会敵その2
「くそ、なんなんだアイツは」
スパさんが苛立ちながら矢を放つ。
ひと塊に構える敵3人を6人で囲み斬りかかる、それ以上で行った所でお互いが邪魔にしかならないので意味が無く、
隙を見てスパさんが矢を射掛けるが難なく躱されてしまっている。
残った私達は負傷者の手当てをしながら少し離れたところで見守る形だ、
何度か降伏を呼びかけたが、頑なに拒み「仲間の敵だ」と剣を振り続けた。
前線の6人をローテーションで回しながら敵の体力切れを待ち続ける現状だ。
小汚い男と取り巻きの二人は囲まれてから20分以上粘り続けている、休むまもなく繰り出される攻撃を躱し、反撃さえ繰り出す小汚い男を見て「何なんだあいつは」と愚痴りたくなるのはスパさんだけではなかった。
それでも時間とともに疲れは見えてくる、特に手下の二人は限界を迎えていた、
ローテーションが周りチャールズさんが参加した所で疲れ果てた二人はアッサリと貫かれた。
「ガハハハ!やるじゃねえかお前ら、ここまで追い詰められたのは初めてだぜ、折角の楽しい時間をもったいねぇ、ここらでちと休憩にしねぇか?」
「なっ!ふざけるな!!」
スパさんの苛立ちが積み重なり声を張り上げる。
圧倒的不利な状況にもかかわらず余裕の姿勢を崩さない男の姿に、不気味さを感じる。
その後も四方を囲まれながらも10分近く粘り続けた、全身血塗れに成りながらも、致命傷を避け戦い続けた男も膝を落とす
「あぁくそ、ソロソロ来ると思ったが読みが外れちまった」
男が呟いたと同時に
“ドスッ”
とスパさんの矢が男の額を貫いた
「何者だったのでしょう、これ程の手練の山賊なんて聞いたこと有りませんわ」
「全くです、軍にでも入れば相当な地位を得られたでしょうに、、、、それに部下一人一人もかなりの腕前でした、この国の軍にもあれ程の集団は知りません」
キャバさんとチャールズさんがため息混じりに話し合っている。
皆は山賊達の死体を集め、使えそうな武器や金品を剥ぎ取っている、私の感覚からすれば追い剥ぎ行為に思え抵抗を感じるのだが、この世界では普通のことらしい。
「我々の装備も損傷しています、死体に装備はもう必要ありません」
そう言われ、返す言葉も無い。
思い返せば歴史の中にも語られているし、首や耳を取ることに比べれば建設的だ。
死体から剥ぎ取る行為が悪行の様に語られるのは、平和と豊か暮らしの中でこその発想だったんだろうか。
[トーコ!5キロの位置に敵映、53です!]
ホッとしたのも束の間、先生の声が響いた。
(何なんそれ、勘弁してよ!)
