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勇者と魔王。異世界転生者と闘う!  作者: 藤原ぴーまん
巻の壱/異世界転生者・ブラック社長編
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TURN0/異世界転生者、現る!

 ──【勇者タロー】は窮地に瀕していた。


【異世界転生者/ブラック社長】による渾身の一撃が鳩尾を穿ち、勇者装備のひとつ・勇者の鎧を粉々に破砕する。

 吐血。その勢いのまま勇者は吹き飛んでいき、壁を貫通。立ちこもった粉塵の中に姿を消す。

 一方、徒手空拳を打ち放ち終えたブラック社長はしばし残心を整えた後、徐々にその姿勢を楽にする。

 戦場には激しい戦闘の痕跡が多分に残されていた。

 にも拘らず、異世界転生者/ブラック社長はまったくの無傷。

 衣類が乱れた様子もなく、その面持ちには余裕が満ち溢れていた。


「──時は金(Time is )なり(money)。口程にもないとはこのことだ」


 異世界転生者/ブラック社長は明らかな蔑みを込めて嘲笑する。

 整髪料で固められた黒髪のオールバックは長く、首の付け根まで伸びている。

 その出で立ちはまさに()()()()()()()()()

 パリっとした黒尽くめの高級スーツに革靴。そして左手首には腕時計。目つきは鋭く明察秋毫。清濁併せ呑んだその面持ちには野心が溢れ、その姿勢は威風堂々。しっかりとした豪胆さをまさに体現する。

 中世ヨーロッパ風の勇者たちとは違い、明らかに悪目立ちをした異端。

 そう、()()なのだ。それは当然の帰結。

 何故ならブラック社長は、()()()()()()()()者。

 この世界に土足で転がり込んできた部外者。

 かつて暮らしていた現代社会で唐突な死を迎えるも、女神の祝福によって異世界に渡ることを許された選ばれし超越者。

 それこそが()()()()()()

 否、厳密には云えば───

 ブラック社長は姿形を変えて転生したわけではなく、在りし日の姿のままこの世界に降臨したワケなので正確には異世界転移と呼ぶべきか。

 しかし()()()()じて()涯を送る()と考えれば、辻褄を合わせられよう。


「まだ魔王の方が歯応えがあったぞ、勇者よ──」


 かくして異世界転生者/ブラック社長は新たなる門出の礎として、勇者を筆頭とした人類による連合軍と魔王率いる魔族の軍勢/魔王軍。この両勢力による最終決戦・魔王城の戦いに突如乱入。

 魔王イスカリオテを先に倒してしまい、続けて勇者パーティーと相対する。

 そして、()()()()()()()()()()()

 ひとり残された勇者は、絶望と悲嘆。何よりも憎悪を根底とした激情に駆られながら、復讐に狂奔する。


「異世界転生者ァァアアアアーーーーーッ」


 雄叫びを挙げながら、勇者タローは再度勇む。

 驚異の瞬発力で踏み込み、その爆速によるソニックブームで粉塵に波紋を起こしながら突き抜け、一気にブラック社長との距離を詰める。

 一閃。上段から下段に振り下ろした真っ向斬り。

 超人的速度と圧倒的怪力が備わった渾身の一撃は最早斬撃といった繊細な技巧とは程遠く、さしずめ雷轟電撃。まるて地上に隕石が飛来したかのような超自然的破壊が、ブラック社長の脳天目掛けて襲い掛かる。


 しかし、玉砕。

 振り降ろされた勇者装備のひとつ・聖剣セフィロトが呆気なく爆発四散。

 しかもブラック社長の拳ひとつで、だ。

 驚愕のあまり勇者タローは目を見開く。その信じられない光景があまりに衝撃的だったため、世界が一気にスローモーション。

 だがそれも束の間、瞬時にブラック社長の右廻し蹴りが炸裂。

 勇者/タローは反射的に勇者装備のひとつ・勇者の盾で防御するものの案の定、他の装備同様に木っ端微塵に砕け散る。

 蹴撃はそのまま左顔面に命中し、勇者の脳は大きく揺れる。

 そして地面に倒れ伏し、痙攣を起こしながら動けなくなってしまう。

 しかし絶対絶命の危機感から昏倒だけは避けるよう必死に意識にしがみつき、何とか持ち堪えた。


時間切れ(Time up)。俺は残業を認めない性質(たち)なのでね───」


 だが無情にも終局は訪れる。

 異世界転生者には、女神から与えられた【超越能力(チート)】が備わっている。

 ブラック社長は、超越能力(チート)を起動。

 その能力名は【課金】。

 代金を支払うことで、神話級の武器を入手することが出来る。

 刹那、ブラック社長の頭上に眩い輝きを放つ円環が出現。そこからゆっくりと豪奢な装飾が施された剣がゆっくりと舞い降りる。

 ───()()()()()()()()()()()

 その神々しい黄金の剣は、すでに終焉を予期させる程の殺伐とした威光を大いに放っていた。


「安心するがいい。この世界は俺の手によって直々に最適化(コンサルティング)が施される。誰も観たことのない理想郷の実現(ユートピア)を約束しよう」


 勝利を確信し、我が物顔で語るブラック社長。

 すでに慢心しきった無防備な大敵。だが勇者タローに最早一矢報いる方法などある筈もなく、満身創痍の彼はその場に蹲るばかり。


 だがしかし──


「──勇者は何度でも甦る」

 不意に勇者タローは口ずさむ。

「憶えてろ。必ずこの世界をオマエから取り戻す」


 不撓不屈の眼差し。

 その真っ直ぐな視線が異世界転生者/ブラック社長を射抜き、好奇心の揺らぎを覗かせながら僅かに微笑む。

 そして確かな賛辞と期待を込めた瞳の輝きを灯しながら、天地開闢剣(ハルマゲドン)を携えた右腕を上げる。


「楽しみにしておこう。人生の幸福(ウェルビーイング)には障壁の突破が付きものだ」


 そして審判は振り降ろされる。

 まるで穢れを祓う浄化の光のように、黄金の輝きを伴った破壊の奔流がまるで洪水神話のようにすべてを霧消させてしまう。

 かくして勇者は敗北。勇者パーティーは全滅した。

 勇者を喪失した連合軍ならびに魔王を喪失した魔王軍は、それでも尚決死の抵抗を繰り広げたものの降伏。


 世界は、異世界転生者/ブラック社長の手に堕ちてしまった──

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