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異世界チートレイザー  作者: ナロー
【第四幕】 【王都】
137/325

その五十七 彼女の父親が、彼のチート能力の人柱になったのでしたね……


 一方、そのころ。ジーン王都内の王宮にて。


 屋内スポーツができそうなほどに広い部屋のなか、片膝を立てて床に座り込むミョウジンに、影の薄い修道女が言う。


「……怪我は治しましたが、気分はどうですか……? まだどこか不調はありますか……?」

「ふん……ない。おかげさまでな」

「……それは何よりです……」


 ぶっきらぼうに答えるミョウジンに、特に気分を害した様子もなく、修道女は平生と同じ調子で応じる。そんな彼女にミョウジンは言った。


「さっきのジャックとかいうやつ、私がノドルの街に行く前まではいなかったはずだ。……また召喚したのか?」

「……あなたたち三人のサトリの殺害が、一向に果たせなかったので……」

「ふん……ということは、またチート能力の人柱に死刑囚を使ったのか。あるいは死期の近い……」

「……あなたには関係のないことです……」

「……。……それで手に負えなくなるかもしれないやつを作ってるのだからな……」

「…………」


 そのとき、二人のそばの空間に、空間転移のための黒い縦長の穴が開き、そこからフードの人物が現れる。そのフードの人物に修道女は尋ねた。


「……ソニアさまは?」

「いまは部屋で休んでいます。お忍びで外出するための魔法具も壊れたようですし、しばらくは退治屋ごっこもできないでしょう。それはそうと……」


 ちらりと、フードの人物は壁にかかっていた時計を見て、


「そろそろ、近くの町に使いに出したフーラが王都に戻ってくる頃ですね」

「……彼女一人で行かせたのですか……?」


 尋ねた修道女にフードの人物は答える。


「ええ。彼女も魔導士の端くれですし、何より彼女自身が一人で行けると言ったので。こちらとしても、これくらいできないようでは困りますしね」

「……そうですか……」


 二人の話を、


「…………」


 と、黙ったまま聞いていたミョウジンが、立ち上がりながら言った。


「ずっと部屋のなかにいたせいか、少し外の空気を吸いたくなってきました。ちょっとそこら辺を歩いてきます」


 部屋のドアへと向かう彼に、フードの人物が尋ねる。


「フーラを迎えに行くのであれば、外壁の門まで送りますよ」

「それには及びません。いま言ったように外の空気を吸ってくるだけですし、たとえ彼女を迎えに行くとしても、その程度のことであなたを煩わせるわけにはいきませんから」


 そう答えて、ミョウジンは部屋の外へと出ていった。


 閉じられたドアを見ながら、修道女が言う。


「……確か、彼女の父親が、彼のチート能力の人柱になったのでしたね……」


 それに対して、フードの人物も口を開いた。


「ええ。彼女の父親は死期が近く、どうせ死ぬならということで」

「……そうですか……」


 察したように、修道女はつぶやいた。



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