第41話 何かが俺の中で囁いた
翌日から俺は退屈な授業の時間を
茜の問題について考えることに充てた。
おそらく茜を盗撮したビデオテープは
本体のビデオカメラと共に
大吾の家にあるに違いない。
20年後のようにスマホで撮影したり、
撮影した動画のデータをUSBに保存して
持ち歩くなんていうことは
この時代ではありえない。
当然、ネットに出回って
一生消えることのない黒歴史となることもない。
つまりテープさえ回収できれば
茜の問題は解決である。
茜を盗撮したビデオカメラは
元々は洋の物だったらしい。
大吾は
「俺の物は俺の物、お前の物も俺の物」
という謎理論の元、
洋からビデオカメラを取りあげた。
茜の秘密は守らなければならないため、
洋を使って取り返すことはできない。
要は洋の代わりに俺が大吾の家を訪ねて
ビデオカメラを返してもらえば済む話だった。
しかし。
それには若干の後ろめたさが伴った。
大吾が死んでまだ日も浅いうえに、
俺は大吾の事故現場にいた人間だ。
大吾の親にしても
気分の良いことではないだろう。
それに大吾には妹がいたはずだが、
彼女は俺のことを
兄を殺した人間だと思っているかもしれない。
殺した・・。
あれは事故だ。
そう事故。
そもそも大吾が排水管を登ろうとしなければ
あんなことにはならなかったのだ。
自分の体重を考えてなお、
あんな行動に出たとすればそれは無謀だった。
無謀と勇気は違う。
無謀な行動は大抵の場合、
悪い結果を招く。
そこが勇気とは大きく異なる点である。
今回はその悪い結果が死という形で現れた。
そういえばマンションやビルの高層から
子供が転落したというニュースを
時々耳にするが、
その中には大吾のように
危険な遊びが招いたケースが
少なからずあるのかもしれない。
結局のところ大吾の死は自業自得なのだ。
『本当にそう思うか?』
何かが俺の中で囁いた。
『熊谷大吾があの穴を通れないことは
金網を破る前から、
お前にはわかっていたはずだ。
そして熊谷大吾の性格からして
あの排水管を登ってくることは
容易に想像できた。
実際、熊谷大吾は排水管へ手をかけた。
お前の狙い通りに』
俺は頭を振った。
違う。
そんなことは考えてなかった。
『お前には消極的だが殺意があった』
「違うっ!」
「どうしたの?
何が違うのかな?」
ナカマイ先生が驚いた顔で俺を見ていた。
クラス中の視線が俺に集まっていた。




