第28話 戦う理由
今後キリの良い場所で主人公の過去などを記載して行こうと思います。物語の進行に支障が無いように少しづつではありますが・・・それでは、どうぞお楽しみ下さい。
街道沿いに小さな川流れていた。馬と仔犬に飲み水を与える為休息をとる。水は透明度も高く川底もよく見え魚の姿も確認できた。
「飲めると良いな。」
すくってみると、匂いもなく口に含むが問題ないようだ。仔犬は日の光を銀色の体毛が反射してキラキラとしており、川の中に入って遊んでいるようだったが、急に動きを止め上流に向かって吠え出す。
遠くから何かが流れて来るのが見える、徐々に輪郭を露わにするそれは人の死体であった。喉に刺さった剣の他にも至る所に切り傷もあり、戦闘があった事を予想させる。関わりたくもないが街道は上流に向かっているので行かざるを得ない。気配を探りながらゆっくりと街道を進んで行く。ある程度進んだ所で、戦闘の跡とおぼしき場所に出る。馬を降りて辺りの様子みると、壊れた馬車や何か大きいモノを引きずった跡が残っていた。周りには身なりを剥がされた人の死体もあり、盗賊か何かに荷物を奪われたと考えるべきだろう。馬の背で大人しくしていた仔犬が急に飛び降り、周りの匂いを嗅ぎ始めると、『ワンッ』ひと鳴きした後引きずった跡を追いかけ走って行ってしまう。
「おいおい、此処でお別れか?俺は行かないぞ?おーい……」
声をかけても戻ってこない、仕方ないか。馬に跨ると先に進むよう脇を蹴るが、動いてくれない。仔犬が進んだ先をじっと見つめている。そんなに仲良かったか?
「動いてくれよ。な?寂しいのはわかるが余りノンビリもしていられないんだよ。」
手綱を引いても動いてくれず、置いて行くわけにも行かないので此処は諦めよう。
「わかったよ。行くよ。しかし距離は離されただろうから見失ったらお前が諦めてくれよ。」
引きずった跡を追うが、木々に阻まれ騎乗の状態では無理そうなので、馬を引きながら跡を追って行く。それにしても何を引きずっているのかと疑問を覚える。大きさからして人が入れるくらいか、そこで仔犬の足にあった紙を思い出す、なら捕まって牢に入れられたまま今度は盗賊らに捕まったということか。
中の人も運がない。更に注意深く進んだ先で、一軒の山小屋のような場所を見つけた。引きずったのは牢の様で中の人は小屋へ連れて行かれたと見るべきだろう。しかしわざわざ引きずらなくても牢から出して連れて行けばとも思う。まあ抵抗されて逃げられるよりはマシなのか。
馬を離れた木に繋ぎ、小屋の様子を伺うが静かなモノで争う気配等は無い。気を失っているか既に事切れているのか、どちらにしろもう少し近づかないとわからないな。機会を伺っていた所に入り口から男が3人出て来る。髪はボサボサだし、着ている服もボロボロだがその手に持っている剣だけは比較的新しいようだ。
「今回の狩りは具合が良かったな、冒険者だが何だか知らねえが囲んじまえば大した事無かったな」
「商人共も多くはねぇが金もあったし、これで食い物にも困らねぇ。」
「だがあの奴隷の亜人、あれを早く味見してぇな。」
「お頭が終われば回してくれるだろ、あの乳には目を張るし顔もかなりのものだ。隷属の魔法も効いてるし抵抗出来ないのがなぁ、俺は抵抗している女を無理やりってのに燃えるんだが」
好き勝手に下卑た笑いを浮かべる顔には不快感しかない。外に出てきた3人とお頭と呼ばれる者、少なくても四人はいる。冒険者を囲んだという事からもう少し仲間が多いかもしれない。さて、どうやって助けに入ろうか、言ってしまえば関わりはないし、顔が気に入らない。
女性を無理にという考えも気に入らない。冒険者の敵討ちか?追放されたのに?女性を助けるか?助けた後はどうする?ならば気に入らないというだけで、俺は戦うのか?それはアイツらと何が違う?
