表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で魔改造された俺が、orzってる!  作者: 香しい肉球
俺、遺跡(仮)に立つ!!
32/62

第5話 ギルド指名依頼

少しでも面白いと感じたらお気に入り登録・評価して頂ければ励みになります。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「うりゃっ!」


 気合と剣閃が走った。


「キャィィイン!!」


 宙に剣筋を追って紅い線が引かれ、胴を薙がれた獣が地面を滑る。


「これで残り3匹…」

「違う・・・2匹」


 声のした方を横目で確認するとエルが杖で額に穴を空けられた獲物を指し示していた。


「エル、あんまり前に出るなよ。接近戦できないんだから…って、このっ!?」


 会話の途中で飛び込んできた顎門を避ける。

 刹那に懐を抜けるその首へ剣を真上から振り下ろす。

 刃に僅かな反発を伝えるも首と胴体が切り離された。

 それでも骸の勢いは失われず、慣性に従って跳んでいき木々へと激突する。


「ふぅー、あと一匹…って、あれ?」


 残りへ視線を送った時には、最後の目標が自分の形勢不利を悟って身体を反転させる瞬間だった。

 

「ちっ、逃がすか!」


 即座に自分の視界に意識を集中させる。


 相手は森を四肢で自由自在に駆ける魔物『森狼フォレストファング』。

 ヤツとの間は、約6mぐらい離れている。

 一息に詰めるには遠く、本来ならば逃走を許してしまう距離だ。


 少しの痛みの後にこめかみ付近の血管が隆起する。


 …【竜眼】…発動!


 眼は黄金色に輝き・・・そして、瞳が縦に割れた。


 俺の視界に捕らえた瞬間、森狼フォレストファングが身体を射抜かれたように竦ませる。

 放たれる圧倒的上位者の威圧感を前に、歯をガチガチと震わせながら尻尾を丸めて必死に四肢で地面を掴み耐えている。

 そうしなければ、そのまま押し潰されてしまうかのようだ。

 

「【風刃ウィン・エッジ】」


 俺の横を一陣の風が吹き抜けた。

 風は、そのまま悲鳴さえ上げられない森狼フォレストファングを周囲の薮ごと切り裂く。

 鮮血が濃い緑色の葉木に飛び散り、その場で身体が崩れた。




「グゥルルゥゥゥ…」


 周囲を警戒後、【竜眼】を元に戻しながら近づくと地面に伏したままだが、森狼フォレストファングの息がまだ残っていた。

 傷を負った身体を引き摺って少しでも距離を採ろうと足掻いている。

 それが叶わない願いであったとしても。

 四肢の内二本を失い、内臓もはみ出ている。


 凄まじい生存本能。


 しかし、このまま放っておいても先が短いのは明らか、なら…


「楽になんな」


 ゆっくりと背後に回り、俺は躊躇なく刃を延髄付近に突き立て戦闘に幕を引いた。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




森狼フォレストファングの毛皮が17枚…と。今回も大猟ねぇ~」


 冒険者ギルド受付窓口。

 カリナさんに持ち込んだ素材の鑑定と依頼の処理をしてもらっている。


「えっーと、依頼達成に必要な分は5枚だから…残った12枚の毛皮はどうする? いつも通りにギルドの買い取りでいいの?」


「はい、それでお願いします」


 「ちょっと待っててね~」とカリナさんはギルドカードを差った水晶の操作を始める。

 ギルドカードへのデータ(依頼達成などの履歴)書き込みは平均5分ほどかかる。

 その待っている間、普段と同じく他のギルド職員の様子を何となしに眺めていると目が合うなり慌ただしく部屋から出ていく者がいた。


 ん……何だ?


「はい、これが依頼分の報酬で銀貨10枚ね。で、こっちが残りの毛皮買取分。銀貨2枚相当の物が6枚と銀貨3枚相当分が4枚、残り2枚の毛皮は損傷が多いから銀貨1枚で買い取らせてもらうわ。全部合わせて36万ゼル、ちゃんとあるか確認してね…って、聞いてる?」


「ああ、すいません…えっとー何でしたっけ?」

「36万ゼル。・・・確認した」


 さっきの職員の様子に気を取られて話を聞いてなかった俺に代わって、エルが答えた。

 普段から無表情で何を考えているか読めないエルだが、こういう時には他人の話をちゃんと聞いている。案外、チャッカリした性格である。 

 

