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052_女性幹部会議2 スキンシップの件


 ラシルが山脈の竜族たちを支配下に置いたその夜。

 幹部たちが招集され、会議が開かれた。


 メインの議題は、ラシルが龍を支配下に置いたことだった。

 1週間くらいしたら竜族を迎えに行く。

 レベリングの成果が出て、基本的に全員人型に進化できているだろうから、研修所に入れる。

 

 竜族は人型になったほうが強い。

 進化して龍族になるという理由もあるが、人型になれば体が小さくなった分だけエネルギーが凝縮されるからだ。

 とりあえずは強化、レベリングを目標とする。

 竜種レベルでカンストしたら、本人の希望を聞き、更なる進化をするかどうするかを決める。

 できれば転移できる龍種を増やしたいというのも伝えた。


「流石はラシル様」


「素晴らしいです、師匠」


「一日で山脈全域を支配下に入れるとは」


 と、みんな大絶賛。


「これはセシュレーヌの功が大きい。セシュレーヌには後でご褒美を上げるから、欲しいものを考えておくように」


「はい!!」


 セシュレーヌが椅子から落ちそうになるほど跳び上がった。

 よほど嬉しいのだろう。

 良かった良かった。



 研修所と研修参加者の進捗を聞いた。


「研修所の資材は順調に作成中です。数日後には100程度建設が完了するでしょう。引き続き、並行して他の建物の資材調達も進めます」


 ミイが報告した。


「研修生はどう? 集まりそう?」


 報告したのはショウだった。


「積極的に手を挙げる者は少ないのが現状です。未知の出来事に恐れている者も多いですが、各王と領主は一人でも多く自国人を入れたいようです。国力の向上にもつながりますから。ですので問題ありません。定員には達しそうです」


「そうか。第一期生の結果を見て、手を上げてくれる者が増えるといいけど」


 各幹部からの報告があった。

 それぞれみんな順調なようだった。

 ベッフィーがこの世界についての考察をまとめたので、また話し合いたいという申し出があった。

 後日時間を作ることにした。


「それと、今後どんどんギルドの人数が増えてくると思う。できれば仲良くしてほしい。元々のメンバーと今のメンバーの距離感というか、どういう付き合い方が良いか、みんな少し考えてみてほしい」


 元のメンバーは全員ゲーム世界の住人だった。

 ギルドに入るまでひと悶着あった者も沢山いるし、思い出もある。

 そして何より、この世界の者と比べて、技術水準というか、思考形態が恐らく異なる。

 ゲーム世界では各々がNPCとして存在していて、NPCはゲームの中では独立AIという位置付けだ。

 AIは学習するために、ゲームシステムにアクセス権限を有していて、知識を得ることが出来ていた。

 つまり、元の世界のデータや書籍をダウンロードしていて、思想やら歴史やら科学やらを知っているのだ。

 そんな元NPCとこの世界の住人では、根本的に存在が異なる。

 一緒に平等にするわけにもいかない。

 どういう関係性が望ましいのか、みんなに考えてもらうのが一番早い。

 

 そして会議が終了。





 全体会議の終了後、ある秘密の会議が開催された。

 開催されるのは今回で2回目。

 女性幹部会だ。


 メンバーは、前回と同じ。

 拠点管理者5名。

 ミイ、エアノワリス、クゥ、ロメリア、セシュレーヌ、ベッフィー。

 副官が3名。

 魔族サキュバスのセデナ、エルフ族のナスカ、プリーストのカトリーナ。

 そしてもちろん、オブザーバーにショウ。


 セシュレーヌが今日の出来事の詳細を報告する。

 全体会議での内容はみんな知っているため、ラシルの活躍と女性関係がメインの話題になる。

 ラシルがどんな竜(特に女性)と出会い、その時にどんな行動をしたか。

 どんなカッコいい言葉を送ったか。


 セシュレーヌは極めて真面目な顔で、その時の出来事を振り返る。

 ラシル様は闇龍と光龍の子供たちにこう言ったんだ。


「俺が守ってやるから、俺についてこい!」


 脚色されてる。

 ラシルがいたら赤面し、断固意義を申し立てていたかもしれない。

 集まった女性幹部たちは、ラシルのセリフを受けてすぐに感情の沸点に到達した。


「キャー!!」


「しびれる!!!


