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自由の〇〇?


「全く何なんだいこのダンジョンは。絶対踏破させる気無いだろ!」

あれからまた、4週間。ひたすら進みこの崖を上がれば目的地だという所にたどり着き、ついに大姉が愚痴をこぼした。

まぁ、大姉が言うのも最もで、実際先生のナビがなければ未だ7階を超すことも出来なかっただろう。そもそも日替わりでルートが変わる大迷路って言う段階で反則だ。


「まあまぁ、ここ上がったらゴールなんやし落ち着いて。」


「分かってるよ。あれだ、終りが見えたから今まで言えなかったことを言っただけだよ。」

そう言って大姉は肩をすくめて微笑んだ。


「……じゃぁ行こうか。」

そんな私達を見てクスクス笑ってた小姉が、静かに息を吐き覚悟を決めたように言った。

この崖の上に有る玉を手に入れれば、いよいよ女神様と交信できる。勿論、交信したからと言って隊長達が生き返る保証はない。

頼んだ所で断られるかも知れないし、そもそも生き返らせるなんて、女神様でも不可能かも知れない。

だけど、何もしないよりはマシだと、藁にもすがる思いでここまでやって来た。

そしていよいよその答え合わせが目前に迫る。


きっぱり無理だと言われてしまい、すがる藁すら無くなってしまったら小姉はどうなるんだろう?そんな事を考えてしまい、正直私の足は竦んでた。

シュレーディンガーの猫って奴だったかな?

ある意味、答え合わせ直前の今が一番幸せな時かも知れない、、、。






「、、、、あれだよね?」

「あれだねぇ」

「あれね。」

「あれですか」

[あれで間違いありません。]

「ワン!」

皆でピャーチを吊り上げて、最初に目に飛び込んできた物を指して言う。

登った最後の崖の上には一辺が1キロメートル位ありそうな台地が広がっていて、砂以外何もない台地の中心辺りに、目的の玉が有るらしき場所を見つけることが出来た。


それは40メートル程ありそうな女性の像で、左脇に何かを抱え、高く掲げられた右手には、ソフトクリーム……ではなくて、ひときわ輝く何かが乗っている。

この女性像自体が水晶みたいな物で作られているらしく、陽の光を浴びて輝いているのだが、右手に掲げられたそれは、自ら光を放つ様に虹色の光を振りまいて自己主張しているので、姿形は見えなくても目当てのものだろうと察しがついた。


皆は申し合わせたように息を呑み、自然と横一列になって歩きだす。


「色・形・大きさ。全部先生の話と一致するね。あれで間違いないみたい。」

像まで残り50メートル程まで来ると、小姉が魔法で像の手元を拡大して確認した。


「………あれが動き出すって事はありませんよね?」

ボソリとキングさんがそう呟いく。

その瞬間、全員が抜群の呼吸でキングさんを睨みつけた。


「え?えっ?えっっ?」


「……いや、ゴメン。何でもないよ…どうせ結果は同じやろうし」


「フッ、それもそうだね」


「まっ、そうなるわよねぇ~。」

状況を飲み込めていないキングさんを1人置き去りにして、私達はクスクス笑う。

みんな口にしなかっただけで、心の中では思っていたし。ここに来てあの像がただの置物だと思えるような経験はしてきていない。


「よし、それじゃぁ私が様子を見てくるよ。トーコは弾数がもう少ないんだろ?ハッキリした弱点が見つかるまで攻撃は控えてね。」

大姉が体をほぐしながらそんな事を言う。

そうなのだ、7階以降ここに来るまで重機関銃に頼りすぎてしまったことも有って、潤沢だったはずの資金も底をつき、残弾が残り200発程度になってしまっていた。


[一発千円近い弾丸を毎分400発以上吐き出す銃を惜しみなく使ってたらそうなります]

しれっとそうのたまう先生にため息をつく。

そういう事はもっと早くに言ってほしい。


「先生何か情報は有るかい?」


[…………あの像の主成分はダイヤモンドで出来ているようですね]


「ダイヤモンドか…それは厄介だねぇ……。」


「ダイヤってメチャメチャ硬いってことやろ?!!なんか弱点無いの?!」


[…………該当する情報は特にありません。]


「…………そのさっきから有る微妙な間はなんなん?」


[そうですか?それは気が付きませんでした。]


「まぁ、言っても仕方がない。取り敢えず行って来るよ。ピャーチ援護は頼んだよ」

何となく言動の怪しい先生だが、問い詰めた所で新しい情報は無いだろうと判断した大姉がピャーチと共に女性の像に向かって走り出した。


40メートル…30メートル…20メートル。女性像が屈めば大姉たちに手が届く、そんな距離まで近づいた時、地鳴りと共に台地が揺れる。

震度5~6はありそうな激しい横揺れの中、それにも構わず走り続ける大姉とピャーチ。大姉が鉄扇をガシャンと開いて振りかぶった瞬間、女性像は予備動作なしにジャンプした。


「チッ、なんだいあの動きは」

高く舞い上がる女性像を、大姉は忌々しく目で追う。


「トーコ様、こっちに来ます!」

そうキングさんが叫ぶ通り、飛び上がった女性像を見上げると、私達に向かって落下を初めていた。


「小姉、走ろう!」

言うと同時に私は、小姉の手を取って全力で走り出した。

女性像の影を踏み越し、尚も走り続ける。そして踏み越したはずの影が徐々に大きくなって再び私達に追いつき始める。


ズーーーン!


激しい衝撃音と共に再び揺れる台地。震度3~4位の揺れに足を取られて転びそうに成る私をキングさんが受け止めてくれた。


「大丈夫ですかトーコ様!」


「う、うん。ありがとう大丈夫。敵は?」

そう言いながら振り返ると、砂埃の中、女性像がゆっくりと振り返っていた。


コキコキコキと首を鳴らし、クルクルクルと手首を回し、ぴょんぴょんぴょんと軽くジャンプする女性像(・・・)


「うわぁ、、、あんな滑らかに動く石像とか、、、シュール過ぎて笑いも出えへん。」

まるで生身の人のように動く女性像に、以前戦った石像様のような動きは期待できない。


「ワオォォォォォン!」

女性像はぐるりと辺りを見回した後、今しがた吠えたピャーチを見つけそのまま一気に走り出した。


ダダダン!


工事現場で石を削り飛ばしているような連続した轟音と振動を発しながら、女性像はその巨体に似合わない素早さで私の横を一瞬で過ぎていく。

そもそも一歩が20メートル近いスライドだ、ピャーチのところまで僅か三歩足らずで辿り着いた。


「あの巨体でなんて動きしやがる!!」

叫んだキングさんを私は思わず二度見する。

一度は聞いてみたかったこの言葉。デカくて早い魔物も沢山いたが、誰も言ってくれなかったこの言葉。

よもやキングさんの口から聞けると夢にも思わず、それも一字一句狂いない。

思わず抱き締めてしまいそうになるほど、今のキングさんが輝いて見えた。


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