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ネットの壁

「たっだいまー!!、ひな様参上!!!」


僕たちの間でどんな会話があったかなんて知らずに、彼女は意気揚々と戻ってきたのである。


「おかえり」


僕が言いかけて、流星が被せるように


「おう!、ひな様おかえり!!」


と、恐らく身内ノリであろう会話が続いた。


僕は困惑していた。


ここ最近の出来事に頭の中で生理が追いついていないのだ。


僕の居場所はこの仮想空間《ifr》だけだ。


だがそれは、彼らにとってはどうも違っているようで、僕は彼らとの間に壁を感じいてた。


流星が決して悪い奴ではないのはよく知っている。


ゲーム内で僕やひながダウンすればすぐに駆け寄ってくれるし、彼は聞き上手だから僕たちの現実の悩みだって上手く聞いてくれる。


僕なんかに彼のことは否定できないけど、ひなを取り合うライバルに違いなかった。


僕が心の中でそんな葛藤をしている間に、彼女達は会話を弾ませている。


「翔太?親フラでもした?」


「ごめんごめん!ちょっとトイレ行ってて」


「ったく、翔太お前小便ぐらい済ませてから来いよな!」


「そうだよね笑、ごめんごめん」


僕はここに居ていいのだろうか。


心地の良い居場所だったはずが、自分だけが取り残されているような感覚に陥っている。


どうしてこうもネットの壁は、分厚いのだろうか。


そんな僕の考えを彼らは知る由もなく、会話は進んでゆく。


「なぁ、俺らが通信してる光ファイバーの速度ってな?毎秒2億mも進めるんだぜ!」


「そうなの?!流星って案外物知りね!」


この話題に僕は興味があった。


「ひなや流星は確か、北海道に住んでいたよね?」


「うん、そうだな」

「でもなんで知ってるんだ?」


そんなの決まっている。


「ひなが言った」


「ちょっと翔太!!」


「流星は親族なんだから良いだろ?」


「それはそうだけど、、」


どうやら彼女は自分のネットリテラシーの無さを反省しているらしく、家族と繋がりのある流星にバレると面倒になると考えていたようだ。


僕は九州の熊本に住んでいた。


北海道とは真逆の地である。


僕は自分の住んでいるところから、ひなが住んでいる所まで何秒で通信できるのか少し気になったのだ。


AIに聞いてみると、「約0.0075秒」だと言う。


そんなに短い時間なのに、ものすごく離れているという事実に僕は混乱した。


「翔太、大丈夫?」


どうやら長く黙りすぎたらしい


「大丈夫、ちょっと眠くて」


「良かった、今日はもう遅いし寝る?」


もうひなが風呂から上がってきて二時間近く経過していたのだ。


時計の短針は九と十の狭間にあった。


「そうだね!また明日話そう。」


そう言って僕らは解散した。


今日一日の出来事が多すぎて頭の中がパンクしそうだ。


「ガチャ」


親父が帰ってきた音がして、すぐに布団に潜り込んだ。

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