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第2話 芽生える想い?

難産だった。

恋愛フラグって難しいね。


追伸:土曜に帰宅できそうになかったので、投稿予約をしたつもりだったのですが・・・・・・ミスった挙句、さっき気付きましたm(__)m 





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「うーん…便利は、便利なんだけど・・・素直に受け入れ難いのが問題だ」


 視界の右上端に表示されている半透明のレーダーを覗く度に『心が人間なら人間なんだよ・・・たとえロボチックな機能があったとしても…そうだろ?』と自問自答せずにはいられない。


 レーダーは、自分を示す白い点を中心に360度全方向ををカバーしている。反応があった場合は、白い点の点滅と「ピッ…ピッ…ピッ」という電子音で教えてくれる仕様だ。

 現在は、俺の放った凶悪な魔力弾の所為なのか、レーダーの探知限界距離である周囲5km圏内に反応は・・・一応なかった。

 一応と言葉を濁すのは、初めに生体魔力反応レーダーを有効化アクティベートした時には無害な生物である虫や小動物、植物―――薬の材料などになる魔力を保有した薬草の類―――にまで反応を示していたからだ。一瞬、白一色のレーダー画面とけたたましい電子音でパニックになった。

 今は、設定変更が可能だったのでを色々と弄繰り回した末に、魔物や人間以上の魔力反応だけを表示するようにし、探知距離も周囲500mに絞っている。


「まあ、周囲の安全が容易に確保できる……という事実だけで、今回は無理矢理にでも納得しよう」


 なんとか自分の中で落とし所を定め、『来年ぐらいには、ロケットパンチとかしてそうだ』と己の未来を憂いた。



 結局、さっちゃん…あるいは、その裏に控える極悪魔女の巧妙な罠により強制的行動不能状態されてから、まともに歩けるようになるまでに一時間もかかった。

 別に望んだ訳でもないが、意思とは無関係にプルプル震える自分の手足に生まれたての小鹿の気持ちを深く理解させられたひと時だったと思う。

 ちなみに、さっちゃんは『疲れたので寝ます。ナビを有効化アクティベートして起こさないでくださいね』とすぐに黙ってしまった。動けない間中、悪態をつかれず済んだが・・・凄くやるせない気持ちにさせられた。



 で、そんな希少体験を乗り越えた俺は、便利なレーダー機能を有効活用しながら、その辺から拾った枝で棒倒しからの行く当てもないハイキングの真っ最中な訳である。


「にしても、行けども行けども同じ風景・・・密林とか、原生林、ジャングルって言葉が似合う森だな、ったく…」


 遺跡からの転移地点から随分と離れたはずだが、景色は全く変わらない気配すらない。


 まあ、危険察知はレーダー任せにできるから・・・追加されたアレコレをじっくりと確認する時間を得たとプラスに考えるか。





「ふむふむ…なるほどな。説明にないコトってのは、やっぱりあるもんだな」


 森の探索がてら進めていたアレコレの確認を終え、思わず独り言を漏らしてしまった。それ程の期待はしていなかったのだが、なかなかの発見があったからだ。


 まず封印術式関連では、各部の鬼化の互換性である。

 封印術式“鬼”解放率10%の状態に於いて、鬼化可能なのは腕部だけではなく、脚部もしくは頭部のどちらかでも良い事に気付いたのだ。

 さらにそこから試行錯誤を進め、解放率20%の状態まで引き上げれば、腕部・脚部・頭部の中から二箇所を鬼化可能になる事が判明した。

 以上の事を考慮するに、どうやら封印術式“鬼”は解放率10%区切りで鬼化可能な箇所と数が増え、任意に選択できる仕様のようだ。


 能力関連にも新たにわかった事がある。

 『固有能力【ユニークスキル】●を▲え■▼』に『能力【スキル】剣修』を指定してみると視界内に『能力【スキル】:剣修(0/100)を指定します』と表示されただけの別ウィンドウが開いた。

 特に説明書きは無かったが、()の数値にはある程度の予想がついた。多分、ゲームなどでお馴染の経験値とかそういう類のアレなのだろう。

 何を持って()の数値が増えるのかは、まだ不明だが、この数値を満たせば固有能力【ユニークスキル】効果で能力【スキル】の進化ってのが起きるのだと思う。・・・実に楽しみだ。


 そして、追加機能・兵装なのだが…。

 真っ先に確認した遠距離専用魔術紋“砲”に新たな威力調節の項目『弱・中・強・凶』が追加されていた。説明書きの所も『無属性の遠距離攻撃魔法が使用可能。威力も四段階から選択可能で、其々に魔力消費量も比例する。』と簡潔かつ真面目な内容になっている。

 最初のアレは、十中八九当たっていると思うが、制作者の某魔女さんがバ火力(・・・)自慢を俺にしたいが為の…。うん、ドヤ顔で胸を張る姿が容易に想像できる。


 ってか、なんだよ! 威力調節の『凶』って!!





