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ライバル宣言?

「…………」


「…………」


 かれこれ俺と花菱さんを対面させて20分ぐらい経過しているが口を開こうとしない。

 ちなみに俺は喋ることを許されてません。誰から?もちろん香夜ちゃんです。

 向こうから話し始めるまで正座してろとのことです。すいません、そろそろ限界です。


「ちょん」


「ぎゃああああ‼︎‼︎」


「喋るなって言ったのに何喋ってるんですか」


「不可抗力だと……思う」


 つーか誰だ足を突いたやつは。んなことやる奴は一人しかおらんが。


「あはは、お兄ちゃんだらしないなー」


「よーし、お前も30分正座だ」


「お兄ちゃんより長いじゃん!」


「反省しろ。その後に足を突いてやる」


 恵に正座をさせたところで向き直る。喋るなと言われたが、ここまで喋ってしまってはどうしようもない。


「コホン。とりあえず、先ほどのことは平身低頭謝らせてもらう。あとは踏みつけるなり、蹴っ飛ばすなり、ボコボコにするなりしてください」


「煮るなり焼くなりって言わないんですね」


「怖いじゃないか」


「言葉の比喩に怖がらないでください」


「お望みとあれば用意します。鉄釜を」


 人が入れるんですかね?


「ご慈悲は……」


「人の裸を見ておいてあるわけないです。責任は取ってもらいます」


「責任……とは?」


「それは……その……ごにょごにょ」


「花菱さん。言うならしっかり言った方がいいです。この先輩は言葉を表面上通りにしか受け取らないので」


「なんかそれはそれでイヤだ……」


「……まあ、何はともあれ、できる範囲のことなら甘んじて受け入れよう。俺の方が全面的に悪かったことは認めます」


「では、先輩。責任とって私を引き取ってください」


「ごめん。それは無理」


「できる範囲でしょう⁉︎」


「いや、昨今のゲームで下着を見られた、見られないで引き取る云々には発展せんのだ」


「ゲーム基準で考えるな‼︎」


「あとで回収はするけどな」


「なんの話してるのよ……」


「ゲームだからな。一度恋仲となったことはなくなってその前からプレイが再開する。ある一定のところからスタートしてるんだ。そこから選択肢次第で誰を攻略できるのか分岐してくる」


「……この人は何を言ってるの?」


「こういう人ですから。それでもいいというのならどうぞ。許容するのは辛いと思います」


「じゃあどう責任取るのよ‼︎」


「なかったことにすれば全て解決」


「そういってなんか不純なことやるんでしょ!私の下着姿思い出して悶々としてるんでしょ!」


「不純とは?さて、いかなるものか」


「最低!この人!」


「だからこういう人なんだよ……」


「なんで東雲さんはこの人のこと好きなの!」


「ちょっと……ここで言うのは躊躇うかな……」


 なぜ躊躇う。


「ジェラシーーーー‼︎‼︎」


「ちょっとあまり叫ばないでくれ。近所迷惑だ」


「誰のせいだと思ってるんですか!」


「君はもっと寛容な心を持つべきだ」


「あなたはもっと自重しろ!何年下の後輩に卑猥なこと言わせようとしてるんですか!」


「ませてんなぁ。下着はあんなに可愛いのに」


「思い出すなぁーーー‼︎」


 なんかね。小さいし、俺の言うことにノリよくツッコんでくれるから、からかいがいがある。俺のスキルが活かされる日がくるとは思わなんだ。

 唯一ツッコミを入れてくれる奴は俺に致命傷を毎回与えかねないからな。

 しかし、このままでは怒って出て行ってしまうのは時間の問題だ。火に油を注ぎすぎた。もう、火事寸前。


「下着姿のことは置いといて」


「そこが一番の問題じゃーーー‼︎」


「え?じゃあ、思い出してもいいと」


「やめろーーー‼︎」


「先輩。いい加減にしないと私が怒りますよ」


「……すいませんでした。からかいがいがあり過ぎて」


「……先輩、前々から思ってましたけど性格悪いですよね?」


「根が正直過ぎるんだ。性格が悪いというのは天王洲先輩みたいなことを言う」


「あの人を同列に語るのは無理難題ではないかと……」


「もー佐原先輩はなんなんですか‼︎人をおちょくって!」


「いやあ、俺は可愛いものを相手にするとこんな感じだから」


「…………」


 あれ?黙っちゃった。


「私……可愛いですか?こんなに先輩に対して口悪く言ってるのに」


「俺は周りの女子から毒吐かれまくりだから、花菱さんのぐらいなら可愛いもんだ。なんなら、香夜ちゃんから1日一回は罵倒されてるから」


「私はなんの比較対象に出されてるんですか」


「耐性がついてるって話」


「……本当は私こんな感じなんです。ちょっと頭に血がのぼると相手を散々貶しちゃったりして。中学だとそれで調子に乗ってるとか言われて……女子って怖いです。私だって悪気はないです。自分から言うことないです。ちょっとバカにされると見境がなくなっちゃって……だから、バカにされないように私頑張ってるんです」


「背は小っちゃいみたいだけど」


「それを言うなー‼︎人の遺伝子までバカにするの⁉︎」


「ま、それぐらい元気ならそれでいいだろ。おんまり怒りっぽいのはよろしくないけど。冗談を笑って受け流せるぐらいにはなったほうがいいな。怒りっぽいと子どもっぽく見えちゃうし、自分が疲れちまうからな」


「……なんか先輩ってあまり怒らなさそうですね」


「女の子に甘いだけだ。だが、妹には厳しくいく。さて、時間だ恵」


「ひ、ひえ……ご勘弁を……今、すでにヤバい状態なのです……」


「俺は容赦せん」


「ひぎゃああああああ‼︎」


 恵は悶絶してるようだが、まあ、適当に放っておけばいつか復活するだろう。同じ苦しみを味わうがいい。


「あの……佐原先輩」


「ん?」


「……私の性格直すの協力してくれませんか?」


「俺は、花菱さんはそのままでも十分可愛いと思うけど……ま、それでも直したいなら協力することは厭わないぞ」


「ほんとですか?」


「まあ、責任は取るって言ったからな。他にもなんか困ったことあれば言ってくれ。嫁としてはもらえんけど」


「そこにオチを持ってこないでください!分かりました!東雲さんに負けたくないですから先輩を振り向かせてやります!」


「……私に対する挑戦状ですか?」


「だって付き合ってないんですよね。なら、チャンスならいくらでもあります!やってやります!」


「……告白?」


「……それは……また、おいおいと……」


 随分と情けないライバル宣言だった。

 恵はといえば聞いてはいるのだろうが、未だ悶絶していた。

 ……いっそのことハーレム路線にでも転向してやろうかしら。

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