第21話 望まぬ再会
ブックマークが増えました!本当にありがとうございます!徐々にPVも増えてきて有難い思いでいっぱいです。1日1話を目標に頑張っています。
物語では、いよいよあの人と再会を果たします。お楽しみ下さい。
牢屋に入れられて何日が経っただろう……あの夜ギルドの地下にある牢に入れられ、日に3回硬くカビの生えたパンを投げ込まれる以外、接触らしいものは無い。処遇が決まるまでとメルフィーさんに言われたが決まらず餓死を狙っているのか?魔王の手先と疑いを持つなら餓死は選択肢には入らないと思う。それよりもマスターが言っていた言葉が気になる。
「勇者。彼女は化け物並みに強い。産まれ持った力だけど」
この世界に来たばかりのときに見た少女だろうか?可能性はある。適合者として産まれ、何かの拍子に力を獲た。それで現在に至る。だが何故少女が勇者と判った?化け物並みに強いから?両親が特別な人間だから?それはありうる。血筋か何かで功績のある人物の子供が強い力を持てば、魔王のいる現状勇者と判断されるだろうが……もう少し勇者の情報が欲しいな。
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「勇者殿、そろそろ休憩にしましょう。お疲れでしょう?」
王宮の人達は私を名前で呼ばない。私が勇者だから?違う。彼らは私の機嫌を損ねないように振舞っているのだ。名前で呼んだら気に触るかもしれない、だから勇者殿と呼ぶのだ。
「はい。判りました。ご指導ありがとうございます」
外見は八歳の女の子。金髪蒼瞳でドレスに憧れをもってキラキラしたものが大好きで好奇心旺盛、聞き分けも良く、それでいて皆に愛されている。アレシア=ベイウッドはそういった女の子である。
魔法の講義を受けてはいるが、この宮廷魔法使いも自分よりかなり格下だ。ためになることなど一つもない。実戦で使える魔法に特化したほうが効率がいいしその術はすでに知っている
それでも尚、講義を受けるのはある一つの目的のため。
「今日はここまでにします。また明日同じ時間に。それでは、勇者殿失礼します」
男はそう言って部屋を出て行く。お見送りも忘れずに。アレシアはそれが出来る女の子なのだから。
「隠蔽の魔法、それをより高度に、何重にも、バレたら終わりよ。表情もそう、ただ目の前にあるのは石、何の変哲も無い石。珍しくも無い。きっと出来る」
一人きりの部屋で自分に言い聞かせるように何度も何度も繰り返し呟く。あの人は何処まで掴んでいるのだろう、冒険者になったのだから勇者の事は聞いているとは思うが覗き見るだけは到底判らない。
そんなことを考えていると金属音を響かせ誰かが走ってくる。
「勇者殿!おられますか?勇者殿!」
ドンドンと扉を乱暴に叩く。急用だろうか?今はその時ではないだろうに……
「なんですか?聞こえていますよ。もう少し落ち着いてください」
「も・・・申し訳ありません。ですが急の用件です。魔王の手先と思われる男を捕縛したと情報がありました!間もなく騎士団長もこちらに来られます。どうかご助力を」
魔王の?手先?男?捕縛?まさか……
「わ……わかり……ました……さすがにドレスでは向かえません。着替えをしますので少々お待ちください」
一旦扉を閉めると、衣装がある部屋へ向かいしっかりと扉を閉める。様々なドレスが掛けられておりその奥には簡易的な装備品が置いてある。そこまで行くとプッと噴出してしまう。我慢の限界だ。
「あははははははは、なんで、もう、おっかしいあはははは、」
涙を浮かべながらお腹を抱えて大笑いする。笑って腹が痛くなるなど久しぶりだ。
「予想外よ、何で捕まってるの?あ~もう、お腹が痛い……なんなのよ今回は」
笑いすぎて息切れや咳込みまでしてしまった。それでもなんとか装備品を身につけ衣裳部屋を出る。
此処から先はあのように笑えない。いつものアレシアにならなくては……
「お待たせしてすみません。どうぞ」
扉を開けると先ほどの兵士と装飾の鎧に身を包んだ団長、グラン=マクサが姿勢を正していた。