 尚、極悪に口の悪い彼女?の意思を尊重してナビゲーションシステムは確認しなかった。疑似人格に罵倒されて興奮する高尚な趣味は、俺には早い。


 


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 何をどうしたら・・・こうなるのだろうか。


 視線の先には、植物の蔦で雁字搦めに絡まれた挙句、木から逆さに吊るされる見知った脳筋娘。この状態になって結構経つのか、萎びた野菜の如くしおしお~となっている。


「ふえぇぇぇえええん! 誰かぁ~助けてぇ~!!」


 まだ俺に気付いていないようでマジ泣きで喚いている。


 ・・・声をかけるべきなんだろうな、きっと。



 約5分程前、俺は相変わらずで不毛な森林行脚に疲れ、食事ついでに小休止を取っていた。食事といっても、食料やら何やらはエルの魔法の鞄に預けていたので、念の為にと手元に残しておいた携帯食料―――本当は、エルに『自分は食べないから』と預かりを拒否された―――と水筒の水だけの質素なものだ。


 本当なら絶対にノーサンキューな食事内容なのだが、迷宮内での肉体変異に加え追加仕様確認での肉体変異で、いい加減食事を取らなければならなかった。でないと、また気を失ってしまいかねない。


 催す吐き気を水で流し込み、気を紛らわすように生体魔力反応レーダーの探知範囲を最大にして眺めていたところ、探知範囲ギリギリにおそらく魔物だろう白い色の点とは全く違う青い色の点の反応が現れた。数秒間、その青い点に注目しているとアンダーラインが伸び『トア・グリード』との表示。どうやらこれが、生体魔力反応レーダーの説明にあった記憶した魔力の追跡反応らしいかった。



 で、すぐに封印術式“鬼”解放率10%で脚部を鬼化して駆け付けたんだが…。


「お兄ちゃ~ん、どこいるの~! うえぇぇぇええええん!!」


 なんか俺の持ってるイメージと違い過ぎて……凄く声をかけ辛いです。


 



「えぐっ…えぐっ…」


「お、落ち着いたか?」


 弱々しく体操座りで蹲るトアを苦笑しながらも介抱する。あの強気な脳筋娘はどこに行ったのだろうかと全力で問いただしたいのだが、本人は本気で泣いているので自重した。さすがに、そこまでのKYに俺はなれない。某魔女娘とかならしそうだが…いや、するな。


 …だけど、トアでもこんな感じになってるなら・・・エルの事も少し心配になってきたな。


 転移させられた場所がバラバラだったとしても、全員が荒事に慣れた冒険者なので心配していなかった。

 グリード兄妹は金色間近な銀色ランクの実力者だし、エルにしたって…まあ、エルだから大丈夫だろうと自然に思えたからだ。


 と、蹲っていたトアが顔を上げた。すっかり泣き腫らした目は赤くなっている。


「ぐすん…ありがとう、助けてくれて」


「あ、ああ…」


 やはり俺の知っている脳筋娘は異次元の彼方へ旅立っているようだ。目の前には、素直なか弱いオーラの少女しかいない。気のせいかもしれないが、潤んだ瞳と少しだけ上気した頬にドキッとさせられた。


「そ、それより…どうして、あんな事になってたんだ?」


「えっと・・・最初は、木の上に転移させられてたの。でも、固有能力【ユニークスキル】を使った反動がキツくて、その場から動けなかったんだ」


「それは、また難儀な場所に転移させられたな」


「うん。でね、叫んで助けを求めても周囲に誰もいないみたいだし早々に諦めて、気配を絶ちながら回復に努めようとしたんだけど……」


「けど?」


「ユーマも知ってると思うけど、さっき物騒な閃光に轟音と揺れがあったよね。私の感覚的には、距離も安心できるほど離れてないと思うんだ。それで、少し取り乱しちゃって・・・・・・滑って落ちたの…幸いにも途中で蔦やら何やらに絡まったおかげで、怪我はしないで済んだみたい」


「へ、へえー…」


 ・・・お、俺の所為ですやん。


 予想外な原因というか真犯人になってしまい、思わず内心でエセ関西弁を叫んでしまった。現在進行形で冷や汗が止まらない。


「でも、あれからずっと静かみたいだし……なんだったんだろね、あの光」


「ボクニモワカリマセン」


 明後日の方向に視線を彷徨わせながらそう答えるのが、精一杯だった。上手く誤魔化せている事を切に願う。弱っていても元は脳筋娘……バレた時の報復が怖い。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「あ、あの…重くないデスカ?」


