三章・永遠の戦い
すみません
……先週も更新できませんでしたね。
今週は何とか更新できました。
春がやってきた。
雪が解け、長らく隠れていた草木が顔を出し、心なしか、太陽がいつもより明るく輝いているように見えた。
今頃は、学院の中庭で奇妙な植物たちが奇抜に輝いていることだろう…………
そんなことを思いながら、森に生えた小さなキノコを摘み取っていると、不意に背後から声がした。
「なーに考えてんだよ。ラルク」
レイが手に持った籠をぶらぶらさせて歩いてきた。
「うん?今頃学院はどうなっているのかなと思って」
「学院か……、懐かしいなぁ」
レイはめんどくさそうに果実を摘み取り、籠に入れながら言った。
「もうあれからどれくらい経ったんだろう?もうずいぶん昔のことに感じるね……」
「実際にずいぶん前のことだと思うよ。あれから先生の訓練がどれほど続いたって……、すっかり日課になっちまったが、辛く長い日々だった」
「まあ、先生の訓練はかなり無茶を含んでたからね……」
そう言いながら、僕は学院を出てから経った月日を計算していた。
確か、春、僕達が二年生になったすぐ後に学院が襲われたわけだから、もうあれから一年近くたつことになる。しかし逆にいえば、オーガとさえまともに戦えなかった僕達が、たった一年修行を積んだだけで魔王と戦いに行こうとしているということになる。
「勝てるんだろうか……」
「今更そんなこと言ってどうするよ。教頭を信じるしかねえだろ」
僕が思わず呟くと、レイがあっけからんと言った。
「まあ、そうだね……、別に僕らが魔王と直接やりあうわけじゃないもんね。多分」
そうだ……、結局僕たちは先生の補佐をするにすぎない。現に修行だって魔王の城にいるであろう魔獣を相手にすることを想定したものだった。そして十分それが可能なくらいには……成長した。
「ま、教頭だって、素直に信じていいのか怪しいくらいに胡散臭いがな。しかしそんなこと言ってても仕方ねぇ。魔王を倒すなら、あれくらいの奴がいないことにはどうにもならんだろうしな。今の時代の最後の希望かもしれねえぞ。案外」
「そうね。私達が失敗したら、もうどうなるか……、あまり想像したくないわ」
近くで薪を集めていたセレナが話に入ってきた。
「少なくとも……、有力視されているやつら全員が組んで戦いに行ったところで、ちょっと以上にきついだろうな。それに比べりゃ、教頭の実力は異常だろうよ」
「私達が少しでも役に立てればいいんだけど……」
「つうか教頭が魔王を倒す前に死なないといいんだが……」
「そうだね……僕も死にたくはないや」
「何二人して不吉なこと言ってるのよ。魔王以外の雑魚共にやられる気なんて毛頭ないわよ」
「セレナ……、相変わらず強気だね……」
「ラルクが弱気なのよ。あんたも実力はあるんだから、もっと自信持ちなよ」
「そりゃどうも」
僕らはそんなことを言いながら、食材の調達を終えて、野営地に持って行った。
僕らはこの時、既に魔王討伐を目指して森の中にいた。
森とは言っても、隠れ家の周りにあった森ではなく、魔王の住処となっている城がある森である。のんびりおしゃべりなどしながら食物採集をしていたが、決して安全とは言えず、むしろ強力な魔獣がうようよといる危険な森だった。
実際に、食料採集中にも、何度もオーガやらリザードマンやら、上級の魔獣に遭遇していた。だからこうやって、僕たちは固まって作業をしていた。
本日何度出くわしたかわからない、どす黒いウルフを黒焦げにしながら、野営地へと戻った。
セレナが言った通り、今の僕たちは一年前とは全く違い、そこらのよわっちい魔獣にやられる程弱くはない。サタンにでも出くわさない限り、おいそれと殺されることは無いだろう。
「まったく、よく一年でここまで成長したもんだ」
同じことを思ったのか、近くでレイが呟いていた。
その後シリアが僕達のとってきた食材で鍋物を作り、僕たちは魔獣を集めないように小さめの火を焚きながら質素な食事をとった。
「明日には魔王の根城にたどり着くだろう。今日の内に英気を養っておけ。下手をすればそのまま明日戦いになるからな」
食事の最中、先生が僕達に警告した。
ここまで余りにもあっさり来てしまった。
雪が溶けて、道が使えるようになったと思ったら、いきなり先生が魔王を倒しに隠れ家を出ると言い出し、そのままあれよあれよと言う間に魔王の根城のすぐ近くまで来てしまった。正直信じられない。よもやこの年で魔王と戦いに行こうとすることになろうとは。
そんな僕の感慨をよそに、食事は粛々と進んでゆき、いつの間にか日が沈み、僕たちはいそいそと毛布を取り出し、先生の張った結界のなかで横になった。
普段口数の多いレイも、この日ばかりは物静かだった。
何か喋るにも、皆自然と声を低めて喋っていた。
――――最後の夜になるかもしれない――――
ふとそんなことが頭をよぎり、嫌な想像が無数に生まれてゆくのを押し留め、僕は眠りに着こうとしたが、やはり眠れない。
他のみんなも、何度も寝返りを打ったり、毛布を引っ張ったりと、さっぱり眠れない様子だった。
やはりみんな緊張していたのだろう。
先生も、この日一日は珍しく表情が硬かったように思えた。森を進むペースも遅かったように思える。
『下手を打てば、五匹の魔王全員と戦う羽目になるかもしれない』
出発前、先生が言った言葉が思い出された。
先生によると、魔王達は転移魔法で、お互いの城を行き来できるらしい。転移魔法なんて、遥か昔に滅びて以来、すっかり失われたものだと思っていた僕達は、半信半疑だったが、もしそれが本当なら、魔王をその場で仕留めなければ、他の魔王全員が呼ばれてしまうことになってしまう。はっきり言って勝ち目はない。
今僕達が倒そうとしているのは、当代五匹の魔王の中では最弱だと先生が断言した、南の魔王である。中央の魔王などは、呼ばれたが最後、先生でも勝ち目はないらしい。
現に、今五匹もの魔王が同時に存在している原因の大半は、中央の魔王の賢さによると言われている。あの魔王が、次々と失われた魔法を復活させ、魔王同士の連携を強固にするという異例の事態を引き起こしたために、僕達サプレサーは魔王を討伐出来なくなったそうな。
僕達の役目は、魔王の情報網を錯乱させて、他の魔王がやってくるのを阻止すること。そのために、先生が驚くほど綿密な計画を立て、僕達に教えてくれた。
なぜ先生があれほど魔王達について詳しかったのか、巷に出回っている情報とは比べ物にならないほど、先生は魔王達のことを知っていた。根城の構造、五匹の魔王達の習性、得意な魔法の分野……。おそらく先生は昔魔王と戦ったことがあるのだろう。そうでもなければ、あれほどの情報が集まるとは思えない。
そんなことを考えていた僕は、いつの間にか瞼が合わさり、浅い眠りについていた…………。
来週は更新できそうにないです……すみません。
土日とも大会があったりするので。




