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黄昏は悲しき堕天使達のシュプール  作者: Mr.M
三章 Remnant 6月

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第37話 元通り

それから数日後の放課後、

俺は3人を校舎の屋上に呼び出した。

屋上の扉は普段は施錠されておらず

誰でも屋上に出ることができた。

しかし。

施錠されていないとはいえ古く重い鉄の扉は

大人でも開けるのに多少苦労した。

それもあってか

屋上を利用する生徒はそれほど多くはなかった。

低学年の子供達は

わざわざ屋上まで上がってくることはなく、

屋上を利用するのはせいぜい

5、6年生の子供達だけだった。

屋上には安全のため、

背の高いフェンスが設置されていて、

そのフェンスを乗り越えない限り

転落することはない。

俺が屋上に出た時、

翔太と洋と茜の3人は

お互いをけん制するように

微妙な距離を空けて立っていた。

そして。

屋上には俺達以外に誰もいなかった。


「こんなところに呼び出してどうしたんだよ」

俺に気付いた洋が真っ先に口を開いた。

「大事な話があるって言ってたけど・・」

翔太はキョロキョロと視線を泳がせて

洋と茜の様子を窺っていた。

「私、今日はピアノのお稽古があるから

 早く帰らないといけないの」

伏し目がちにそう呟いた茜は

どこからどうみてもあどけない少女だった。

「一度、

 皆で話をしておいた方がいいと思ったんだ」

俺は3人を順に見た。

「話すって何を?」

3人の声が重なった。

「とりあえず座ろうか」

俺達は輪になって

コンクリートの地面に腰を下ろした。


「皆、大吾が死んでからバラバラだっただろ?」

俺は単刀直入に切り出した。

子供に下手な芝居や駆け引きをするのは悪手だ。

子供は大人が考えている以上に敏感で聡い。

「だ、だって・・」

「そんなこと言われても。なぁ・・」

「私もそうだけど、

 翔太さんも洋さんも

 あの日のことは忘れたいのよ。ね」

茜の言葉に2人が小さく頷いた。

「たしかに、あれは悲惨な事故で、

 俺も蒸し返したくはない」

俺はあえて「事故」という単語を強調した。

「だろ?だったらこの話は止めようぜ」

洋が抗議した。

「俺が言いたいのはさ、

 大吾がいなくなっても

 俺達の関係は今まで通りだろ?

 っていうことさ」

俺の言葉に3人は黙った。

翔太は膝を抱えて俯いていた。

洋はただ漠然と宙を見ていた。

茜はそんな2人の様子を交互に見比べていた。

3人はしばらく口を開かなかった。


「・・さすがにここで煙草吸ったらまずいよな」

突然、洋が冗談めかして言った。

「一応、鞄の中に入ってるけどね」

「私は駄目。

 ピアノの先生にバレちゃうわ」

翔太も茜もすぐに軽い調子で応えた。

そして3人は顔を見合わせた。

「ははは」

「ひひひ」

「ふふふ」

それから3人は照れたように笑った。

すぐに適応するのは子供の良い所だ。

「俺達は今まで通り仲間だろ?」

俺はもう一度同じことを訊ねた。

「もちろん!」

「当たり前だろ」

「今まで通り仲良くしましょ」

今度はすぐに答えが返ってきた。


それから俺達はしばらく屋上で話をして、

茜はピアノのレッスンがあるため

先に帰っていった。

洋が「煙草が吸いたいぜ」と言うと

翔太がそれに同意した。

俺達は学校を出て

「Paradise Garden 中之島」へ向かった。

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