「早速ですが、叔父様?魔王の手先を捕まえたとか……」
「勇者殿、その呼び方はお止め下さいと言ったはずです。私のことはグランで結構です」
「ですが、王宮に来たばかりの時に心細いだろうと心配してくださって、叔父のように接して構わないと言ってくれたではありませんか。」
それ以来グランのことは叔父様と呼んでおり、その事が噂が噂を呼びグランの隠し子とまで言われてしまった。そんな事があってからは叔父様呼びは禁止となってしまった。
「先ほど冒険者ギルドより使いが来ました。魔王の手先と目される男は騎士団のコインを所持しているとの事ですが、そのコインは私がある旅人に渡したものなのです」
「どういうことですか?」
「先日、聖女様をお連れしているときに盗賊に襲われました。その旅人のおかげで襲撃は回避され王都へ向かうとの事でしたので、実力もあると感じた為コインを渡し、騎士団本部へ来るように言い渡しましたがその襲撃すら、その男の差し金であったのではというのがギルドの言い分です」
危うく噴出しそうになるが必死に堪える。本当におかしな人だ。さっさと本部へ来ればこのような事にならなかったのに……しかし、このままでは……仕方が無い。仲間の線で行こう。
「おじ……グランさんから見てその男性は、どのように写りましたか?」
どのように答えても彼に会う方向に持っていける自信はある。だが今後を考えればグランの印象は悪くないほうが良い。
「正直、そのような男には見えませんでした。ですが、魔王の手先となれば話しは別です。一刻も早く手を打つべきでしょう。陛下も勇者殿に一任すると仰せでした」
印象はまずまずと言ったところだ。これなら問題は無いと確信した。十歳にも満たない女の子にそんな大事を任せるといった陛下の意思はよく判らない。
「では、その人に会いに行きましょう。勘ですけど、魔王の手先ではないと思いますよ」
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ゆっくりと地下に下りて来る足音は一歩一歩を確かめるようだ。薄暗いのだから仕方ない。食事といって良いのか不明だがその時間でもないとなる……といよいよ判決が下ったか。
「マコトさん、貴方の処遇が決まりました。出てきてください。マスターがお待ちです」
淡々と話すメルフィーさんの表情は地下ではよく見えない。牢の扉が開きゆっくりと出ると、狭い場所から解放されたという思いが全身を巡る。大きく伸びをすると彼女がほんの少し後ろに引いた。
「臭いますか?」
「マスターがお待ちです。急いでください」
答えては貰えなかったが臭うんだろうな……後を付いて2階へ上がる階段から外を見ると夕刻に近い時間のようだ。他の冒険者からも視線を集めてしまう。王都では冒険者の生活も終わりだな……また普通の旅人として世界を回ろう。王都以外でも町が無いわけじゃない、何とかなるさ。今までもそうだったのだから。
「それと、部屋に入ってからは失礼の無いように。いいですね?」
部屋の前に着きノックをすると先日の軽い感じではなく、威厳たっぷりの声が返ってきた。
「入りなさい」
部屋の中は夕日で染まっており、ソファには鎧姿の男が座っており、その顔には見覚えがあった。
「やはり貴殿か。マコト殿、覚えておいでか?盗賊の襲撃の際には世話になったな。グラン=マクサだ」
騎士団団長のグランだ、やはりあのコインが効いたのか?グランが手を握ってくる。ふと後ろに誰か隠れているのか、金髪がグランの腰辺りから、見え隠れしていた。
「グランさん、後ろに誰かいるのですか?」
後ろを覗き込むと、悪寒が全身を駆け巡る。まさか……彼女は……あの……熊を切り裂いた少女ではないのか?金髪を夕日に反射させ、赤い血の様に見える。
「初めまして。私はアレシア=ベイウッド。勇者です」
その後の言葉は恐らく俺にしか聞こえてないだろう。暫くの間、耳に残ることとなってしまった。
「あいたかったよ」
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