会敵その3
“バンッ”
“バンッ”
“バンッ”
“バンッ”
激しい炸裂音を響かせながら弾を吐き出す。
サイレンサーは威力と精度が落ちるらしいので今回は取り外す、
何よりその激しい炸裂音が敵の馬を怯ませ、足を遅らせていた。
馬か人、どっちかに当たれば儲けものと、引き金を引いた。
初弾は馬の頭部にめり込み、次弾はその馬に乗る人の腹部を穿いた、それ以降は大きく外れたようだ。
4発で一人は効率が悪すぎる、しかし倒れた先頭の馬に巻き込まれ後続数匹の馬も転んだようだ。
取り合えず、一発づつ馬を狙って撃って行こう、数発外しても巻き込めたら元は取れるだろう。
“バンッ” 、、、、、、、、、
“バンッ” 、、、、、、、、、
“バンッ” 、、、、、、、、、
“バンッ” 、、、、、、、、、
当んない、、、、、
無理にでも習っとけば良かったかなと後悔する。
昔、国防組織の訓練に参加はしたが、体力訓練やサバイバル訓練に参加しただけだ。
徒手格闘は軽く習ったが、射撃訓練は流石に一般人に参加できるはずも無かったしする必要も無かった、折角だからと落下傘降下を体験させてもらったのは唯一いい思い出だ、、、、、。
そんなわけで、銃の構え方なんかも全くの我流で、移動射撃のコツなんかも知りようが無い、一発一発コツを掴むように丁寧に撃つしかなかった。
“バンッ” お!
“バンッ” お?!
“バンッ” おぉ!
“バンッ” 、、、、、、、、、
極めたか?! なんて思いもしたがよく見れば距離が100メートル程まで詰まっている、
なんだ、と肩を落としながらも、今がチャンスと数発撃ち込んだ所で一気に距離が開いた。
諦めた? 訳ではなさそうだ5~600メートルほど距離を置いて追従している、
流石に銃を警戒して下がったんだろう。
時折単発の魔法が跳んでくる、狙いも荒く掠る気配も無いが気も抜けず、中途半端な硬直状態のまま5分ほど経過した。
元々、集中すると視野が狭くなりがちだった、その分上達が早いと褒められていたが、、、、
今もただ、揺れる状態からの射撃のコツを掴む事に夢中になっていた、その為だろうか撃っている的が人である事に抵抗を感じない、
慣れと言ってしまえばそれまでだが、我事ながら冷血すぎて心配になる、
戦場は人を狂わすとも言うが出来ればそれだと思いたい、、、、、、。
そんな事を考えながらも以前ほど戸惑う事も無くなっているのはやはり慣れなんだろう。
[トーコ、後方一部、左右に分かれました。]
中央に32名残し、左右に4名づつ別働隊が広がっていく、
当分交差点の無い一本道が続く、回り込み前に出られると厄介だ。
キャバさんに伝えてもらい判断を待ち、後方を睨み続ける。
”バギャン!”
突然背後から破裂音がした、振り向くまもなく身体が振られ、空中に投げ出される。
手から離れた機関銃がスローモーションで跳んでいく、咄嗟に収納をイメージし機関銃は光の粒になり革袋に吸い込まれていった。
視界の隅に重なり合うように接触している2両の馬車を捕らえ、投げ出された事を理解する。
咄嗟に頭を抱え受身を取ろうとするが両手が何かに引っ掛かり動かない、仕方なく両足を引き上げ身体を丸める、同時に何かが顔を覆い視界が塞がれた、予想される痛みに備えて目を瞑る。
”ガンッ ガリガリガリガリ”
落下の衝撃で背中と後頭部を堅い物に打ち付ける、一瞬息が詰まるがそれ以上じゃない、後頭部の痛みも涙がにじむ程度だ。
結構跳んだように思えたがそれ程でもなかったのだろうか?ダメージは少なかった。
顔を覆っている何かをゆっくり除ける、同時に腰にも何かが巻きついているので手で探る、
「うっ」
背後から聞こえた声ですべてを理解する。
またこのパターンか、、、、、、
腰に巻かれた手を除けながら、ゆっくり起き上がり振り返る。
「ト、トーコ様ぐぶじでしたか」
顔を真っ赤に血で濡らしたキングさんがいた。
「大変!何処切りました??血だらけですよ!!」
ポシェットからポケットティッシュを取り出して顔を拭う。
「だ、だだ、だいじょぶです、はな、はな血がでただけです、自分でやりますので、よごれられてしまいまず」
腕で鼻血を拭いながらキングさんがキョドる。
えーっと、
私に抱きついて鼻血、、、、?
