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第3話 秘密と噂と本当の友情

こんにちは、房吉です!

前回は陽菜ちゃんが篠原くんと図書館で出会い、お互いの「隠れ歴史好き」という秘密を知るところまでをお届けしました。


今回は二人の関係が周囲にどう映るのか、


そして陽菜ちゃんの内面の変化を描いていきます。お楽しみください♪


「ねぇねぇ、聞いた? 天音さんと篠原くんが最近よく一緒にいるって」


「マジで? 付き合ってるの?」


「知らない。でも放課後、二人で下校してるの見た人がいるらしいよ」


朝のHRが始まる前、教室の隅からそんな囁き声が聞こえてきた。思わず机に突っ伏しそうになるのを必死でこらえる。


(バレてる…!?)


ここ二週間ほど、篠原くんとは週に3回ほど図書館で待ち合わせていた。


最初は本当に歴史の話だけだったのに、いつの間にか雑談も増え、帰りが同じ方向だと分かって一緒に帰ることも。




「おはよう、天音」


真琴が席に着きながら、心配そうな目で私を見た。


「聞こえた? あの噂」


「うん…まずいよね…」


「それで? 本当に付き合ってるの?」


「違うよ! ただの…」


「歴史友達?」


真琴が小声で言うと、思わず吹き出しそうになった。


「そう、それ。本当にただの歴史友達だよ」


「でもさぁ、クラスのみんなに『実は歴史好きなんです』って言えないじゃない? だから余計に誤解されるんだよね」


真琴の言葉に、胸がキュッと締め付けられる感覚があった。


確かにその通りだ。私も篠原くんも、自分たちの趣味を隠しているから、よけいに怪しまれてしまう。


そのとき、教室のドアが開き、篠原くんが入ってきた。いつものように爽やかな笑顔で、サッカー部の友達と談笑している。


私たちの視線が一瞬だけ交差した。


ほんの少し長く目が合って、小さくうなずいてくれた。


たったそれだけのことなのに、心臓がバクバクと鳴る。


(やばい、噂されてるのに、こんな反応したらますます変じゃん…)



慌てて視線をそらし、教科書を開く振りをした。


「あ~あ、怪しいねぇ」


真琴がクスクス笑いながら言う。


「もう、からかわないでよ!」


「でもさ、篠原くんとの話、楽しいんでしょ?」


「…うん」


思わず笑みがこぼれる。


「楽しい。すごく。だって、本当の自分を出せるから」


「じゃあいいじゃない。人の噂なんて気にしなくて」


真琴はいつも的確なアドバイスをくれる。でも、現実はそんなに単純じゃない。


「でもさ…」


「ん?」


「もし篠原くんが、噂のせいで私と話しづらくなったらどうしよう…」


その不安が、一番大きかった。せっかく見つけた同志。それを失うのが怖かった。




放課後、いつもの図書館へ向かう道すがら、足取りが重かった。


今日も篠原くんと会う約束をしている。でも噂のことを話すべきか、悩んでいた。


図書館に着くと、すでに篠原くんは席に座っていた。見ると、珍しい戦国時代の地図を広げている。


「やぁ、天音さん。これ見て! 摺上原の戦いの詳細地図なんだ」


いつもと変わらぬ笑顔にほっとする。


「わぁ、すごい! 伊達政宗の進軍ルートも描かれてる!」


興奮して席に着く。戦国好きにはたまらない資料だ。しばらく二人で地図を見ながら会話を楽しんだ。



「あのさ…」


気になっていたことをようやく切り出す。


「クラスで噂になってるみたいなんだけど…知ってる?」


篠原くんの表情が少し曇った。


「ああ、うん。聞いた」


重たい沈黙が流れる。



「どうする? このまま一緒に図書館来るの、やめた方がいい?」



心臓がドクドクと鳴っている。どうか「やめよう」と言わないで。


「え? やめる必要ある?」


予想外の答えに目が丸くなった。


「だって…変に噂されるよ?」


「そんなの気にしなくていいんじゃない?」


篠原くんは肩をすくめると、意外な提案をした。


「というか、もう隠す必要あるかな? 俺たち歴史好きなだけなのに」


「え…」


「俺、言おうと思うんだ。『実は歴史マニアです』って」


その言葉に衝撃を受けた。


クラスの人気者が、そんな「ダサい」趣味をカミングアウトするなんて。


「…できるの?」


「正直、勇気いるけどね。でも、隠すの疲れたんだ」


彼の瞳に決意が光っていた。


「それに、天音さんと一緒に歴史談義するの、すごく楽しいんだ。そんな楽しいこと、なんで隠さなきゃいけないんだろうって思って」


胸の奥がじわりと熱くなる。


そうだよね。


好きなことを好きだと言えないなんて、変だよね。


「でも急にカミングアウトしなくていいよ。天音さんが準備できるまで待つから」


彼の優しさに、思わず涙が滲みそうになった。


「ありがとう…ちょっと考えてみる」


帰り道、空を見上げながら考えた。


(本当の自分を、受け入れてもらえるかな…)


家に帰って、真琴にLINEした。


「篠原くん、歴史好きをカミングアウトするんだって」


真琴からの返信は早かった。


「すごいね! 陽菜はどうするの?」


「わからない。怖い…」


「でも、陽菜が歴史好きなこと、知ったからって誰も嫌いにならないよ?」


「でもイメージ崩れちゃうし…」


「それって、本当の友達じゃないよね?」


真琴の言葉が胸に刺さった。そうだ。本当の友達なら、趣味くらいで関係は変わらないはず。


「陽菜は、クラスの人気者でいることと、本当の自分を見せることと、どっちが大事?」


その質問に、すぐには答えられなかった。


窓から見える星空を眺めながら、明日の決断について考え続けた。

第3話はいかがでしたか?

陽菜ちゃんの心の葛藤を描くのに力を入れてみました。


「本当の自分」と「周囲に見せる自分」のギャップに悩む気持ち、きっと多くの方が経験したことがあるのではないでしょうか。特に思春期には誰もが通る道かもしれませんね。


次回、陽菜ちゃんはどんな決断をするのでしょうか?


そして、それが本編の異世界転生にどうつながっていくのか、最終話をお楽しみに!


皆さんの応援が物語を紡ぐ力になります。感想やコメントをいただけると嬉しいです!

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