「ボーっとしてたみたいだけど、どうしたの?」


「いや、他の職員さんが―――――」


 カリナさんの疑問に答え終わるよりも先に、さっき出て行った職員さんがこちらへ近づいて来た。そのまま、何やらカリナさんに耳打ちを始めた。

 その様子を俺とエルが訝しげに見ていると二、三言の言葉を告げる間の後にその職員さんは元の場所へ戻って行った。


「ごめんね、会話の途中で」


「大丈夫ですよ。それより何だったんですか?」


「えっとね、ギルド長が貴方達二人に用事があるらしいのよ。これから一緒に来てもらえるかしら?」


「えっ、俺達にですか? 別に良いですけど…」


 ギルド長が? 会ったこともないのに・・・まさか、エルが何かやらかしたとか。

 あ、それともこの前の絡んできた冒険者をエルが氷漬けにした件か?


 パッと浮かんだ可能性をもとに疑惑の目でエルの方をチラ見すると脇腹に杖の一撃が返ってきた。


「ぐふっ!?」

「冤罪」

 

 なぜ、考えていたことがわかった?!


 そんな感じで始まりかける二人漫才だったが、カリナさんによって未然に阻止される。


「はいはーい、じゃれ合うのはそこまで。ギルド長を待たせてるんだからね」


 少し呆れ気味に促されて、関係者以外立入禁止と書かれた奥の扉に通された。

 扉の先は、二人の護衛っぽいギルド職員と床に魔法陣が描かれただけの部屋だった。

 会話が交わされることなく魔法陣の中央に先導され、カリナさんの合図で魔法陣が輝き出しっ―――――次の瞬間には、先程の護衛っぽいギルド職員とは別の者が構える両開き扉の前に移動していた。


「・・・」


 急に変わった光景に驚愕して固まる。

 そんな俺に苦笑しながらカリナさんが、ここは冒険者ギルドの三階フロアだと教えてくれた。

 彼女の説明によると、不届き者対策で三階には魔法陣での転移でしか行けないようになっていて、他の階からは隔離されているのだとか。そういえば、外観は三階建てなのに階段では二階までしか行けなかったから変だと思っていたんだよな。


 三階の構造自体は他の階と差ほど変わらなかった。

 転移の魔法陣がある部屋を出て、廊下をしばらく歩いた後、少しだけ豪華な扉の前で止まる。おそらく、ここがギルド長室なのだろう。

 カリナさんは一度こちらに視線を送り、俺とエルが頷くのを確認してから扉にノックする。


「入れ」


 渋さを含む重い声の後に部屋に入る。

 白髪髭を生やしたがっしりとした筋肉の老人がソファーに座っていた。

 こちらを値踏みするような眼には油断ならない光を灯り、異様なプレッシャーを与えてくる。


「失礼します、ギルド長。ユーマ・カンザキ様、エル・フリッセル様をお連れしました」


 様って・・・あ、カリナさんに睨まれた。


「うむ、よく来た。ワシはギルド長のゼベルドじゃ。まあ、座って話そうかのう」


「ぺっ!」


 突然、エルが床に唾を吐き捨てる。

 にこやかな笑顔だったギルド長のこめかみに青筋が立つ。


 えっ!? エル…急にどうした???


「ぐっ…相変わらずじゃな……嬢ちゃんは」


 一瞬、目線で火花を散らすエルとギルド長。

 エルが見た事ない顔になってる。すっげーメンチ切ってる。


 顔見知りなのか?

