第三十六話 故郷
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「今日はどこに行くか決めているのか?」
「はい、私に任せてください。ちゃんと調べて来たので」
「分かったわ」
俺たちは朝食を食べながら、今日のことを話し合う。
もちろん朝食はご飯と味噌汁と鮭だった。漬物もあったので買って帰らないと。
「美味しいですね」
「そうね、でも茉莉奈の味噌汁のほうが美味しい気がするわ。何が違うのかしら」
「味噌だと思いますよ。多分これは赤味噌ですね」
「へー、違いわかるのね」
「このくらいなら分かりますね」
茉莉奈の超記憶で分かるのか、舌が肥えているのから分かるのか知らないがよく分かるものだ。そもそも味噌は麦味噌しか知らない。
「よし、そろそろ行こうか」
「分かりました」
「え!もう行くの?おかわりしていい?」
「キシリカって和食好きだよね。でも食べ歩きしたいからあまり食べすぎないほうがいいよ」
「そうね、色んな物食べないと。いい作戦だわ!」
◆◇◆◇
「綺麗な街並みですね」
「石畳が王都とは違うみたいだな」
「ねー!あの人見てよ。何か不思議な服を着ているわ。あなたに似合うんじゃないの」
キシリカは着物を着たカップルを指差していた。
「俺よりも2人の方が似合うんじゃないかな、どこかに売ってあるのかも」
「いいですね、私も着てみたいです」
「キシリカも着てみようよ。絶対に可愛いから」
「いいわよ、あなたも着るんでしょう?」
「ああ」
昨日も浴衣姿の俺を妙に褒めていたから、どうしても俺に着物を着せたいみたいだ。
俺みたいな撫で肩が着物は似合うらしいからな。
「あっちにレンタルできる場所があるらしいです」
「お、仕事が早いね」
「行きましょう」
着物がレンタルできる店は大きく様々な着物が置いてあった。男性用だけでもいっぱいある。
「どれが似合うと思う?」
「これなんてどうですか?暗めの緑が似合うと思うので」
「いいね!刀でもつけようかな」
「そんな人いないのでやめてください」
珍しくキッパリと注意された。物騒な格好は今は嫌らしい。
「私はこれにしたわ。どうかしら?」
「いいじゃん。やっぱり金髪美女には青色だよね」
「それ言う人あなただけよ。でも私も青色好きだから来てあげる」
「ありがとう。楽しみにしておくよ」
前に俺が青が似合うと褒めてからキシリカは青色の服をよく着るようになった。もちろんネグリジュも俺のために青を着て寝ている。
「茉莉奈は選んだの?」
「まだです。私こういう時に時間がかかるタイプなんですよね」
「これなんてどうだ?鯉が泳いでいるよ」
「ちょっと派手すぎますね」
「これなんてどうよ。何を描いてあるのかわからないけどシンプルよ」
「これは男物ですよ」
「あらそうなのね」
少しめんどくさくなってきた。しかし、デートでは待つ時間が大切だとモテ男の父上も言っていたから我慢をする。
そう考えていると1着の着物が目に入った。
「これなんてどうだ?茉莉奈の髪色と一緒の黒があるよ。それに昨日一緒に見た夜空みたい」
「本当ですね。これにしようと思います」
茉莉奈が無事気に入ってくれたようだ。
しかし、ここでキシリカが痛いところを突いてくる。
「あなた髪色で選ぶの好きね」
「いいだろう。茉莉奈も納得できたから結果が良ければ何とやらだよ」
「そうね。何とやらよね」
謎に納得したキシリカは茉莉奈と一緒に更衣室に行った。
俺も早く着替えないと昼になってしまう。
着替えは従業員が手伝ってくれるようだ。しかも珍しく男性だ。
「小物などはどうしますか?」
「そうだな。ピアスとかつけたら逆にかっこいいかな?」
「それはやめときましょうね」
「はい...」
すごい圧で止められた。俺じゃなかったら泣いていたぞ。
どうやら小物とは扇子などの事のようで、アクセサリーではないようだ。俺は扇子だけを借りることにした。
「似合っているかな?」
「はい、大変似合っております。お連れの方はまだ時間がかかると思うのでこちらでお待ちください」
「わかった」
それから20分ほど待っていると楽しそうに従業員と話しながら2人がやって来た。小物もしっかりと選んでいるようだ。
「お待たせ」
「似合っているじゃん。この簪も選んでもらったのか?」
「そうよ。いいでしょう?」
「ああ」
キシリカは日本に観光に来たアメリカ人が着物を着ているようにしか見えないが、この街の観光客はほとんどこんな感じなので悪くないだろう。
「私はどうですか?」
「さすが着物の発祥地出身なだけはあるね。綺麗だし何だかいつもより色っぽいよ」
「ありがとうございます。旦那様もかっこいいですよ」
「本当?なら良かったよ」
何だかドキドキしてしまう。いつも一緒にいるのに。
「この格好で観光するのね、良いわね」
「ああ、でもまずは昼飯食べに行こうよ。時間がないと思う」
「ええ、結構急いだ方がいいかもしれませんね」
夕方までに次の町に行かないといけないので、あと5時間くらいしかない。
それから昼食を済ませ、お土産を買いに行く。茉莉奈は味噌などの調味料を自分の為に買い、キシリカは食べ歩きをしていた。
俺はこっそりと2人が来ていた着物や小物を買い取った。全部合わせてもカメラの5分の1程の値段だったので安く感じた。
茉莉奈が行きたかったところを全て周り、着物から元の服に着替えてからすぐ次の街に出発した。時間ギリギリまで食べていたキシリカはお腹が満腹になり馬車で寝ている。
俺は茉莉奈と2人で話す。
「この街は茉莉奈の故郷と似ているんだっけ?」
「そうでもないですよ、私はもっと時間が進んだ時代にいたので。でも懐かしい気持ちにはなりましたね」
「そうなんだ。もし...もし、まだ元の世界に戻ることができると言ったら茉莉奈は帰りたいと思う?」
俺は少し言い淀んだ。だってなんか試しているみたいになりそうだったから。それに戻ること自体はできるし、その事は秘密にしている。
「何ですかその質問?アハハ...、戻るわけないじゃないですか?あっちには家族はいない。こっちには家族がいる。誰でもこの世界を選びますよ」
茉莉奈は笑いながら否定してくれた。
「そうなんだ。安心したよ」
「不安だったんですか?」
「少しだけね。今日楽しそうだったから故郷に戻りたいのかなって思っただけ」
「今日楽しかったのはこの街が故郷に似ていたからではありません。3人だったからです。だから私はずっと旦那様とキシリカ様の隣にいるつもりです」
「そうだったのか。ありがとうね」
「いいですよ」
もうそれ以上聞くことはやめて茉莉奈の肩を強く抱きしめた。
久しぶりの2人の時間だったので、キシリカが起きるまで少しだけイチャついた。
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