第27話 北へ
ブックマークが増えました!ありがとうございます!!また昨日のPVも投稿を始めてから最高記録となりました。見てくれている皆様本当にありがとうございます!このお話から3章となりますお楽しみください。
全くツイていない。この時期は雨が多いらしく水分を多く吸ったフード付きマントは重く視界も良くない。馬も心なしか疲れているようだ。王都を出てから五日急ぎメクレンへ向かわなければならないが、予定よりもだいぶ遅れている。
「治癒の魔法が使えるようになったのは、ありがたいけど」
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王都を出る際見送りに来てくれたのは、アレシアとリースだけで他にはいなかった。早朝というのもあるが少々寂しかった。かなりの人間に嫌われていたのかと実感してしまう。
「それでは、行って参ります。勇者様、聖女様ご壮健で。」
リースは涙目で何度も鼻を啜っている。アレシアはそんな彼女を幾度となく慰めている、これが今生の別れではないのだからと。
「勇者様、聖女様、お二人にお願いがあるのですが、聞いてもらえないでしょうか?」
二人は顔を見合わせると快諾してくれた。
「ありがとうございます。では聖女様には治癒の魔法を見せて頂けますか?」
軽く指を斬り、リースの前に出す。
「良いですけど、何故か聞いても構いませんか?」
もっともな話だ。
「簡単に言うと、治癒の魔法がどのように怪我を治すのか見てみたいと言うのが理由ですね。何度か怪我を負った時治癒の魔法を受けた事はありますが、『みた』事はないので。」
首を傾げるリースの頭の上はハテナマークでいっぱいだろう。
世界が違えば魔法の効果や発動も異なる。魔力があっても使い方が分からなければ魔法は使えない。中々に面倒な仕様だ。唯一便利だと思うのは、発動を視認する事。保有魔力には個人差があるが視認出来ればその魔法が使えると言う事。因みに俺の保有魔力はそれなりにあるが、適正は余り無いので使えても初級が良いところ、要はいつまで経っても駆け出しの魔法使いの様なものだ。
「彼の者に癒しを、巡れ、治癒魔法」
両手を傷口に添えると、優しい緑の光が徐々に傷口を塞いでいく。光が収まると完全に元通りだ。
「ありがとうございます。流石聖女様ですね。傷が見当たりませんよ。」
「簡単な治癒ですから、これくらいならいつでもどうぞ。」
微笑む顔は本当に慈愛に満ちていて、アレシアと共に成人すれば美しくなるだろうなと思う。
「私は何をすれば良いの?攻撃魔法でも見せれば良いの?」
「それも嬉しいですが、今はこれを見て頂きたい。」
攻撃魔法も見られるにであれば嬉しいが、こちらが優先だ。出会って来た人の中では一番適合者だと思われる。首飾りを外すと勇者に渡す。一瞬勇者の表情が強張る様に見えたが……気のせいか。
「何?くれるの?余り綺麗なモノじゃ無いわね。これがどうしたの?」
「あげませんよ。何も感じませんでしたか?」
返してもらうと、リースが見たがっている様に覗き込んでいるので彼女にも渡す。
「そう?綺麗な色の宝石だと思うわよ?アレシアは訓練ばかりしてるから。」
「良いのよ。そういう女の子らしい事はリースに任せるわ。私はこっちの方が好きなの。」
腰の剣を抜き振りかざす。リースから首飾りを返してもらうと少し首飾りに違和感がある、なんだ?何かに覆われている様な、大きさや重さ変化はない様だが……
「マコト、そろそろ出立よ。名残惜しいのはわかるけど」
アレシアの言葉ですっかり話し込んでしまったと思い、用意して来た馬に跨る。騎乗は以前に習得しているので問題なく乗れる。
「改めまして、行ってまいります。」
「マコト様、道中お気をつけて」
「マコト、頑張ってね。」
二人に見送られ、一路メクレンへと馬を駆る。
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少し小雨になったようだが、相変わらず視界がよくない。首飾りを手にとって見る。二人から返してもらった際の違和感は消えているが、何だったのだろう。今はなんとも無いのなら気にするだけ無駄か。