ちょっと可愛すぎるやけど、、、。
[トーコ、あなたの後頭部が、、、、、、]
(あ、はいすいません、、、、、、ってか先生絶対に私の心の声聞こえてるでしょ、、、、、)
[トーコ、今はそれ所じゃありません。直ぐに戦闘準備を]
そう言われて思い出した。
「ピャーチは?!」
「ワンワンワン」
少し離れた草むらから走ってくる、軽いので良く飛ばされたのだろうが元気そうだ。
[戦闘、、、、]
「分かってる!! キングさんいけますか?!」
素早くティッシュを丸め鼻に詰め込む。
「ふぉ、ふぉい。ばいぼうぶべす」
キングさんが立ち上がったのを確認して、辺りを見回す。
キャバさん達の乗った馬車は無事なようだ、こちらに引き返そうとしている。
2両目の馬車の車輪が破損している、その為転倒した馬車に私の乗る馬車が突っ込んだようだ。
動きの素早い数人が手綱を切り馬車を押している、バリケードを作るようなので手伝おうとするが
「この馬でお逃げください!」
そう言っ手綱を掴まされる。
「それは無理」
一言で切り捨てて手綱を離す。
(先生どんな感じ?)
[2両の馬車及び馬三頭は修復不可能です、無事な馬で逃げる事をお勧めしますが、、、、ハァ、、、]
「うん、ごめんね先生。 皆ここで返り討ちにしてやりましょう、でもけがしないようにね!」
そう叫ぶ私を見て、皆が一瞬固まるが、
「「「うぅぉぉぉぉぉぉ!」」」
直ぐに声を上げ応えてくれた。
その声になんとも言えない連帯感を感じる、映画の終盤で感じるような高揚感だ
”ブルルッ”と震えが上がってくる、武者震いって奴だろう。
眼も眩む高さの壁に張り付き恐怖に耐える、10ミリほどのロープに命を託し僅かなホールドに向かってジャンプする、そんな時の感覚を思い出す、テンションは止め処なくあがり続けていく。
(ライフル頂戴!)
心で念じると、すっぽりと手に収まるように出現する、すかさず馬を狙い数発撃ちこむ。
敵は100メートル付近まで迫っていた、全弾標的を捉えるが、脳を破壊しない限り直ぐには止まらない。
各個撃破するには時間が足らなすぎる。
距離は瞬く間に詰まってくる、埒が明かないとフルオートで横薙ぎに弾をばら撒くが3秒と持たずに弾切れになった。
「弾ーーー!」
叫ぶと同時に空になった弾倉は光の粒になり同時に新たな弾倉に変わる。
”ドンッ” 新たに呼び出された弾倉は銃にはまる事無く馬車の上に落下する。
革袋からの出し入れは周囲10メートル程度の範囲なら任意の場所に指定する事ができた、
それを利用して直接弾倉を装着できないかと練習してはいるのだけど、
細かな位置指定が難しく、また失敗したようだ。
慌ててマガジンを拾う、
敵とはもう50メートルも離れていない、
否が応にも焦りが手元を狂わす、うまくマガジンが刺さらない。
「あーーもぉ!」
ライフルを手放し機関銃を取り出す、突如倍ほどの重さに変わり思わずバランスを崩すが、銃身に付いた足が上手く馬車に乗り安定した。
引き金を乱雑に握り締めるが、弾が出ない?!
二度三度引き金を握るが、それでも出ない。
「かんべんしてよ、なんなんこれ!」
”ガチャガチャ”とコッキングレバーを引くがそれでも引き金は動かない。
「あ、セーフティー」
思い出し手堤を打つ。 瞬間、大きな影が私を覆った。
敵の馬が馬車を飛び越え今まさに私の上に着地しようとしている。
「やばい!」
銃を掲げ支えようとするが、無意味な行為だ。
(何で横に避けへんの!!!)
頭の中の私が叫ぶが、今更遅い、身体の反応は間に合わない。
僅か一秒にも満たない時間で私も色々考えるもんだとも思いながら迫り来る馬を目で追っていると
”ガンッ”と頭上の何かで止まり、”ザスッ” っと鈍い音と共に馬の胸から棒が生えた。
その棒は直ぐに引き抜かれ三又の槍だとわかる、引き抜かれた穴から真っ赤な血が頭から降り注ぐ。
直感的に銃が濡れる事を嫌い、横に避ける。
「す、す、いまません!」
キングさん登場だ、盾で受け止めていた馬をそのまま横に投げ飛ばす。
宙を舞う騎手をそのまま槍で突き、振り返り駆け寄ってくる。
(なんか犬みたいやな、、、、)
[トーコ、それは余りにも失礼です、、、、、、]
(あ、うんごめんなさい、、、。)
先生の冷静な突っ込みは私の頭も冷ましてくれた。