「大丈夫、軽いよ」


「や、やっぱり、自分で歩くヨ」


「固有能力【ユニークスキル】の反動が抜けてないんだろ? それに人を背負うのは慣れてるから気にしないでいいよ」


「あ、あぅ…。兄さん以外の男の人とこんなに触れているの……初めてなんだけど(ボソッ)」


「ん? ごめん、今の良く聞き取れなかったんだけど」


「えっ! あ、いや、ナンデモナイヨ…」


 さっきからトアの様子が変だ。時たま片言になったり敬語になったり、終いにはもにょもにょと聞き取り辛かったりする。俺は朴念仁のニブちんじゃない。まさか…と思うところもあるが、でもトアだし……そんな乙女チック展開ないな。



 トアの調子が戻るにはまだ時間を要するようだったので、彼女と合流した地点からずっと俺が負ぶって移動している。

 トア曰く後二時間ぐらい寝転がって休んでいれば真っ直ぐ歩けるぐらいには回復するそうだが、日が高い内に脱出の目処を立てたかったから森の探索を優先させてもらった。それに比較的小柄な方であるトアを背負うくらいで負担になるとは思えなかったし。


 ・・・まあ、その結果、ツッコミが必要な小事?出来ているんだけどな。


「で、トアさ…その箱は、ずっとそのままなの?」


「ふぇっ?! な、何?」


「だから、背中の宝箱…だよ」


「う゛ぅぅ…だって、あの迷宮で唯一の成果なんだよ?」


 呻きながら答えるトアに思わず嘆息してしまう。


 いざ出発となった時、トアから待ったがかけられて理由を聞くと迷宮から意地で確保した宝箱を木の上に放置したままだから取って来てほしいだった。

 記憶にある箱自体の大きさから考えて、中身だけを腰下げの袋に入れれば嵩張らないから問題ないと判断し了承したのだが…。


「でも、鍵がかかってるソレは唯の箱だろ」


「そうだけど…イタ兄なら空けれるし、勿体ないよ」


 特殊な鍵できっちりと密封、しかも、宝箱自体が俺も知らない特殊な合金で作られているらしく凄まじい頑丈さだった。手段を選ばなければ破壊可能だが、その場合は中身の補償はできない。おそらく閃光の中に消えるだろう。


 トアの必死な説得もあって、宝箱は持ち運べるよう無理矢理に彼女の背中にロープで括りつけてある。傍から見れば、俺・トア・宝箱の順で重なっている状態だ。・・・実にシュールである。


「中身が何にせよ、やっぱり邪魔だから置いていこうか。今、森で遭難中な訳だし」


「あ、あと少し経ったら、私も歩けるようになるから、ね! そしたら自分で責任を持って運ぶからお願い、もう少し我慢して!!」


 首に回した手を俺の頭越しに合わせて頼み込んでくるトアに再度嘆息しつつ、後一時間もないし我慢するかと決めた。


 と、その時だった。


 木々が少しだけ拓けた空に見慣れた氷柱の先っぽが生えるのが、見えた。遠近感からそこまで離れた距離でもないとすぐにわかる。

 生体魔力反応レーダーの探知距離を拡大してみると3km圏内にトアの時同様の反応があった。青点から伸びるアンダーラインに表示されたのは…思った通りエル・フリッセルの名だ。


「トア、エルを見つけっ?!」


 背中のトアにエル発見を報告しようとして言葉を飲み込んだ。

 レーダーにもう一つの反応…白点の存在に気付いたからだ。しかも、青点と白点の位置は交互に激しく離れたり近付いたりを繰り返していた。


「この動きは・・・・・・っ!」


 封印術式“鬼”解放率10%…鬼化指定部位『脚部』!!


 俺の思念に応えギチギチと鳴きながら筋肉、骨、皮膚が変異するのがわかる。


 沸き上がってくる力の感覚・・・それが、徐々に馴染むのが伝わってくる。


 そして、反応のあった方向へと俺は一直線に駆け出した。 


「ふぇ? ふぇ? ふぇええええええええええええ!!」


 急な加速に悲鳴を上げた背中の存在に対する配慮を忘れて…。










◎森林某所の威風堂々たる大木前。


「【氷柱槍アイシクル・ランス】」


「当たらなければ、どうということはっ?!」

「【氷弾フリーズ・バレット】」


「ぐぅっ!! …まだよ、たかが頭部をやられただけ!」


「・・・さすがゴーレム、しぶとい」



 

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