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【書籍化】ジジババ勇者パーティー最後の旅  作者: 福郎
第三章

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大して変わりがない者

「がははは!」


「だっはっはっはっ!」


 笑いながら酒を飲み続ける酔っ払い神と酔っ払い剣聖。


 こんな男達でも大戦最初期からずっと戦い続けた戦神と、世界を救ったパーティーの一員である。


「武芸者大会を観戦するためにこちらへ?」


 一方、酒より牛乳を貫くシュタインがラウに質問した。


「そうそう。仕事でこっちにいたら、お前さん達も来たじゃないか。こりゃ飲み友達と酒飲んで話をしないとなと思った」


「なるほど」


 当たり前の話だが、ラウは酒だけのためではなく戦神としての職務もあってここにいるようだ。


 大陸有数の国家であるリン王国が主催する武芸者大会なのだから、その参加者の強さを確認するのは戦神として立派な職務と言っていいだろう。


(やはりこれでもかと練り上げられた歴戦の筋肉だ)


 なおシュタインは会話の間でもラウの筋肉を観察していた。


「よっぽどの問題が起こらない限りは昔から観戦してるな」


 そんな観察されているラウの言葉を通訳するなら、大戦という大問題が起こる前から観戦しているらしい。


(し、知らなかった。会ったことねえけど、伝え聞く爺さんなら喜ぶだろうな……)


 実は戦神が観戦していたことを知ったマックスは、武芸者大会を最初に開催した祖父が喜ぶだろうと思った。


 余談になるがマックスの祖父は有能ながら道楽者としても知られており、若い頃はこっそり闘技場に出場しようとしたことがある。だがマックスの曽祖父である当時の王に露見すると、そんなに戦いたいなら相手になってやると言われまさかの王と嫡子の殴り合いが発生し、若輩者が敗れていたりする。


 祖父、曽祖父がこのような人物なのだから、ひょっとするとマックスが大戦中に前線へ出たのは血筋なのかもしれない。


(主流派も話が分かる連中なら協力できたんだろうがね。まあその前に死んだんだが)


 酒をがぶ飲みしながら仕事もしているラウを見て、ララは過去に存在した神々に心の中で肩を竦める。


 大戦中、疲れるながらも頻繁に飛行魔法を行使していたララだが、もし主流派の神々が生きていたら、神のいる天に近づきすぎる不届き者め。と言って彼女に落雷を降らせただろう。


 古代から世界の理を歪めかねない魔法使いは神々と確執がある者が多く、直接天罰を受けた者だっている。


 そのため主流派の神々が生きていた場合、ララと敵対していた可能性があった。


「倅は元気なようだな」


「元気元気。つい最近会ったばっかりだし。なあララ」


「そうだね」


 ラウはサザキとララの夫婦に息子であるファルケについて言及すると、次はフェアドとエルリカに視線を向けた。


「そちらの倅はなかなか派手にやったようだな。儂のところにも聞こえてきたぞ」


「いやはやなんとも……」


「ほほほほほほ」


 ニヤリと笑うラウにフェアドはなんとも言い難い表情となり、エルリカは朗らかに笑う。


 ただフェアドにしてもエルリカにしても、その倅から偶に送られてくる手紙で知らされる、派手にやった事柄が多すぎだとは思う。ラウのところまで隣の大陸の事情が届くのはよっぽどの事態なのだ。


 神は命ある者が思い込んでいるほど万能でも全知全能でもなく、世界の全てを支配していたわけでもない。なにせ隣の大陸のことだって殆ど把握していない。


 もし真に至高であるならば大魔神王に敗れ、落日を迎えることなどなかったはずである。


「向こうとの繋がりを模索してるんだがな」


 ぽつりとラウが言葉を漏らす。


 大戦前、大陸間の神々はお互い無視し合う状況に陥っており、自分達の縄張りを覗かれないように結界も張っていた。


 それがよくなかったのだろう。


 天界が粉々に砕け散った後に、生き残った神々は隣の大陸の神へ現状を説明して救援を頼み込んだが、そっちのことはそっちで解決しろと突っぱねられた。


 この隣の大陸の神の反応自体はおかしいものではないが、必ずしも当時の状況を認識できていたとは言い難い。


 隣の神は、自分達ならその大魔神王とやらを全く問題なく対処できると思って興味を持たず、戦後も暫くしてから情報が届き、ほら見ろ。聞いた話だがその大魔なんとかは、結局定命の者如きに敗れたんだろう。と思っただけだ。


 しかしラウが見たところでは、かつていた主流派の神と隣の神々は感性が似たようなものであり、必ず大魔神王が攻め込んで滅ぼしていたと考えていた。


(傲慢と慢心、無関心こそが神々のお家芸だな)


 ラウは神でありながら自らを含め貶す。


 慢心したが故に神々は殺戮され、高慢であった故に大魔神王は打ち倒され、無関心であったからこそ隣の神々は単なる定命の存在と思った異邦人、真実は世界を救った勇者と聖女の息子に大暴れされて目を剥く羽目になった。


「ところで注目してる出場選手は?」


「よくぞ聞いてくれた。たっぷり説明しよう」


 神々にとっての黄昏に思考が逸れていたラウは、サザキの声で我に返ると自分の信徒が出場するのかしたり顔になる。


(ひょっとしてひょっとするんだけど……)


(勇者パーティーが遠慮気味ってことは……)


(神じゃね?)


 なお一を聞いて十を知る必要がある従業員達は、見事ラウの正体を見抜いて胃が破裂する寸前だった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 大魔神王の失敗は先に神々を駆除したことか。
[一言] あー、従業員の皆様に胃薬用の特別手当を払わないといけないですね。
[一言] >胃が破裂する寸前だった 日本の珍名さん: 70~80年くらい昔の千葉県の平民に 「胃袋破裂」と言う大変珍しいお名前の方がいらっしゃったそうです。
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