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異世界娘とこの世界を歩く〜異世界から来た精霊っ娘とのんびりバックパッカー旅行を楽しみます。〜  作者: 三河屋


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佐渡島ドライブ5―たらい舟とまた妹らに叱られる弦

小木半島を更に南下し、半島を縦断する。

景勝地矢島-経島に到着する。


夏休みの人気観光地は人も多く賑わっている。

誘導員の案内に少し遠めの駐車場にアルト丸を停めることになった。


そこから矢島経島まで観光客が行き交う古い集落の小道を歩いて行く。



「あの軒下に置いてあるたらいは、もしかしてたらい舟かのう!」(サヤ)

「たらい舟、可愛い♡昭和な感じ、」(ほなみ)

「ほなちゃん、ほなちゃん、冷やし飴ってなに?」(サラ)

「冷やし飴?あ、可愛いお店♡」(ほなみ)

「塀に猫がおるぞ、猫!猫!」(サヤ)

「猫、可愛い♡」(ほなみ)

「屋根の上にも猫がいるよ〜」(サラ)

「よし、サラ、見にいくぞ♪」(サヤ)



いよいよ到着して盛り上がるのもわかるが…

イヤ、騒ぎすぎ。


「みんな落ち着いて。他の人に迷惑だぞ。」


屋根の上に飛んでいく、サヤサラに言う。


「弦、わしらの声は人には聞こえん。」

屋根の上からサラがカラカラ笑う。


「ほなみの声は聞こえるだろ。」

「大丈夫、ほなちゃんの可愛い♡は普通の女の子の呟きだよ。」


ほなみが近づいてきて耳元で囁く。

「私はちゃんと考えて話してるよ。ダメなのはお兄の方。

さっき「みんな」って言ったけど、今の私達は二人旅。誰もいない屋根の上に「迷惑だ」とクレームをつける。

お兄ははたから見たら怪しいヤツだよ。」


サヤも屋根の上から言った。

「弦、スーパーでもお主、やらかしたじゃろ?」

「お惣菜のおばさん、びっくりしてたよ、お兄さん。」


「…さて、早くたらい舟乗り場に行こうか!」

ぼくは駆け出した。




小走りに坂を降りると沢山のたらい船が浮かぶ小さな入り江に出た。

右側にはたらい船乗り場があり、順番待ちな列が出来ている。


早速チケットを買って列に並ぶ。

改めてゆっくり景色を見る。

目の前には小さな入り江、その反対側に赤くて半円形の太鼓橋。

日に照らされて鮮やかに見える。


ほなみがガイドブックを広げていった。

「えっと…あの赤い橋で繋がっているのが矢島と経島。平家物語の中に、源頼政が矢島の竹で矢を作って鵺を退治した伝説があるんだって。経島は日蓮聖人の弟子で日朗が嵐に遭って漂着し、一晩ここでお経を読んだ場所、だって。」


「ここで一晩過ごしただけか?そんな大した事には思えんが。」


そうじゃな、こんな感じか?…サヤが突然語り出す。

「神の徒は闇の中嵐の海に投げ出さた。漂流すること数刻、何処とも知れぬ小島に流れ着く。周りに光は見えぬ。恐怖する心を抑え、漂流で疲れた身を起こし、ただ一心に神に祈ったのじゃ。」


サヤが語りだすとサラが美しい声で語りを引き継ぐ。


「ただただ彼は神に祈る。やがて夜が明ける頃、嵐は収まった。彼は神の救いに感謝の祈りを捧げた。朝日にあたりは照らされ、美しい入り江とその向こうに大きな陸地がある。これは大いなる神の導きでありました。」


サラが腕を広げ優しい微笑みこちらを見下ろす。


すごい、まるで神話を語る聖職者のようだ

日朗さんは完全に神父さんになってしまったが。


ぼくが拍手をしてサラに話そうとすると、ほなみに手を叩かれた。


「本人にしては大ごとだったってことね。」

と、ほなみは言いながらも、ぼくをジト目で見る。


サヤがケタケタ笑う。

「お主、またやらかそうとしたじゃろう?」


サラも笑いをこらえて言った。

「お兄さん、人前で私達に話しかけてはダメよ。」


…うん、しばらく黙っておこう。



やがて順番がきて、いよいよたらい船に乗る。

丸いたらいの真ん中に四角く椅子が並べてある。


ぼくとほなみは恐る恐るたらいに乗った。

思ったより揺れない。


船頭さんが船を出しながら言う。

「大人が4人乗っても大丈夫なんてすよ。」

そして櫂を八の字にゆっくり漕ぐとスーとたらいは進み始めた。


水は澄んでいて海の底までよく見える。


「あそこにフグがいます。」


船頭さんが指をさす。

見ると楕円形の小さな魚。


「可愛い♡」

「あちらにも魚がいます。」

「どこ?」

ほなみ海を覗き込む。


舟はのんびり入り江を進む。

「昔はこんな舟で魚を獲ってたんですね。」

船頭さんはいやいやと答える。


「たらい舟はまだまだ現役ですよ。エンジンを付けて使っている人がいます。」


「これで漁に出るんですか!?」

「潜ってサザエや海藻を獲ったりするのに使ってますよ。小回りがきくので便利なんです。」


船頭さんの案内の元、たらい舟は入り江を巡る。

漁師船の留まる舟屋

海にかかるメガネ橋

経島の東屋

赤い橋太鼓橋


のんびりきれいな景観を眺める。

サヤとサラもたらいのフチに座って舟の揺れを楽しんでいた。


「お兄、なんだかこういうの、いいね。」

「あぁ、気持ちいいな。」


やがてたらい舟は入り江を1周し船着場に戻る。


「降りる前にお二人のお写真を撮りましょうか?」

船頭さんが声をかけてくれる。


「弦、お主の携帯で撮ってもらえ。」

サヤがフチでサラと肩を組んで言う。

「あっ!ではこの携帯お願いします。引きでもいいのでたらい舟全部が入る感じでお願いします。」


「分かりました。はい、撮りますよ!」





たらい舟を降りて、矢島、経島の遊歩道を歩く。

人も少なくのどかな道だ。


赤い太鼓橋は意外と高さがあった。

上から入り江を見るとは沢山のたらい舟が浮いている。


ほなみが手を振ると、さっきの船頭さんが手を振ってくれた。

そのまま、歩いていくと素朴な作りの空き家が見えてくる。

明治の偉人の別荘らしいが…

ほなみが覗きながら言う。

「こんなところに住みなんて不便じゃなかったのかな?」


サヤが目を細めて言う。

「煩わしい人間関係でもあったのじゃろう。力を持つほど、有象無象の輩が寄ってくるものじゃ。」


「サヤの言葉には何か実感こもってる?」

ぼくの言葉にサヤは答える。


「我はこれでもすっごい魔女様だったのじゃ。」


へえ〜…つい本当かサラに確認してしまう。


「本当ですよ。お姉ちゃんはすごい魔女様ですよ。」

サラがニコニコして頷く。


「まぁ、サラが言うならそうなんだろうな。」

「何故、我が言葉を信じんのじゃ?」

「日頃のおこない?」


そんな会話をしながら、矢島経島観光を終えたのだった。





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