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異世界チートレイザー  作者: ナロー
【第四幕】 【王都】
136/325

その五十六 もしかして、何かお困りごとですか……?


 王都の外壁からいくらか離れた草原のなかで、金髪の少女は立ち止まり、壁のほうへと振り返る。


「どうしたもんかしらね。明日の朝までなんて待ってられないわよ……」


 こうしている間も、友人たちは命を狙われているのだ。悠長にはしていられなかった。とはいえ、強行突破はできる限りしたくなかった。


 彼女についてきていたかしらが言う。


「オレたちが一暴れしてくるか? その騒ぎに紛れて侵入するとか」

「それはやめて」


 金髪の少女は言下に否定した。


「あたしは騒ぎを起こすために来たんじゃないの。それにそんな騒ぎなんか起こしたら、たとえ王都に入れたとしてもお尋ね者になっちゃうじゃない」

「……ごもっともで」

「少なくとも、もし万が一強行突破をするとしても、それは他の方法が全然ダメだったときの最後の手段よ」

「うーむ……」


 かしらは息をつく。いつもの癖で強引なやり口をつい考えてしまったことを反省する。

 そこで金髪の少女は気が付いたように、かしらたちに言った。


「というか、これ以上あなたたちを付き合わせたら悪いわ。あたしが頼んだのはここまで送ってくれることなんだから。本当にありがとう、あなたたちのおかげでここまですぐに来れた」

『…………』


 少女の言葉に、かしらたち三人と白ネズミは互いに顔を見合わせて、それから彼らを代表するようにかしらが彼女に言う。


「いやいや、シスターさんがあの門を通れる算段がつくまでは、ご一緒させてもらうぜ。そうしねーと、なんか気持ちがすっきりしねーからな」


 かしらのその言葉に、若い女と白ネズミが賛同するようにうなずいた。また若い男も、自分たちは盗賊なのになあ、と複雑な心境ながらも空気を読んで首を縦に振っていた。


 そしてかしらは握った拳で自分の胸を叩く。


「心配すんなって。泥船に乗ったつもりでいてくれ」

「……大船、ね。泥の船じゃ沈んじゃうじゃない」

「そうだったか? まあ細かいことは気にすんな、なっはっは」

「……はあ……」


 金髪の少女は呆れたように嘆息する。しかしながら、その口元はわずかにほころんでいて。


「でも、ありがとう」


 見ず知らずの自分のためにここまで動いてくれる彼らに、内心嬉しくなる。まるで、サキやケイの姿を重ね合わせるようだった。


 そんな彼女の心境には気付かない様子で、かしらが言う。


「いいってことよ。それで、どうやってあの門を通る?」

「正攻法で行くなら、近くの町まで戻って、なんとかして通行証を発行してもらうしかないわよね」

「んじゃあ、またネズ公にでっかくなってもらって乗るか」

「そうね……手間をかけさせてすまないけど、お願いす……」


 金髪の少女が言い終わる直前、彼らに声をかける者がいた。


「あの……もしかして、何かお困りごとですか……?」


 少女たちがそちらのほうに顔を向けると、そこには栗毛色の馬に乗り、防寒用の外套に身を包んだ若い女性がいた。



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