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048_山脈の主たち1 水竜


 良い仕事をした。

 これでこれから面白くなる。


 研修所の建設完了後、セシュレーヌを伴って冒険に出た。

 付いて来ると言って聞かなかったミイを2時間かけて説得した。


 未知の場所に迎えば危険が沢山ある。

 危険が危ない。

 どんな強敵と遭遇するか分からないし、もしかしたらパーティが全滅して死んでしまうかもしれない。

 その時に私が盾になりたい。

 必ず守ってみせるからと力説された。

 ミイには悪いが、熱くてちょっと引いてしまった。

 セシュレーヌとその配下が護衛につくから大丈夫だって言ってもダメだった。

 転移で行くのだから、危なくなったら転移で帰って来ると言ってもダメだった。

 一刻一秒を争う時にねそんなものは通用しないというのが、理由。

 ごもっともである。

 強者は転移阻害をしてくるし、転移する時間があったら殺されている。


「大丈夫だってー」


「いやいやダメです」


 この応酬である。

 最終的には、研修所建設の重要性を訴え、一大事業はミイにしか任せられない、代わりのいない俺の代わりだと目一杯褒め称えて収まった。


 ミイに心配されないためにも、以前の力を早く取り戻さなくてはならない。

 早急に強くなろうと心に決めた。


 行先は龍王城の周囲100キロ。

 竜たちの住む、山岳地帯。

 めちゃくちゃワクワクする。


 護衛に7名、各属性のリーダーが同行した。

 竜族は戦闘レベルをカンストして進化すれば人型になり、龍族になる。

 もちろんみんな進化して人型だ。

 俺のギルドにはスペシャリストしか存在しない。

 このドラゴン達もとてつもなく強い。

 それなのに、更にドラゴンアーマーで完全防備。

 アーマーはフルフェイスだ。

 強い上にカッコイイ。


 赤、青、緑、黄、紫、シルバー、ブラック。

 それぞれ、火龍、水龍、木龍、土龍、風龍、光龍、闇龍。

 まるで戦隊もの。

 男のロマンがここにある。

 ちょーかっくいい。

 そして若干恥ずかしい。


 この七人と女幹部(セシュレーヌ)に囲まれて、飛ぶのだ。

 円陣を組んで。

 男のロマンを突き詰めた、究極系がここにあった。


 セシュレーヌ曰く、ここに住んでいる竜たちは皆それぞれの属性の長を頂点として、コミュニティーを形成しているらしい。

 1人のリーダーの元に数十匹程度が集団になっている。

 山脈には、竜の里、というより竜の巣のようなものが各属性ごとに点在している。

 そしてここに住む竜たちの中で、人型になっているものは風龍、闇龍、光龍だそうだ。

 7竜のうちの3体が進化しているということになる。

 しかし、すべての竜族長は戦闘レベルが100に達している。

 それなのに龍種に進化している者が3人しかいない。

 それは進化のための実である、ドラゴンフルーツが入手困難なため、進化できていないのではないかというセシュレーヌの見解だ。

 それも直接行って、聞いて確かめるのが早い。


 まず最初に向かうのは、気性が大人しそうな水竜と木竜。

 説得が容易だというのが一番の理由。

 それに彼らに色々と山脈に住む竜についての話を聞けるかもしれない。


 ギルドに属している者、つまり配下の者が一度でも行ったことのある場所ならば位置情報がワールドマップに記憶されるため、行くことができる。

 水竜の拠点は、既に探索が住んでいる。

 転移で向かった。


 まずは水竜。


 山々に囲まれた一角に、小さな盆地があり、そこに水が溜まっている。

 一見すると、小さな湖のようになっていた。


 湖の周りを若い竜たちが元気よく飛び回り、じゃれ合っている。

 年老いた竜たちはそんな若者を眺めながら、落ち着いた感じで水辺付近で寝そべっていた。

 これこそ竜の隠れ里だ。


 刺激しないように、転移術で遠くに出現。

 そこからゆっくり飛行していく。

 我々が近づいてくることに気付いているはずなのに、竜たちからの威嚇はなかった。