「あぁ!!」


「そんな!!」


 無口なペッフィーでさえ真っ赤になっている。


「どこまでもついて行きますわ」


 セシュレーヌは他の竜をラシルが口説く際に用いたとするセリフを報告する。

 会議の出席者は、そのカッコイイセリフを自分に言われたと仮定して、想像して、興奮している。

 ショウでさえ例外ではない。

 目を瞑って、ラシルのカッコイイ言葉を頭の中で反芻し、活躍の光景を思い浮かべる。

「素晴らしい」


 興奮冷めやらない出席者たち。

 上気している者、目がとろんとなっている者も数名。


 ラシルの活躍と発言を振り返る、ラシル劇場が一段落した。


 そして問題の水竜の話になった。

 最初に支配下に置いた水竜の族長が可愛い女の子だった話。

 セシュレーヌは水竜とのやり取りを再現し、「ご主人様の匂いを覚える行為」たるものの詳細を再現した。


「なんたること!!!」


「そんな大胆な!!」


「その水竜、すぐに殺処分ね」


「火国のメス犬事件があったばかりだというのに」


 会議出席者の真っ赤になっていた顔が青ざめたり、違う種類の赤になった。

 ある者はショックを受け、ある者は憤慨していた。

 そんな極めていやらしいスキンシップなどを許されたことが無いセデナやカトリーナは後者だった。


「私でさえしたことがないというのに」

 ペッフィーは顔を真っ赤にしている。


「でも水竜の気持ちはわかるのよ。ラシル様は水竜を進化させてこう言ったの。お前をあらゆる敵から守ってやる。って」


「きゃーーーー!!!」


「キャー!!!」


「そんなことを言われたら、どんな生物でもラシル様の寵愛を受け入れるしかないわ」


「私は、私はラシル様をお守りしたい。でもラシル様がどうしてもとおっしゃるなら……私はどうすればいいの???」


 ミイは頭を抱えて呪文のようにブツブツとつぶやき始めた。

「これがループエラーというやつね。ゲーム内でなっていたら大変なことになっていたわ」



 エルフ族のナスカが真面目に考える。


「ラシル様にはベタベタしたほうがいいのだろうか」


「いや、さすがにそれは不敬よ」


 ナスカの親友であるサキュバスのセデナが窘める。


「でもスキンシップは大事だと思う」


「私の想いをご理解いただくためにも必要かもしれない」

 カトリーナが何かを決心したように言った。



 収集が付かなくなった。


「諸君、どうやらラシル様はベタベタしてくる女の子が好きなようだ。これは実証された事実である」


 セシュレーヌがそう宣言した。


「ちょっと待って」


「どうしたの? ミイ」


「意義ありだわ」


「僕の推論が間違っているとでも?」


「ええ」


「根拠は?」


「この世界に来た当初、私がベッドの中でもラシル様をお守りしたいという申し出は通らなかったわ」


「つまり、ミイのベタベタは却下されたと」


「それはつまり……あれじゃないか」


「人によると?」


「年齢かもしれない」


「タイプかもしれない」


 大激論になった。

 ラシルの求めているものとはなんだろう。

 タイプなのか、年齢なのか、アプローチ方法なのか。

 どうやったらスキンシップを増やすことが出来るのか。


「儂とセシュレーヌは有利じゃな」

 

 クゥがそう言い放ってニヤリと笑った。


 その発言がまた会議に火を点けた。



 ショウは頭を抱えた。


 確かに、ラシル様の武勇伝を聞けてよかったと思う。


 とてもカッコいいと思う。


 だけど、僕はこの場に必要なのだろうか。


 議論はまだまだヒートアップしていった。




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