「そろそろ視界が利かなくなってきたな……今日はここまでにするか。お疲れ、明日も頼むな」
馬の首をなで、声をかける。街道よりはずれ、木に馬をつなぎ水場を探すがそう簡単には見つからない。
持ってきた水は馬に与え、木に登り辺りを見回す。夕刻を少し過ぎたあたりだろうか空の色が暗く染まってきている。下から突然嘶きが聞こえた。飛び降りてみると周りを囲まれているようだ。
馬を落ち着かせ様子を伺う。
「四……いや五匹か、この辺の魔物は……なんだっけ?ゴブリンじゃなかったような……」
『グルルルルゥ』
黒い犬のような動物がゆっくりと近づいてくる。
「そうだ、ダークウルフ、狼の魔物か集団で狩りをする魔物だったっけ」
王都周辺の魔物に関しては勇者の自室や騎士団で記録を見た事があったので覚えていた。
『グルゥ……アォーン!』
一匹の遠吠えと共に襲い掛かってくる。両手で剣を抜き、先ずは飛び掛ってくる一体を青い刀身で斬りつける。頭部から右脇にかけて両断され息を断つ。
「相変わらず切れ味が凄まじいな、さあ!次行くぞ」
移動手段を襲わせるわけにはいかず、馬を背にして戦う。左右から飛び掛ってくるが右のウルフとの距離を詰め青い刀身で切り裂き、左のウルフには赤い刀身を振るう。炎の斬撃がもう片方を焼き尽くす。
息つく暇も無く後方からの攻撃には片足を軸に回し蹴りを叩き込む。攻撃を受けたときの鳴き声は犬みたいだな……取り囲んでいたウルフは片付けたが、まだいるな。馬は無事のようだ。さっさと離れるほうが無難かな?一歩馬に近づくと、奥の草むらが妖しく音を立てる。
「まだいるのか?焼くか」
赤い刀身の剣を振りかざし、出てきたと同時に斬撃を放つ準備に入る。
----ガサガサ----
『クゥーン』
出てきたのは、綺麗な銀色一色の、犬?狼?しかもまだ子供のようだ。テコテコと寄ってきて足に擦り寄る全く警戒せず、むしろ慣れている感じがする。
「まさか……お前の親を……悪かったな、だが馬を殺されるわけにもいかなかったので……すまない」
だが、全く違う毛並みが生まれて来るものなのか?ダークウルフは真っ黒って事しかわからない。
しゃがみこみ頭を撫でると嬉しそうに目を細め喉を鳴らす。
「これ、食べるか?」
脇の袋に手をいれ、干した肉を取り出すと口の前へ持っていく。しっかり噛み締めながら租借しているところを見るとどうやら大丈夫みたいだ。
「お前、足に何つけているんだ?」
右後ろ足に紙が括り付けてある。解いて中を見てみると
「森……人間……つかまって……」
かなりの部分が雨で濡れて消えてしまっていて良く判らないが、森で人間に捕まった人がいて助けを求めてこの犬に託したといったところか。
「ウルフとは無関係なのかね?ご主人様は助けを求めているのか?」
聞いては見るがクゥーンとしか鳴かない……当たり前か。
「今日は馬の休息の為ここで野宿だが、お前はどうする?……って聞いても仕方ないか。俺も休むからお前は好きに行きな。」
警戒を解かずに目を瞑る。幸い他の魔物に襲われる事もなく、朝日に照らされ目を覚ますと青い空が広がっている。今日は距離を稼ぎたいと思いつつ馬の様子を見ると、昨日の銀色の仔犬が足元で戯れており随分と仲良くなったモノだな。
「さあ、今日は距離を稼がないとな。よろしく頼むよ。」
馬に跨ると仔犬がキャンキャンと吠える、着いて来たいのか?置いて行っても魔物の食料になってしまうのは可哀想かもしれない。抱え上げると行儀よく隙間に座れていて賢いなと感心する。
「仲間も増えたし、そろそろ行くか。」
まだまだメクレン迄は遠い。小さな同行者を加え遅れを取り戻すかのように馬を走らせる。
お楽しみ頂けましたでしょうか、これからも皆様に楽しいと思って頂けるよう精進していきます。
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