プロローグ あやふやな夢
夢の中でも夢だと分かる。
『逃げろおおおおおお!』
『ぎゃあああああああああ!?』
文字通り寒く貧しかったはずの寒村が炎で暖かくなっている。
麦畑が燃えるだけならいい。
巨大なカマキリの群れから叫び逃げ惑う隣人。圧し潰される老人。食われる青年。明らかに出血死している婦人。散り散りになる家族。
大魔神王にしてみれば取るに足らないどころか、把握すらしていなかったらしい小さな部隊が踏み潰した、小さな小さな村。
そこから必死に逃げるしかなかった若い手足が動く。
そして誓った。
あの赤い空を正しき形に、青空に戻してみせる。と。
『青空だって? 馬鹿なのか?』
『できるわけがない……』
『もう死ぬしかないんだ……』
『頭がおかしいのか?』
『そんな粗末な剣と盾で? ははっ』
うるさいぞ大人達。俺はやると言ったらやるんだ。
暗黒の世がどうした。滅びの定めがどうした。死すべき運命がどうした。
なら暗黒の世をぶちのめせ。滅びの定めをはっ倒せ。死すべき運命をぶん殴れ。
『ひっく。おーいその酒瓶取ってくれ』
なんだこいつ。酒臭すぎるぞ。ははあ、さてはヤバい奴だな。
『あんたらが最近有名になってるシャイニングスターかい? 話を聞かせてほしいんだがね』
なんだこいつ。田舎のガキがどう見ても魔法使いの話を理解できると思うなよ。
『素晴らしい筋肉だな。名を聞かせてくれ』
なんだこいつ。腰に布巻いてるだけとか完全に変人だろ。
『仲間に入れてくれないか?』
なんだこいつ。本当に人間か? なんかドラゴンとかそういうのが混じってねえか?
『人の世は存続させねばならんのだ。協力しよう』
なんだこいつ。本当に人間か? ぜってえなんか隠してるだろ。
『共に大魔神王を打倒しましょう』
なんだこいつ。目線は合ってるのに俺のこと見てねえだろ。それどころか自分も見ちゃいねえ。聖女ってのは皆こうなのか?
『神の傀儡ごときが!』
『人が星を食いつぶす前に消し去るのみ! 星の力を見よ!』
『GAAAAAAAAAAAAAAA!』
『審判はとっくに終わっている!』
『モンクは最早過去の遺物なり』
『運命操作術式展開』
大馬鹿の周りにいた奴らの声か。
どいつもこいつも化け物共め。いったい何度死ぬと思ったか。
『傀儡かと思ったが人としてか! はははははは!』
『ああ……星よ……』
『GA……a……』
『なぜだ!? 審判の天秤は確かに!?』
『こんな拳が……』
『これが……私の運命だと?』
概念やら理がどうこうで無敵とか通じないなんざ言うんじゃねえ。頭が痛くなるだろうが。冗談抜きによく俺も生き残ったものだ。
そして……。
『さあケリを付けようじゃねえか!』
うるせえ怒鳴るな大馬鹿野郎。
『フェアドおおおおおおおおお!』
だからうるせえつってんだろうがああああ!
ちょい短かったですが二章の導入としてお許しください。次回からまた現代のジジババです。