 水辺の近くに降り立つ。

 もう目の前、50メートルも離れていない。

 そこから歩いていく。


 一番近くにいた竜にセシュレーヌが話しかける。


 竜は人語を解することはできるが、話すことができない。

 話すことができるのは、龍に進化したものだけだ。

 しかしセシュレーヌたちは龍族。

 元々竜であった彼女たちは別だ。

 竜と普通にコミュニケーションが取れる。


「わかった。ありがとう」


 ファーストコンタクトを終えたとセシュレーヌは報告した。


「どうやらあちらにいるようです」


 セシュレーヌの指さした方向に目を向けると、1匹の水竜がいた。

 体はそれほど大きくはない。

 あまり強そうでもなかった。

 正直言って、他の水竜と見分けがつかない。

 水竜は強い者ではなく、最も賢い者がその族を率いる長になるのだという。

 知性は見た目からでは測れない。


 長の竜にセシュレーヌが話しかける。


「やぁ。僕はセシュレーヌという。偉大なるお方、ラシル様に仕える竜だ」


 今更だが、セシュレーヌは「僕っ子」だ。

 女の子が一人称で僕と言うと、なんだか不思議な印象を受ける。

 女性的な部分が隠れて、中性的な部分が増すように思う。

 

 セシュレーヌが説明している。

 相手の言うことが全くわからないので、手持ち無沙汰になった。

 僕っ子セシュレーヌは可愛いななんて思いながら待っていた。

 10分後、どうやら話はまとまったようだ。


 その内容はこうだ。

 水竜は平穏を愛する竜で、争いを避ける傾向がある。

 他の竜族との無用な衝突を避けるために、他の竜族の縄張りを避けて住んでいる。

 西の山脈にはたくさんの木が生えていて、比較的豊なそこは木竜と闇龍、光龍の縄張りとのこと。

 火竜は木の生えている西の山脈と木の生えていない東の山脈を行ったり来たり。

 住処を転々としている。

 土竜は鉱物を好んで食べる。

 場所によって採れる鉱物が異なるので、岩肌がむき出しの東の山脈、その何か所かに巣がある。

 風龍は東の果ての海のそば、強い潮風が吹き付ける場所に好んで住んでいる。

 だからこうして、どの竜族の縄張りにも属さない場所に住んでいる。

 本当はやっぱり水辺の近くが好ましいが、水辺の近くになると火竜がちょっかいを出しに来る。

 水竜たちは縄張りを明け渡して逃げるので、住居を点々としている。

 誰にも害されることなく、平和に暮らしたいという願望がある。



 セシュレーヌは現状と要望を聞いたうえで、害されたくないのであればみんな龍に進化すればいい。そして龍からジョブチェンジして転移を覚えれば暮らしが楽になると説明。

 それが本当であれば、傘下に入ることを承諾されたとのこと。


 なるほど。


 龍種の進化の実である、ドラゴンフルーツも栽培し始めている。

 たくさん収穫できる見込みがある。

 仙人種と同じように、竜でも仲間が増えるのであれば、進化の実をどんどん与えていきたい。


 水竜にドラゴンフルーツを与えた。


「食べていいのですかと聞いております」


「もちろん」


 少し逡巡した後、水竜は食べた。


 いつの間にか集まってきていた仲間の水竜が、恐る恐る成り行きを見守っていた。


 進化が始まり、そして終わった。


 進化の実を食べた水竜は、小さな女の子になっていた。

 12、3歳くらいだろうか。

 青くて長い髪の毛に青い目をしている。

 とても可愛い。

 でも目のやり場に困る。


「これを着なさい」


 服を出して着せてやった。


「ありがとう!!」

 龍に進化したことで人語を話せるようになっている。

 利発そうな子だ。


「どういたしまして。本当に、支配下に入るということでいいんだね?」


「はい。我々に危害をお加えにならないのであれば」


「それは誓おう。お前たちをあらゆる害から、敵から守ると」


「では」と言って、水龍の女の子は跪いた。


 周りに集まっていた竜たちも一斉に頭を垂れる。


「ご主人様、ご主人様の匂いを覚えたいのですが」


 匂い?