「キャバさん、5キロ先に敵です、約53人ですって。。。。。」
急ぎ報告するが、全身からにじみ出るうんざり感は隠せない。
「この為の時間稼ぎだった様ですね、先程の者と同程度の力量があると想定すると撤退するべきです。」
「そうですね、一先ず引きますわ」
「了解しました。
積荷を捨て全員馬車に乗り込め!撤退する!!」
チャールズさんが声を張り上げる。
来た道を引き返し全力で走らせる。
「トーコ様、どうですか?先程の交戦地点での敵の動きは止まりました?」
「今、全員通り過ぎましたね。順調に距離が詰まっています」
レーダーの動きから騎馬隊だろうと先生が予測する。
「素通りですか、、、」
難しい顔で思い悩むキャバさん達、
思えば並べられた味方の死体をスルーするのもひどい話だ。
1面に広がる草原は背が高いとは言え胸ほどしかないので馬車を隠せない、少数とは言え負傷者が居るので簡単には馬車は、捨てれない。
隠れられそうな森や林にはまだまだ遠く、幾つかの分岐路があるのが救いだが愚直にも街道を走り続けるしか出来なかった。
「視界には入って無い筈やのに、迷わず追ってきますね」
既に3つの分岐を過ぎた、ここは大きな街道だ、車輪の跡は何本も残っているのでこの馬車を限定は出来ない筈なのに迷うことなく追跡してくる。
「先程から何度か火玉が打ち上げられています、恐らく遠見の魔法で見られているのですわ、会敵して直に打ち上げられた魔法が合図だったのでしょう」
遠見の魔法とは、空間にレンズと鏡を創り出し数キロ離れた場所を俯瞰で見る事の出来る魔法らしい、ピントの調整等に時間が掛かるため頻繁に視点を変えることはできないが俯瞰で広く見ればこの程度の追跡は可能らしい。
現在探しているペルーさんもこの魔法が使え10キロ先の様子を伺うことが出来るそうだ。
「ってことは逃げるのは無理っぽいですよね、、、あの集団がさっきと同じ様な力量だとしたら厳しいですか?」
即座に撤退を選んだ事から想像できるが念の為聞いてみる、、、。
「そうですわね、先程のリーダークラスの敵が居なければ少ない被害で勝てると思いますわ」
「被害ってどれくらい?」
「5名以上の犠牲は無いだろうと見てますわ」
「あ~、、、、因みに一人居たら、、、、?」
「三人迄でしたら、主だった者は生き残れると思いますが、、、、、トーコ様を逃がすので精一杯だと思いますわ、、、、、」
「そう、、、ですか、、、、」
流れ的に後から来た敵の方が弱いと言うのは期待出来ない、、、
詰みそうな匂いがプンプンする。
(先生、弾足りると思う?)
[8割り程度の殲滅を目標として、この場を乗り切る分には、十分とは言えませんがなんとか足りるでしょう。]
現状、魔細胞が無くては買い物ができない、目指す村で出逢えれば良いのだけども、魔細胞持ちの定住者は記憶にないと言われていた。
まだまだ捜索序盤だ、出来る限り弾薬は節約したい。
とはいえ仕方が無い、今後今より追い詰められる事象に出会うかも知れないが、今だって十分ピンチだろう、弾薬があっても死んだら意味がない。
「キャバさん、一番後ろの馬車に移動しても良いですか?」
「トーコ様、、、、、感謝いたしますわ」
殿の馬車に横付けしてもらい飛び移る。
ライフルを取り出し膝立ちに構えてみるが馬車の振動が激しく、狙うどころの話じゃない、
立ったまま膝で振動を吸収するのが一番良さそうなのだが、狙いはともかく立っていられそうにない。
何か支えになるものが無いかと探していると
「お守りします」
そう言ってキングさんがやって来た。
「キャバさんは良いんですか?」
「トーコ様を第一にお守りする様聞いております、これはエドラド全員の意志ですのでご安心下さい。」
とっても重いです、、、、なんて思うが言葉には出せず。
事実守ってもらわなければ生き残る自信がないのが情けない、、、、。
そう言えばキングさん、戦闘が始まってからは たどたどしさが無くなっている、いつもこうなら良い筋肉なのに、、、、
いやいや、それどころちゃうぞ私。
緊張感も何も無い乙女な私を追いやって気を引き締める、
「それじゃぁキングさん、ちょっと支えになって下さい。」
そう言いながらキングさんの身体と盾の間に入り込み胸に背中を預け狙いを付けてみる。
うん、悪く無い。
「後、触れる程度で良いので腰のあたり支えてもらえると助かります。」
キングさんの手を取り私の腰に添えてもらう、これなら横揺れしても転けないだろう。
「体勢しんどくないですか?」
頭と目線で背中越しに見上げる、
「う、あ、わ、ぁ、はひ、だいちょうぶてす」
真っ赤になりながら目線を逸らす、挙動不審なキングさんが帰ってきてた。
(なんかすいません、、、、)
そう思いながら、敵に狙いを定める。
距離にして300メートル程だろうか、5人10列といった具合で迫って来ていた。




