第31話 休息の日1
----------時間はマコトが出立したばかりの王都まで遡る----------
「リース、何時迄も泣いていちゃダメよ。私達にもやるべき事があるでしょ?」
背中をさすりながら何度目か判らない慰めの言葉を出す。姿が見えなくなるまで見送ってからずっとこの調子だ。
「アレシアは平気なの?ずっと一緒にいた人でしょ?寂しくないの?」
「そうね。でも私やリースには大事な使命があるでしょ?いつまでもメソメソしてたら、マコトに笑われちゃうわ。まだまだ子供だって。そんなのは悔しいじゃない。」
有り体の事を言ってみるが、意外とリースには効果があったみたいだ。漸く何時もの顔に戻る。
「そうね。私達もマコト様に負けないように頑張らないと。私、教会に戻ってまた城下に行くわね。できる事をやらないとね。ありがとう、アレシア。やっぱ貴女は勇者様ね。」
手を振りながら走って行くリースを見送り、一人なのを確認する。
「一瞬だけ疑っていたわね、見破れないと思っていたけど、なかなか勘が鋭いじゃないの。でも隠蔽の魔法も上手くいったみたいだし……さて、この後はあの2人とのご対面か、ただの人間が偉そうに・・何が守ってやるよ、あの時の絶望は忘れない。何度だってあんた達を壊してやるわ」
メクレンでのアンデット騒動が知らされた数日後、私はある冒険者の2人と対面する事になっている。今度はどんな風に壊してやろうかと思案しながら、私は自室戻って行った。
----------
「なあ、ルシア。その格好どうにかならないか?」
馬上のルシアは、寝台にあった布を半分に切り、上半身と下半身に分けて身体中に巻いているだけ。一応持っていたフード付きのマントを羽織っているが、前面が大きく開かれており馬が動くたびに大きな胸も一緒に上下する。チェロは嬉しそうに上下する胸で遊んでいる。
「だって服は破かれちゃったし、これしかないでしょ?ご主人様の服を貸して貰えるならどうにかなるかもね」
全裸にマントなんてどんなプレイだ。何処か街か村によってルシアの服をどうにかしないとな。
「せめて前は隠しておけ。」
「おや?ご主人様もその気になった?ボクはいつでも良いよ」
「いい加減、ご主人様はやめてくれ、仲間に手を出す程落ちぶれちゃいない」
「だからボクは、どれ・「それ以上は言うな、命令でもなんでもいい、頼むから」
また暫く無言での行程が続く。当初は俺が馬上でルシアが徒歩だったが、ほぼ無理やりに交代させた。いざという時いちいち馬から飛び降りては面倒だし、彼女も戦えると言っていたが、あの格好ではな・・・
「ごめん。ボクが悪かったよ」
「わかってくれれば良い。それより、あれ、村かな?」
指の先には、周りを柵で覆われた場所がある。人が住んでいればいいのだが。
「なら、ここからはフードを深く被って顔を隠さないとね」
「前も隠しておいてくれよ。余計なトラブルは避けたいんだ」
「大丈夫。マコト以外の人間には興味ないから」
柵は木で出来ている様で、格子状になっており等間隔で先端の尖った木が並んでいる。騎馬の進入を防ぐ馬房柵みたいなものか。ルシアを馬上から降ろし入り口に向かって進んでいくと、見張りらしき男が二人立っていた。それぞれ槍を持ち、それぞれが銀色のプレートの鎧を着ている。
「止まれ。此処に何の用だ?」
進路を塞ぐ様に槍を交差させ行く手を阻む。
「私は王都より来ました。メクレンでアンデットが発生しているとの報を受け、その調査でメクレンへ向かっている所です。食料や同行者の品を補充したく寄らせて貰いました」
勇者から渡された手紙を見せる。どうやら信頼できるものと判断されたようだ。
「確かに王家の紋章があるな。メクレンまではもう少し距離がある。此処で準備をして行くといい。この村はロクザという。あまり問題を起さないでくれよ?それと一応そちらの従者の方も顔を見せてもらえますか?」
ルシアはフードを深く被っているので顔が見えにくいのだろう、頭は見せずに顔だけ覗かせる。
「おお、これは美しい。いや失礼しました。それではごゆっくり」
村というだけあって、家屋はそんなに多くないが、中央に井戸がありそこを中心に円形に広がっている。先ずは宿へと向かう。馬も連れてきてしまったが繋ぎ場があって助かった。宿の受付には老婆がおり此方に気づくと人懐っこそうな笑顔を見せる。
「いらっしゃい。旅の方とは珍しいね?宿泊だろ?一泊銀貨2枚ね。食事をつけるなら銅貨50枚だけど、どうするかね?」
王都と比べると少し高いが、俺が泊まった場所はギルド運営だから安かったのだろう、それ以来は王宮か野宿だったから久々という気になる。
「宿泊を。二人で銀貨2枚で良いのですか?あと、勝手に繋ぎ場を使わせてもらいました。そちらも必要なら支払いを。この……犬は……外ですよね?」
狼とは言えなかった。見た目も変わらないなら大丈夫だろう、ごめんな。
「繋ぎ場は使うものもいないから、使って構わないよ。悪いね、仔犬は外で頼むよ。その代わりその子のご飯は用意しよう。」
銀貨3枚で一泊と食事を1回用意してもらい、部屋へと向かう。2階奥の部屋は寝台が1つと服掛けと机と非常にシンプルな作りだった……寝台が……1つだと……あの老婆、余計なことを。
「さすが!わかってる人間もいるんだね」
「変えてもらう」
文句を言いに言ったのは良かったが、一人にさせる気か、最近の若いモンは、等ありがたくない小言を沢山貰ってしまった。正直これは戦闘よりもキツイ、仕方なく部屋に戻るとルシアは満面の笑みで出迎えてくれた。
「何でそんなに嬉しそうなんだ?」
マントを脱ぎ、長い茶色の髪を揺らしピコピコと耳が動いている。
「マコトの表情から部屋変えが無理だったんだろうなと思ったから」
正解だよ、でもこれで良かったかも知れないな。ルシアの事も良く知らないし得意な事、出来ない事を知っておけばこれからの旅にも役に立つはずだ。
「さて、ルシア色々と君の事が知りたい。答えたくなければ答えなくていい。構わないか?」
「いいよ。ボクの事何でも聞いて?出来れば寝台の中でゆっくりと……イタッ」
寝台の中に入ると、布を大きく広げ脇をポンポンと叩く。何処で覚えたんだよ……軽く頭を小突く。
「真面目にな。種族や得意な事、不得意な事、食事の事。これから共に旅をするんだ知っておかないとマズイだろ?だがその前にその格好をどうにかしないとな。まだ外も明るい、行くぞ」
再度マントを羽織り、フードを深く被る。嬉しそうに腕を組むのは良いが、当たってるんだよ……
「先に言っておくよ?当ててるの」
考えを読むな・・獣人はそんな事までわかるのか?
老婆に防具を買いたい旨を伝え、場所を聞くと、村の全体像を教えてくれた。井戸を中心に東側が今いる宿と民家のエリアと警備兵の宿舎がある。西側が品物を買うエリアだが余り品揃えは豊富じゃないらしい。メクレンはそれなりに大きい街なので、買うならそちらとも勧められた。
それでいいのか……




