第四十七話 知られざる吸血鬼パンドラ
第五回戦四日目。
遠矢は悩んでいた。
第五回戦の相手。吸血鬼パンドラとしもべのルド。
対戦情報を集め、少しでも勝てる方法はないか探した結果。
勝てる要素が見つからなかった。
その要因の一つが第五回戦のルール。
宝探しは一見戦闘能力がない遠矢たちに希望のあるルールに思えるが、実際は異なる。
確かに戦闘能力がない者も勝利することが出来るルールだが、それには一定の探索能力か移動能力が必要とされる。
そしてそのどちらも遠矢たちにはなく、パンドラたちは持っている。
これによりパンドラは遠矢を相手にしなくても勝利条件を達成することが出来てしまう。
戦うも探索を優先するも相手の自由。選択権を相手に与えてはただでさえ弱い遠矢たちでは満足な抵抗も出来ない。
このような時に遠矢は相手を挑発してきたのだが、パンドラは基本的に共有エリアに顔を出すことは一切ないことが判明している。
絶対の自信があるのか、ダンジョンに通うこともせず何か必要なものがあればしもべを使う。ルールの確認などは主の腕輪を通して行えばよい。
対戦情報を集めても行動しているのは全てパンドラであり、しもべのルドは特に何もしていない。なのでルドを挑発しても意味がない。
久々の手詰まり感に遠矢は若干諦めつつあった。
しかしそんな時に脳裏に浮かぶのはりりあの諦めても良いという言葉。
人によってはその言葉に甘えたくなるだろうが、遠矢は逆になけなしの意地と誇りでその言葉を突っぱねる。
「仕方がない。手当たり次第に情報を探すか」
気合を入れ直した遠矢は第一回戦からのパンドラの戦闘の様子の見直しから始めた。
りりあは怒っていた。
あんな恥ずかしい台詞を言ったのに遠矢が意思を変えず、逆に頑なになって輝天祭での優勝を目指し続けることに。
遠矢を心配して棄権を促したのは嘘偽りのない本心だった。だがそれと同じ程度に輝天祭で優勝を目指し続けるのに疲れていた。
何せ遠矢が考え付く作戦はどれも無茶苦茶。一つ間違えれば死ぬしかない危険なもの。いくら優勝するためとはいえ、何度も命を危険に晒される側としては堪ったものではない。
四戦四勝。この成績だけで十分。輝天祭で優勝できなくても、本選出場が叶わなくても言い訳として問題のない結果。
それに何より、第四回戦の遠矢の悲惨な姿を見てりりあも怖くなった。
自分のあのようになってしまうのではないかと。
手足が折れ、全身がズタボロになり、苦しい中でも死ねない状況。そんなことになるのだけは絶対に嫌だった。
何とか遠矢を諦めさせる方法がないか共有エリアを見て回っていれば。
「あ」
商業エリアで見つけてしまった。対戦相手の吸血鬼のしもべ、ルドを。
「あ」
そして見つかりもした。
互いは何とも言えない顔で見つめ合い、しもべのルドは何も見なかったことにしてその場を去ろうとしたが。
「ねえ、挨拶をしていなかったよね。今度の対戦相手のりりあ。よろしくね」
りりあは積極的に接しに行った。理由は単純に対戦相手の情報が欲しかったから。勿論欲しいのは目の前のルドではなく、パンドラの情報。
その情報を遠矢に渡して第五回戦を有利に進める、何て考えはりりあにはない。その逆。
ルドからパンドラが強力無比である情報を聞き出して遠矢を諦めさせるため。
「もしかして買い出し? 偉いね。やっぱり主が凄いとしもべも出来が違うね。トーヤは弱くって話にならないからね。その点パンドラは強いからなー」
悪魔王の娘なため、誰かに褒められることはあっても褒めることには慣れていないりりあの精一杯の賛美。
普通なら下手くそな賞賛に警戒するが。
「そ、そうだろ! 主様は凄いんだ」
ルドは素直に受け止めた。
「…………あれ?」
その反応にりりあは僅かに違和感を抱いた。下手くそな賞賛を素直に受け止めたから、ではない。もっと根本的な部分。
目の前で嬉しそうに笑うルドは灰色の髪に真っ白な肌。一瞬病弱に見える身体をしているがその両手には大量の荷物。子供から青年に変わる途中と言える身体をしている。
「……何だ?」
「ああ、いや。何でもないよ。パンドラの凄い所を教えて欲しいな。トーヤに教えて勝てないって教えたいから」
「任せろ!」
ジッと見ていたことをルドに問われ、りりあは誤魔化して話題を変える。そしてその時にはルドに抱いていた違和感はなくなっており、単なる気のせいと片付けた。
それから三十分ほど、ルドの拙い言葉によるパンドラの話をりりあは半分聞き流しながら付き合い、後で遠矢にパンドラの強さを余すことなく伝えることに成功した、が。
「……なるほど。りりあ、よくやった。千ポイントやろう」
何故か遠矢から褒められる結果となり、りりあは首を傾げなら千ポイント分のお菓子を購入した。
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