強い力を振るうには責任が伴う、僕は責任の、その重さに耐えられる力が欲しい。だから力を欲するんだ。
一瞬以前の世界で知り合った人物を思い出す。あの時も同じ様な事で迷っていたな……結局答えを見つけ出せないままだった。
すると突然草むらから銀色の仔犬が飛び出してきて男三人を威嚇する。
『ワンッ!ヴーッグルゥ』
「なんだぁこの犬は?」
「中々綺麗な毛並みじゃないか、剥いで売れば金になるかも」
男の一人が仔犬を蹴り上げると軽く宙に舞い、地面と激突するも必死に立ち上がり威嚇を続ける。
ニヤニヤと笑う顔は本当に気に入らないが、これで理由が出来た。隠れるのをやめ前に進む。
「なんだてめぇ!どこのモンだ!」
男の声を無視して仔犬を庇うように前に立つと治癒の魔法をかける。
「おい!無視してるんじゃねぇ!なにモンだって聞いてんだよ!こっち向きやがれ!」
剣を首に突きつけられるが、小手で弾く。
「俺の相棒の友達だよ、コイツは。やってくれたじゃないか。冒険者を囲んだって?当然やられる覚悟もあるから、やってるんだよな?」
男の一人の肩を軽く掴み、鳩尾に打撃を加えると苦痛に顔を歪ませ嘔吐しながら倒れる男の頭を踏みつける。他の二人が慌てて剣を構えるが、遅すぎる。左の男の顎を拳で顎を突く。急激な首の変化で脳が揺らされ糸が切れた人形のように前のめりに倒れる。
「弱いな?本当に冒険者を倒したのか?嘘だろ?」
右は手首を捻り、締め上げるとあっさり剣を離してくれた。今度は手のひらで顎を突き上げる、こちらも糸の切れた人形ごとく倒れた。仔犬は治癒魔法が効いたのか、足に擦り寄ってくる。
「ゴメンな。助けるの遅くなって、いつまで経っても何かするのにイチイチ考えてしまってな。中の女性がご主人様なのか?」
頭を撫でても『クゥーン』としか鳴かない。
「まぁいいさ。此処まで来たらやってやる。勇者の近衛騎士だしな、最初から思い出せばよかった」
騎士ならば、弱きを助けるだろう。騎士道とは縁が遠いが今はそれを理由とさせてもらおう。
小屋の入り口を蹴り飛ばすと、大きな音と共に扉が破壊され中には仲間と思わしき男達が驚愕の表情で此方を見ている。
「ざっと十人か、むさ苦しい。しかも臭い。不愉快だから消えてくれ。」
青い刀身を大きく振るう。甲高い音と共に水の礫が襲いかかる。礫は男たちの四肢や胸、至るところに風穴を開ける。うめき声や息も絶え絶えの男を無視しつつ、比較的軽傷な者を探す。
「おい。頭は何処だ?言わないのなら殺す、何処にいる?」
左奥の扉を指差す。あそこか……なんて真に受けるほど純粋じゃない。指を指す反対の手を剣で貫く。
悲鳴を挙げるが、質問を続ける。
「もう一度聞く。頭は何処だ?嘘は良くない。何処にいる?」
突然後ろから大きな殺気を感じて、左に飛ぶ。
「お前が死ね!」
躱した場所に剣が叩きつけられる。他とは違う。大きく両刃の剣、こいつが頭か。向き合うと他の盗賊とは違い、黒の髪は短くヘッドギアをつけている。両刃の剣を両手でもち、革のような鎧の上から銀色の胸当てをしている。明らかに装備の質が違う。
「てめぇは!あんときのクソヤロウ!」
剣を向けられるが、生憎と覚えてない。だいたい盗賊と面識なんて……あの馬車のときか!?
「随分と久しいな。あの弓の使い手は何処行った?あれは相当な手錬だろ?」
「お前にゃ関係ねぇだろ!あの襲撃さえ上手くいってりゃ今頃は!クソ!さっさと死ね!」
剣を振り回してくるが、明らかに慣れていない様子だ、それにコイツは魔法を使うんじゃないか?近接戦では魔法を使う隙を与えなければいい。すると奥から別の男が飛び出してきて、魔法を放った。
「燃えろ!業火の中で下級火炎魔法」
その男は目の前の剣を振るっている男と同じ顔をしていた……
お楽しみ頂けましたでしょうか。これからも皆様に楽しいと思って頂けるひと時を届けられる様に頑張っていきます!




