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遠くの方で、鐘の音が聞こえる。
目を開くと天井が見えた。
……木造だ。
ゆっくりと体を起こした。すんなりと動く。普段なら、どっこいしょーと気合を入れなければいけないのだが。体調が良いのだろうか。
何やら固いベッドの上に寝かされていたようだ。ペラペラの布団がかかっている。
ここはどこだろう。
辺りを見回すと、同じようなベッドが五台ほど並んでいる。俺以外、人はいないようだ。
このままここに留まっていた方が良いのだろうか。悩んでいると、部屋に一つある扉から一人の女性が入ってきた。
「あっ、気がついたんですね!」
俺を見て、足早に駆け寄ってくる。
「お身体の調子はどうですか?どこか痛いところはありませんか?」
大学生くらいの若い女性だ。明るい茶色の髪を後ろで束ねている。薄いピンクのワンピースにエプロンという服装で、こちらを心配そうに見つめている。
綺麗な女性だ。胸が大きい。
「あ、え、その、だ、だ、だ、大丈夫そうです」
どもった。
つい胸に目がいってしまった。気をつけないと、嫌がられてしまう。
「ひどい怪我だったんですよ。魔獣にやられたみたいでしたが、お一人だったんですか? あなた以外の人は見当たらなかったようですが」
マジュウ?
何か、わかるようなわからないような……。
あれ? これは何語で会話しているんだ? 日本語ではない。でも理解できるし、さっき俺、しゃべってたよな。
「大丈夫ですか?」
黙ってしまった俺に、その女性は優しく話しかけてくれた。ベッドの横の椅子に座り、そっと俺の手を取る。心配そうな表情で、こちらを見つめてきた。
俺は、目を合わせないように下を見る。こんな若い女性が俺を見てくるなんて、意味がわからない。
そして、なぜ手を握ってくるのだろう。手を少し引いたが、彼女は離そうとしない。手汗がやばい。どうしよう。
「まだ回復したばかりですので、少し混乱しているのかもしれません」
なぜか俺の手の甲をさすっている。
今まで女性に手を触られるという経験のない俺は、どうしていいのかわからない。いや、母親とか幼少期にはあったかもしれないが。
「一応あなたが持っていた荷物はベッドの横に置いてあります。もしかしたら落としてきてしまった物もあるかもしれません。後で確認してみてくださいね。」
目を逸らしているので表情はわからないが、優しい声で話しかけてくれる。若い女性にこんなに優しい対応をしてもらうなんて、初めてかもしれない。
ベットの横に視線をやると、薄汚れた大きめのリュックと剣、服のようなものが見えた。
……剣?
見覚えがあるような、ないような。いや剣なんて見たことあるわけないだろう。アニメやゲームとかで見た気になっているだけか?
「着ていた服は血がついて破れてしまっていたので、洗って繕っておきました」
え、優しい。
「あ、ありがとう」
なんとかお礼を言う。天使みたいな人だな。
今着ている服は、白いTシャツのようだ。肌触りは少しゴワゴワしている。
……腹がない……。
いや、あるけど…。いつもだと下を向くと大きなお腹が目に入るはず。座ったりすると、それはもう息苦しくなるようなお腹が。
焦って手を動かしたら女性の手が離れた。
ペタペタと、自分の胸から腹にかけて触ってみる。いつものプニプニ脂肪ではない、筋肉を感じる。
手も、よく見るといつもと違う。握力強そう。腕も長い。
そういえば、俺は目が悪く普段は眼鏡をかけていた。今はしていないのに、よく見えている。
恐る恐る顔に触れる。さらりとした肌、スッキリとした顎、高い鼻筋、彫りが深く大きな目、眉毛も凛々しい。広いおでこに金色の髪……。
俺は、誰?




