第20話 疑念
20話達成しました!物語的にはまだまだ序盤ですが、この話から進行の遅かった物語が加速して行きます。また主人公の周りにも若干の変化が現れていきます。どうぞお楽しみください!
ギルドに入る頃には、すっかり夜になっており、その日の仕事を終えた冒険者達でギルドは賑わっていた。
そんな中でも五番受付の行列は変わっていない。刺さる様な視線を無視して、先頭まで行き担当者に依頼する。
「メルフィーさん、負傷者がいます。何とかなりませんか?」
「!? わかりました。どちらにいらっしゃいますか?皆さんもお願いします」
即答できるとは流石だ。奥に向かって声を掛けると手の空いているギルド員の人達がニックらを運んでいった。
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一旦は宿へ戻るように言われ部屋で待機をする。ニック達も命に別状が無い様でひとまず安心だ。ある程度冒険者としてのクラスを上げてから情報収集を目標としていたが、今のままでも大丈夫かもしれない。最低クラスではあるが冒険者なのだから、明日色々と聞いてみようと考え、横になろうとすると、部屋のドアがノックされる。
一瞬警戒するが、初心者をギルド運営の宿で襲撃するもの無謀とも思うが……僅かに殺気を感じる。
「はい。どちら様?」
「マコトさん、メルフィーです。マスターからお話しがあるとの事ですのでお疲れの所申し訳ございませんが、ギルドまでお越し下さい」
扉を開けると、険しい表情で何故か鎧や剣で武装したメルフィーさんが立っていた。殺気は彼女か、何故か嫌な予感しかしない。抵抗すれば情報収集どころじゃないし……ここは従うのが賢明のようだ。
メルフィーさんと共に2階の一番奥の部屋へ連れて行かれる。ここがギルドマスターの部屋というわけか、そう言えばあの褐色の女性がギルドマスターなんだよな、もっと厳ついおっさんを想像していたが……
「此方がマスターの執務室です。担当者である私も同席します。マスターの質問には嘘偽り無くお答えくださいね」
今回の顛末を聞きたいのか?それなら彼女の武装が気になる。考えられるのは今回の騒動は俺が主犯と思っている。だからこその武装、というか、冒険者同士でのいざこざに此処までするかと疑問も残る。
「判りました」
短く答えるが、返事は無く部屋をノックする。
「ほ~い。開いてるよ。どうぞ~」
何とも緊張感の無い答えだ。
執務室は想像よりも狭く、立派な机に4人がけのソファ。調度品も少ないが大きく目立つのが剣と杖のマークが入った旗である。ギルドマークのようなものか。
「とりあえず掛けてよ。マコト=レイトバード君」
「では、遠慮なく」
ソファに座るが、メルフィーさんは俺の背後に立つ。やはり殺気を感じる……
「背後で剣を突きつけられて、話を聞かせろっていうのは穏やかじゃないですね」
「いやいや、そうだね。うん。君の言うとおりだ。メル、剣を降ろしていいよ、彼は暴れたりしないと見た。大丈夫、心配しないで」
そう言うと対面にギルドマスターとメルフィーさんが座る。
「さて、聞きたいことは色々あるけど、まずはあの二人のことだ。正直に話してくれると助かる」
森でゴブリンに連れられていたニックを助けたこと、オーク3体と赤黒いオークがいてユイカを襲ったのだろう。ニックが飛び出して気を失ったのでポーションを飲ませ、オークを全て殺し、ユイカにもポーションを飲ませ、連れてきた……と嘘偽り無く答えたが、どうもメルフィーさんの疑いの眼差しがキツイ。
「赤黒い肌のオークってことは亜種じゃないか?それを君一人で?まずそれが信じられない」
「信じないのならそれでいいです。所で亜種とは何ですか?」
それにはメルフィーさんが答える。
「魔物は通常種と亜種があります。亜種とは異なる特徴を持った魔物で通常種の数倍は強いとされており、ギルドではAクラス以上の冒険者パーティーに討伐依頼を出します。それをDクラスのあなたが一人でというのは当然信じられません」
誰が見ていたわけでもない。ましてやニックらは気を失っていたから証明も出来ない。ギルドマスターは目を瞑って考えているようだが、机を両手で叩くと立ち上がった。
「やはり、私は騙し合いとか駆け引きは苦手だな。ハッキリ言わせて貰うよ」