「う、うん」


「なっ!! こら、恐れ多いぞ!!!

 セシュレーヌが目の色を変えて激昂した。

 威圧によって水竜たちが怯えている。

 唯一人型に進化した水龍だけが平然としている。

 真っすぐに俺を見つめていた。


「いいさいいさ。そう目くじらを立てなくてもいいだろう」


「はい。わかりました」

 渋々といったように、セシュレーヌが引いた。


「で、どうするんだ?」


「ご主人様はじっとしていてください」


 そう言うと少女は恐る恐る近づいてきた。

 そしてぎゅっと抱きしめられた。

 胸に顔をうずめて、俺の匂いを嗅いでいる。


 なんだなんだなんだ。

 

 ちょっと恥ずかしすぎやしないか。


 その後もひとしきり周りをグルグル回り、匂いを嗅がれた。


「最後に、ちょっと痛いですがいいですか?」


 セシュレーヌが切れそうになる。

 俺はセシュレーヌの頭を撫でてなんとか彼女のご機嫌を保つ。


「いいよいいよ。最後までしなさい」


「はい。では」


 俺の腕を掴んで、手を持つと、愛おしそうに人差し指を噛んだ。

 指からちょっと血が出る。

 それをペロッと舐めた。


 これが何だというのだろう。

 何かの儀式かな。

 聞いたことがないけど。


「気はすんだか?」

 セシュレーヌの声が低くて怖い。

 元気な僕っ子はどこへ行ったのだろう。


 水龍は「はいっ」と元気よく言ってにっこり笑った。


 可愛い。

 頭を撫でてやった。


 えへへっと笑う。


 可愛い。


 お持ち帰りしたい。


「ダメです」


 セシュレーヌとても低い声でギロリと俺を睨む。


 怖っ。

 まだ何も言ってないじゃないか。


「ご主人様、ご主人様は私たちに何をお望みになられますか?」


「特に何も」


 別に敵対しなければ何も望まない。

 こちらが平和に暮らしたくて、相手も平和に暮らしたいのであれば、とても良い関係性じゃないか。


「そうですか……」

 水龍は残念そうに俯いた。


「ご主人様はその偉大なお力で、この世界を支配する予定だと伺いました」


「んっ……?」


「その一環で教育機関を作っていらっしゃると。ですので、私たちも強くなればよろしいでしょうか。」


「まぁ、強くなる分には、戦力が増えるから嬉しいけど」

 

 強い龍族が味方になってくれるのは純粋にありがたい。


「わかりました。では、私たちもその研修所という所で訓練したいです」


 ということになった。


 とりあえずレベルが100になっている者すべてにドラゴンフルーツを与えた。


 戦闘をそんなにしない種族なので、進化したのは数体しかいなかった。


「ラシル様、この者たち全てを一度に連れていくわけにはいかないので、ひとまずここで訓練させてみてはいかがでしょう」

 セシュレーヌの提案だ。


「そうだな。全員龍族に進化したら龍王城に迎え入れよう。それでいいか?」


「はい、仰せのままに」

 

 同じ水属性の隊長である水龍を教官に任命した。

 1週間くらい訓練すれば、多分みんな人型に進化できるだろう。

 竜族は進化して人型の龍族になると召喚魔法が使用可能になる。

 竜族召喚だ。

 その召喚した竜を召喚主以外が倒すと経験値にすることができる。


 竜たちがレベリングをしている間に、こちらの受け入れ態勢も整える。

 どちらも用意ができたらできたら転移迎えに来ると約束する。

 教官の水龍もまだジョブチェンジできていないため、転移術や転移魔法の使用が出来ないのだ。

 ちなみに転移が使えるのは、天使種、魔族種、仙人種のみだ。


「すぐにみんな強くなって見せます」


 元気よく言う水竜の女の子を残し、次の目的地へと向かうことにした。


 この子だけでも連れていけないかな。


「ダメです」


 だから何も言っていないだろう。


 ちょっと不機嫌なセシュレーヌを連れて、転移術を展開した。





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