04 冒険者登録
楽しんでもらえると幸いです。
「こんにちは-。冒険者登録に来ました-。」
「はい、こんにちは。冒険者登録ですね。こちらに名前、住所もしくは拠点としている宿屋、年齢、性別を記入してください。」
新規カウンターにいたのは、黒い短髪の青年だった。ロディを一瞥すると、冒険者登録用の用紙とペンを差し出した。
「はい。」
ロディはさらさらと用紙に書き込んで、青年に渡した。青年は用紙に書かれたことを確認すると、後ろにいた職員に書類を渡し、ロディに向き直った。
「はい、記入を確認しました。では、冒険者としての仕事の説明はよろしいですか?」
「依頼を受けたり、ギルドの緊急要請や指名要請に応えたりするんですよね?」
「はい、そうです。」
「他にも、換金カウンターの値段がよくなったり、いろいろいいことがありますよね?」
ロディが尋ねると、青年は淡々と説明をしてくれた。
「ええ。換金カウンターでの10%の上乗せ報酬があります。また、ギルドの銀行を使うと、1月あたり、0.2%振り込まれます。ギルド内での購入額は5%オフになります。そう、街への関税も5%値引きされますね。」
「割合までは知らなかったなぁ。そうなんだ!わかりました。ありがとう!」
ロディが嬉しそうに笑うと、青年もふっと表情を崩した。
「きちんと挨拶ができるなんてえらいですね。小数もきちんとわかるなんて、どこで勉強したんですか?ギルドの学習室では見かけなかったように思いますが。」
青年は少年のような少女の普通の冒険者の装備から、貴族にしては身なりが悪いし、ギルドにある学習室で教えてもらうこともできるが、そこに出入りしていた顔の中にはなかったはず、といぶかしむ。
「父さんや母さん、ギルドのおじさんたちに教えてもらったよ。」
「おや、そうでしたか。」
青年の後ろから他の職員が金色の輪のようなものを青年に手渡した。金色の輪には、2つの丸があった。それぞれに両手の手のひらの絵と握手をしている絵が描かれている。
「はい、それでは冒険者として登録されました。この輪を体のどこかに身につけておいて下さい。これを見せることで冒険者としての身分が保障されます。」
ロディは手渡された輪をじっとみて、嬉しそうに右腕にはめた。
「では、ご武運を。」
「うん、ありがとう。」
にっこり笑って、ロディは銀行の横に立っているケルディのところにスキップした。
「見てみて~。」
「おう、よかったな。」
ケルディに腕輪を見せて、ロディは嬉しそうに笑った。
「さっさと銀行に行けよ。待ってるぜ?」
「うん。」
ロディは再び受付のユーファに話しかけた。
「ただいまー。冒険者登録してきたよ!」
「おかえり。はい、これ書いてね。」
ロディは差し出された用紙にさらさらと記入し、ユーファに見せる。
「うん、大丈夫ね。では口座はこれでできたわ。いくら預けるの?」
「うーんと、どれくらいかなぁ。今手持ちでこれだけあるんだけど。」
ロディはどさっと袋をカウンターに置いた。
ユーファは中を見て、驚く。
「ちょっと、これ、どうしたの?!」
「ここまで来る途中で狩った魔物を換金したらこれだけになった。」
「すごいわ!いちどにこれだけだなんて!とはいえ、全部入れたら生活できないわね。」
「それからこいつ、武器や防具とかを買いに行かせるんだ。多少残しておいてくれ。」
ケルディが付け足すと、ユーファはうーんと考えて、ロディに別の袋に数十枚入れて返した。
「これだけは当面の生活費と武器防具を買う費用で返すわ。あとは銀行で預かるようにしておくわね。」
金貨の数をものすごい勢いで数えだしたユーファに、ロディはお礼を言う。
「うん、ありがとー。」
「しめて、これだけね。」
さっと計算した預ける金額を専用用紙で見せられて、ロディはおおっとその速さに驚いた。
「わー、すごい金額だね。うん。よろしく。」
「わかったわ。あと、ここにサイン書いて。」
「うん。」
差し出された用紙に印をすると、ユーファはお金を金庫に預けに行った。
「ケルディさん、待っててくれて、ありがとう。」
ロディは振り向いてケルディを見上げた。
「ああ。気にするな。案内するのは初めてじゃないからな。」
「そうなの?案内とかしてるんだ?面倒見がいいんだね、ケルディさん。」
「・・・まあ、な。」
にこにこと素直に言われ、ケルディは照れてそっぽを向いた。
「ロディちゃん、手続きはこれで終わりよ。私、夜まで仕事だから、終わったら迎えに来てくれる?」
「うん。ユーファちゃんのところに泊まるのも久しぶりだね。迎えに来るよ。」
ケルディは端から見ていると、まるで恋人の会話のようだと思った。
「ケルディさん、武器屋さん、教えて~!」
「おう、行くぞ。」
ロディとケルディはギルドを出た。
設定4
冒険者登録は、周りの人から冒険者と見てもらえるだけでなく、少しだけ融通を利かせてくれる。が、あまり素行が悪いと、剥奪される。
カードでなく、輪なのは冒険者が無茶してもなくさないようにするため。
輪は伸縮自在で、指輪や首輪にする人もいるが、普通は腕輪にする。
秘匿されているが、この輪でギルドは持ち主を探知することができる。
もしものときの救助用である。
一度はめたところから動かすと、壊れる。