「そのほうが俺も助かります。」
ニヤリと笑った気がした、ギルドマスターは頭で考えるより行動で示していくタイプなんだろうと思う。あの冒険者からの人気ぶりもそれに由来するのだろう。
「君は魔王の手先じゃないかって疑いがある。初日から亜種に出会う。それはいい。そんなこともあるかも知れない。だが、一人で亜種を倒せるか?そこが疑問だ。逃げてきたならなんとなく判るがそれでもオークらがユリカらを置いて逃げるとも思えない。ヤツらは雌を攫って繁殖に使うと有名だ。更に彼らは有望だ。今は経験も少なく頼りがいは無いがきっと冒険者として大成するだろう。あの勇者パーティーにすらなりえる逸材だ。ならばこう考えるのが自然じゃないか?理由はわからないが君が仕組んだこと。それなら全て話しが通る」
勇者パーティーと言ったか?魔王がいるのなら、それも不思議じゃないが……どの世界にでも英雄、勇者、賢者などと呼ばれる人物が適合者であったから可能性は非常に高い。
「では、なぜ彼らを助けギルドまで運んで来たのでしょう?仕組んだことなら生かしておく必要も無いかと。それにひょっとしたらどこかで剣の修行をしていて最初からAクラスくらいの実力があったと考えては貰えないのでしょうか?」
「マスターの仰るとおり、理由がわかりません。修行をというのは判りますが、貴方の剣の腕は正直そこまでとは思えません。これでも元Aクラスですから」
なるほど。メルフィーさんが元冒険者でAクラスだから彼女をパーティーに加えようとあの行列ということか。剣の腕に関しては言われる通りだしな……
「では、俺はどうなるんですか?処刑なんて事なら全力で逃げますけど」
「とりあえず、調査だよ。君の言う事が正しいのなら謝罪もするし、それ相応の事で対処する。だが疑いが晴れないようなら、一生牢屋か追放、決定的な証拠が出れば君の言う処刑だね」
あっさりと言ってくれるが、そんな事は遠慮したい。此処で暴れて逃げるか?そうしたいがそれだと勇者と逢う事が出来そうにない。そうだ、入り口で使ったコインは使えないだろうか。
「では、これは如何ですか?騎士団の団長から預かったものです。これを本部まで届けるように言付かっています」
コインを渡すが、手元に戻ってくることは無かった。
「確かに騎士団の物に間違いない。だがそれすら仕組んだことなら?これはギルドが責任を持って返しておこう」
ですよね。変なことばかり思い通りになるし……
「判りました。牢屋にでも何でも行きますよ。最期に二つ聞きたいことがあります。それ位は良いでしょう?」
「良いよ。何でも聞いてくれ。ただし、君を自由にする事はないけれど」
「それ位は判っています。一つは此処最近急激に力を持ったヤツを知りませんか?例えば今まで力を持っていなかった貴族や冒険者がいきなり力をつけたとか……そしてこの首飾りを見て何か感じませんか?」
さすがに首飾りを取られるのは困るので、遠目からだが、適合者ならわかるはずだ。
何度か二人で目を合わせたりするが、疑問に答えてくれたのはギルドマスターだった。
「首飾りは、綺麗だなと思うが、私もメルもそれ以上は何も思わない。それと急激に力をつけたって言うヤツなら知ってる」
!? まさか此処で情報を貰えるとは……これならさっさと牢から逃げて逢ってしまおう。
「誰ですか?教えてください。何としても逢わなければいけないんです」
マスターの指が俺を指す。後ろは誰もいないはずだ。まさか気配を消す能力があるのか?その位の力なら取得できてもおかしくない。慎重に後ろを振り返り目を凝らしても何も見えない。
「君だよ。マコト=レイトバード。急に現れて亜種を倒してって普通の冒険者じゃ出来ないことだ」
……そうですか。
剣を取り上げられ、両手を鎖で繋がれる。余程強固なのだろう何度か力を入れてみたが切れる気配も無い。
メルフィーさんに先導されて部屋を出て行く。扉が閉まる前にマスターの言葉だけが耳に残った。
「君の答えになるかは判らないが、急激に力をつけたのは君以外知らないが、王都にいる勇者。彼女は化け物並みに強いよ。まあ彼女の場合は産まれながらにして持っていた力だけどね」
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