 ってか、何があったんだよ…この二人。

 エルが滅茶苦茶荒んでるんですけど。


 さらにギルド長に促されソファーに腰をかける。

 エルもなんとか宥めて座らせた。


 部屋を流れる殺伐とした空気。


 カリナさんはお茶を用意した後、そのまま逃げるように退室していった。

 今、俺は捨てられた子犬の気持ちを世界の誰よりも理解できる。


「ふむふむ、嬢ちゃんは別として…お主はなかなか良い面構えじゃな。最近の活躍は聞いておるぞ」


「いえ、そうれほどでもあり―――――」

「…笑わせてくれる」


 俺の日本人らしい謙虚な受け答えは、エルの一言で無に帰る。

 横目で確認すると暗い笑みを浮かべ未だに睨みつけていた。


 ホント、ナニガアッタンデスカ。


「ックックック、言うじゃねえか」


 何が気に入ったのか、ギルド長は愉快そうに笑う。

 若干向けられていた圧が弱まった気もしなくもない。

 しかし、反比例してエルの荒み度合いが上がった気がする。隣から炎が立ち昇るを幻視した。


「あの、ところで俺達はなんで呼ばれたんですか?」


 無理矢理、話題を変える。

 このままじゃ、いつまで経っても話が進まないだろうし。

 なにより俺の胃が痛い。


「おお、そうじゃったそうじゃった。もちろん、お主たちに…もっと言えば坊主に頼みがあっての」


「頼み? ですか…」


「うむ。ギルドに提出された個人データによると遺跡学を習得しているようじゃな、これに偽りはないかの?」


 ん? なんだ急に…


「ええ、ちゃんと習得してますよ」


 遺跡学。

 俺が無理矢理且つ強制的に身に付けられた常識(嘘)の一つ。

 シャルロッテさんの「貴方が元の世界で学んでいた学問と変わらないわよ~」という甘言…もとい戯れ言によって、習得必須となった知識。

 その中身は、発見された遺跡がどのような文明に属しているものかを分析・判断する学問。

 簡単な分類分けは、科学文明・魔法文明・魔法科学混合文明の三つだけ。そう、三つだけだ。


 しかし、それは完全な落とし穴。


 もちろん、学問と名が付く物である。簡単な分類分けだけで済むはずがない。当然、もっと詳しく分析し判断しなければならない。

 その詳細な分類分けの数……数百種類。

 さらに、文明を分析する過程で、其々の古代、民族言語及び各々の歴史・文化・種族等にも明るくなければ判断などできない。


 つまりだ。

 何が言いたいかというと・・・すっげー大変なんだよ!遺跡学は!!


 この学問に当てた時間を錬金術とか魔法系統の学問に回してたら世界の壁を超えてマスターしてたと思う。絶対に!


 ちなみに遺跡学を学んでいた期間が、シャルロッテさんの所で過ごした中で一番トラウマや薬の後遺症を増やした時期でもある。他の拷問もとい訓練では、比にならないほど爆発的に。


「そうか、なら話は早い。お主たちにギルドから指名依頼じゃ…って、お主は何故に血の涙を流しておる?」


 え? 涙なんて流して…これは目にゴミが入っただけですよ。

 当時の記憶がフラッシュバックしてトラウマスイッチがオンになんてナッテマセンヨ。


「なんでもないですから続けてください。お願いですから気にしないで・・・触れないでください」


 俺の真摯な願いが届き、ギルド長はそれ以上何も言わず話を続ける。


「そ、そうか。それで依頼の内容だが、最近発見されたボルドラ近郊の遺跡の調査じゃ。本来なら銀色ランク以上の冒険者と遺跡調査専門のギルド職員を組ませて当たらせるのじゃが、その職員が生憎出払っておっての。街を離れておるんじゃよ。さらに、遺跡に関しては都市に色々利益を齎すからの、領主も煩いんじゃよ」


「なるほど。それで、俺が…」


 まあ、遺跡学を習得してる者は前述の通りの理由で少ないだろうしな。


「うむ。ギルドからの指名依頼ということからして、そもそも断る事はできないんじゃがの……その代り、今回の依頼を達成した暁には、報酬とは別に希望するなら特別報奨として銀色ランクへの即時昇格を許可しようと思うのじゃ。もちろん昇格試験も不要での、どうじゃ?」


 即時昇格か、願ってもない報酬だな。

 シャルロッテさんとの約束した期限まで残り9ヶ月しかないから・・・若干、焦ってたんだよね。


「特別報奨の件も含めて承りました」


 ギルド長は俺の同意を満足気に受け入れる。

 それから10分ほど、二人・・で依頼の詳しい内容など確認した。

 明日、同行する銀色ランクの冒険者がボルドラに到着するそうで、顔合わせはその時にということで、今日は解散となった。合流する冒険者は、俺達と歳が近いうえに現在各ギルド内でも話題の者らしい。





 あ、ギルド長との会話後半からエルが一切喋ってないのは寝てやがったからだ。

 もちろん、モーニングコールにデコピンを・・・したらまたギルド長と色々ありそうだったので、今回は自重した。


 ちなみに、エルの寝起き一発目のセリフは「・・・糞爺、殺す」だった。


 一体、二人の間に何があったのだろうか…。





エルの冒険者氷漬け事件については、幕間【とある魔女っ子の冒険録・破】で明かされる予定。他にも敢えて詳しく描写していない各話の一部が含まれます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