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1-1

 遠くの方で、鐘の音が聞こえる。

 目を開くと天井が見えた。

  ……木造だ。

 ゆっくりと体を起こした。すんなりと動く。普段なら、どっこいしょーと気合を入れなければいけないのだが。体調が良いのだろうか。


 何やら固いベッドの上に寝かされていたようだ。ペラペラの布団がかかっている。

 ここはどこだろう。

 辺りを見回すと、同じようなベッドが五台ほど並んでいる。俺以外、人はいないようだ。


 このままここに留まっていた方が良いのだろうか。悩んでいると、部屋に一つある扉から一人の女性が入ってきた。




「あっ、気がついたんですね!」


 俺を見て、足早に駆け寄ってくる。


「お身体の調子はどうですか?どこか痛いところはありませんか?」


 大学生くらいの若い女性だ。明るい茶色の髪を後ろで束ねている。薄いピンクのワンピースにエプロンという服装で、こちらを心配そうに見つめている。

 綺麗な女性だ。胸が大きい。


「あ、え、その、だ、だ、だ、大丈夫そうです」


 どもった。

 つい胸に目がいってしまった。気をつけないと、嫌がられてしまう。


「ひどい怪我だったんですよ。魔獣にやられたみたいでしたが、お一人だったんですか? あなた以外の人は見当たらなかったようですが」


 マジュウ?

 何か、わかるようなわからないような……。

 あれ? これは何語で会話しているんだ? 日本語ではない。でも理解できるし、さっき俺、しゃべってたよな。


「大丈夫ですか?」


 黙ってしまった俺に、その女性は優しく話しかけてくれた。ベッドの横の椅子に座り、そっと俺の手を取る。心配そうな表情で、こちらを見つめてきた。

 俺は、目を合わせないように下を見る。こんな若い女性が俺を見てくるなんて、意味がわからない。

 そして、なぜ手を握ってくるのだろう。手を少し引いたが、彼女は離そうとしない。手汗がやばい。どうしよう。


「まだ回復したばかりですので、少し混乱しているのかもしれません」


 なぜか俺の手の甲をさすっている。

 今まで女性に手を触られるという経験のない俺は、どうしていいのかわからない。いや、母親とか幼少期にはあったかもしれないが。


「一応あなたが持っていた荷物はベッドの横に置いてあります。もしかしたら落としてきてしまった物もあるかもしれません。後で確認してみてくださいね。」


 目を逸らしているので表情はわからないが、優しい声で話しかけてくれる。若い女性にこんなに優しい対応をしてもらうなんて、初めてかもしれない。




 ベットの横に視線をやると、薄汚れた大きめのリュックと剣、服のようなものが見えた。

 ……剣?

 見覚えがあるような、ないような。いや剣なんて見たことあるわけないだろう。アニメやゲームとかで見た気になっているだけか?


「着ていた服は血がついて破れてしまっていたので、洗って繕っておきました」


 え、優しい。


「あ、ありがとう」


 なんとかお礼を言う。天使みたいな人だな。

 今着ている服は、白いTシャツのようだ。肌触りは少しゴワゴワしている。

 ……腹がない……。

 いや、あるけど…。いつもだと下を向くと大きなお腹が目に入るはず。座ったりすると、それはもう息苦しくなるようなお腹が。

 焦って手を動かしたら女性の手が離れた。

 ペタペタと、自分の胸から腹にかけて触ってみる。いつものプニプニ脂肪ではない、筋肉を感じる。

 手も、よく見るといつもと違う。握力強そう。腕も長い。

 そういえば、俺は目が悪く普段は眼鏡をかけていた。今はしていないのに、よく見えている。

 恐る恐る顔に触れる。さらりとした肌、スッキリとした顎、高い鼻筋、彫りが深く大きな目、眉毛も凛々(りり)しい。広いおでこに金色の髪……。

 俺は、誰?

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