷惑になるだけだろうからな」
「まかせてくださいっ」
ポンッと、自分の胸を軽く叩きながらフーラが答えるのを見て、かしらは安心したようにうなずき、それから仲間の二人に言う。
「よし。そんじゃあ行くぞおめーら」
そうして背を向けようとしたかしらに、
「待って……!」
と金髪の少女が声をかけた。振り返るかしらに近寄ったあと、自分のポーチから財布を取り出すと、何枚かの紙幣をかしらへと差し出す。
「ここまで運んでくれてありがとう。受け取って」
一瞬目を丸くしたかしらは、なっはっはと笑い声を上げると、
「いらねえよ。金が欲しくて助けたわけじゃねえからな」
「えっ、でも……」
「いいから気にすんな。ほら早く行くぞおめーら!」
そう言って、さっさとその場から走り去っていき、
「「ちょ、ちょっと待ってくださいよおかしらー」」
そのあとを慌てて若い女と若い男が追いかけていく。遠ざかっていく彼らの背中を、金髪の少女はぽかんとした顔で見つめていた。
草原を走りながら、若い男が戸惑った様子でかしらに尋ねる。
「ちょっとおかしら⁉ なんでもらわなかったんですか⁉ せっかくのお金なのに!」
「だから言っただろ。俺は金が欲しくてあの子を助けたわけじゃねーんだよ」
「でも……」
「それにずっとおまえもぼやいてただろ、オレたちは盗賊団なのにって」
「え……?」
若い男へと、かしらは不敵な笑みを向けながら言った。
「その通り、オレたちは盗賊団だ。だったら、金はもらうもんじゃねえ、奪うもんだ。違うか?」
「…………」
「なっはっは!」
夜の草原にかしらの笑い声が響き渡った。