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プロローグ
「ウェエエイ、やったぜ、俺たちの赤ん坊だ!!」
徹はそう叫んだあと、急に静かになったかと思うと、その端正な顔から大粒の涙を流した。
「母さんが亡くなって火が消えたような我が家にさ……恵が、来てくれて……俺たちの赤ん坊まで……」
恵は疲れで朦朧とする意識の中で、彼と出会ったあの春のことを思い出していた。
病院の白い壁が、北アルプスの山々の雪に重なる。
松本の入学シーズンは春の訪れを感じる桜の季節には程遠い。春なんて名前だけ、芽吹き前のグレーな風景。その稜線に残雪の白が乗る、そんなグラデーションだ。
そんな色彩の薄いキャンバスに広がった、あの騒がしい声。
「俺は東京でビッグになるぜ!だから勉強頑張っちゃおっかなー」




